「差し控える(さしひかえる)」は、日常会話でもビジネスシーンでも使われる言葉ですが、ややかしこまった印象があり、使い方を誤ると不自然に聞こえることもあります。自分から何かを控える、または控えた方が望ましいというニュアンスで使われることが多く、文脈によっては丁寧な断りや配慮を示す表現にもなります。この記事では、「差し控える」の意味と使い方、例文、言い換え、使用時の注意点を詳しく解説します。
1. 「差し控える」の意味
1-1. 基本的な意味
「差し控える」とは、ある行動を自ら控える、行わないようにするという意味を持ちます。
この言葉には、「慎重に対応する」「状況に配慮してあえて行動を控える」といった含みがあります。
1-2. 類義語との違い
「控える」と比べて、「差し控える」は意図的・慎重な判断で控えるというニュアンスが強くなります。
単に「やめる」や「中止する」とは異なり、礼儀や立場への配慮が込められる表現です。
2. 使用される主な場面
2-1. 情報開示を控えるとき
・現在、詳細の公表は差し控えさせていただきます。
・個人情報に関するため、回答は差し控えます。
2-2. 言動・行動を控えるとき
・誤解を避けるため、コメントは差し控えさせていただきます。
・現場の混乱を避けるため、記者会見での発言を差し控える。
2-3. 丁寧な断りの表現として
・こちらの件については、回答を差し控えさせていただきます。
・他者に関わる内容につき、発言は差し控えます。
3. 言い換え表現とその使い分け
3-1. 丁寧な言い換え
・控えさせていただきます
・ご遠慮させていただきます
・あえて申し上げません
・明言は差し控えます
3-2. 柔らかい印象を与える言い換え
・現時点ではお答えしかねます
・内容に関しては非公開とさせていただきます
・詳細については後日お知らせいたします
3-3. 例文で比較
・発言を差し控えさせていただきます。
→ 発言を控えさせていただきます。
→ この場での発言はご遠慮させていただきます。
→ 詳細については現段階では申し上げられません。
4. 使用時の注意点
4-1. 必要以上に多用しない
「差し控える」はやや硬めで冷たい印象を与えることもあるため、連続して使用すると不親切に感じられることがあります。相手や状況に応じて言い換えを使い分けましょう。
4-2. 理由を添えることで丁寧な印象に
単に「差し控えます」だけで終えると冷たく感じられる場合があります。
例:
・「個人情報に関わるため、回答は差し控えさせていただきます」
・「調整中のため、詳細のご説明は差し控えさせていただきます」
4-3. 公的・フォーマルな場面に適した言葉
「差し控える」は、会見、報告書、通知文などの公的な場面や書面での使用に向いている表現です。カジュアルな会話では「控える」「避ける」などに変えると自然です。
5. よくある質問
5-1. 「差し控える」と「控える」の違いは?
「控える」は一般的で広く使われる語、「差し控える」は特に慎重な判断・配慮によって控えるというニュアンスがあります。
5-2. 「差し控えます」は命令口調になる?
いいえ。むしろ丁寧に「自分の行動を控える」と述べる謙虚な表現です。ただし、書き方次第では一方的に断っているような印象にもなるため、言い回しに注意が必要です。
5-3. メールで「差し控えます」を使ってもよい?
問題ありません。ただし、感情をやわらげる前置きや理由説明を添えると、より丁寧な印象になります。
6. 実践的な例文集
6-1. メールでの回答時
・ご質問の件につきましては、社内確認中のため、現時点での回答は差し控えさせていただきます。
・内容に一部機密を含むため、詳細は差し控えさせていただきます。ご了承いただけますと幸いです。
6-2. 報告書・資料内で
・お取引先名については、守秘義務の観点から差し控えさせていただきます。
・被害の規模については調査中につき、現時点では公表を差し控えさせていただきます。
6-3. 発言やコメントに関して
・個別の案件に関するご質問については、現段階ではコメントを差し控えさせていただきます。
・今後の対応方針については、準備が整い次第お伝えいたします。現時点での発言は控えさせていただきます。
まとめ
「差し控える」は、相手や場の空気に配慮して自分から発言・行動を控えるときに使う、丁寧で慎重な表現です。断定や拒否を柔らかく伝えることができる一方で、やや堅苦しく感じられる場合もあるため、使用シーンや相手に応じた言い換えが重要です。「控える」「ご遠慮いただく」「申し上げかねます」などの表現と上手に使い分けながら、配慮ある言葉づかいを心がけましょう。