「思し召し(おぼしめし)」とは、相手、特に目上の人や神仏の考え・意向・お気持ちを丁寧に表す言葉です。古風で格式のある表現であり、日常会話ではあまり使われませんが、神社・宮中・宗教儀式や歴史的文書などで今も見られる言葉です。この記事では、「思し召し」の正しい意味、使い方、由来をわかりやすく解説します。

1. 「思し召し」とは?意味の基本

「思し召し」とは、「思う」の尊敬語にあたる「思し召す(おぼしめす)」という動詞の名詞形です。つまり、相手が「思うこと」「考えていること」「お気持ち」を丁寧に指す言葉です。

したがって、「思し召し」は現代語に言い換えると、

  • お考え
  • ご意向
  • ご判断
  • お心づもり

といった意味になります。

たとえば、

  • 「神の思し召し」=神のご意志・ご加護
  • 「陛下の思し召し」=天皇陛下のご意向
  • 「社長の思し召し」=社長のお考え

のように使われます。

2. 「思し召す」の文法と由来

「思し召す」は古典日本語に由来する尊敬語です。

  • 「思す(おぼす)」:尊敬語で「思う」の意。
  • 「召す」:尊敬を表す補助動詞。

この二つを組み合わせた「思し召す」は、「(目上の方が)思われる」「お考えになる」という意味になります。主に天皇・上皇・貴族・神仏などに対して使われてきました。

つまり「思し召し」は、「尊敬すべき存在の考え」を丁寧に述べる言葉として発展したのです。

3. 「思し召し」の使い方と例文

3-1. 宗教・神事での使い方

神仏の意志や加護を指すときに使われます。

  • 「これは神の思し召しであろう。」(=神のご意志によるものだ)
  • 「仏の思し召しにより、奇跡が起こった。」
  • 「天の思し召しを畏み、慎んで感謝申し上げます。」

このように、「神聖な存在の意志」を敬意をもって語るときに使われます。

3-2. 敬語として目上の人に使う場合

上司や年長者などの「考え」や「意向」を敬って表現する場合にも使えます。ただし、現代ではやや古風・格式ばった印象になります。

  • 「これは社長の思し召しに従って決定された案件です。」
  • 「先生の思し召しにより、この方針が採られました。」
  • 「ご高配とあわせて、深く思し召しに感謝いたします。」

ビジネス文書などでは、「ご意向」「お考え」に言い換える方が自然な場合もあります。

3-3. 比喩的な使い方

時には「運命」「偶然」などを敬って言い表すこともあります。

  • 「これも天の思し召しだと思って受け入れよう。」
  • 「病が治ったのは、仏の思し召しに違いない。」

4. 「思し召し」の類語

「思し召し」は尊敬語なので、他の言葉に置き換えるときは、相手との関係や場面に応じて調整します。

言葉 意味 使用場面
ご意向 意見・方針を敬っていう。 ビジネス文書・公的表現。
お考え 一般的な丁寧語。 日常的な敬語。
ご高配 配慮・思いやりを敬う表現。 感謝文などで使用。
お心づもり 考え・計画を柔らかく表す。 個人的・柔らかい場面。

5. 「思し召し」の英語表現

文脈によって訳し方が異なりますが、代表的なものは以下のとおりです。

  • God’s will(神の思し召し)
  • your intention(あなたのご意向)
  • divine providence(神の摂理・思し召し)

例文:
「It must be God’s will.(これは神の思し召しに違いない)」

6. 「思し召し」の注意点

現代では日常会話で使うと堅苦しく聞こえるため、宗教的・儀礼的・文語的な場面に限って使うのが適切です。ビジネスやカジュアルな会話では「ご意向」「お考え」などの方が自然です。

7. まとめ

「思し召し(おぼしめし)」とは、目上の人や神仏の「お考え・ご意向・ご意思」を丁寧に表す言葉です。語源は「思す(おぼす)」+「召す」の尊敬表現であり、古典的で格式のある日本語表現です。現代では主に神事・儀式・文語的な表現で使われ、「神の思し召し」「天の思し召し」といった形で敬意を示す言葉として受け継がれています。

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