「後生(ごしょう)」という言葉は、日常会話ではあまり使われなくなった一方で、仏教や文学、古典において重要な意味を持つ表現です。この記事では、「後生」の正しい意味や使い方、仏教との関連、現代での使用例まで詳しく解説します。

1. 「後生」とはどういう意味か

1.1 基本的な意味

「後生」とは、主に仏教用語として使われる言葉で、「死後の世界」や「来世」を意味します。現世(今の人生)に対して、死後に訪れるとされる次の生を指す概念です。もともとは人間の輪廻転生の考え方に基づき、死後の善悪の報いが現れる世界を意味します。

1.2 読み方と語源

「後生」は「ごしょう」と読みます。漢字の意味を見ても、「後」は未来、「生」は生まれることを表し、「未来に生まれる場所・状態」を意味するのが語源的な背景です。

2. 「後生」の使い方と例文

2.1 仏教的な使い方

仏教において「後生」は、極楽浄土や地獄など、死後の世界への行き先やそこに生まれ変わることを意味します。特に浄土宗や浄土真宗では、「後生を願う」「後生善処(ごしょうぜんしょ)」といった表現が重要視されます。

例:「阿弥陀仏を信じ、後生の安楽を願う」

例:「後生の一大事を忘れてはならぬ」

2.2 現代日本語における使い方

日常会話では使われる機会が少ないですが、古風な表現や文学、芝居、落語などでは「後生だから許してくれ」といった使い方があります。これは「どうかお願いだから」「命に関わるから勘弁してくれ」といった意味になります。

例:「後生だから、もうこれ以上責めないでくれ」

例:「後生だ、助けてくれ」

このように、懇願や切実な頼みごとを表すときに使われる場合もあります。

3. 仏教における「後生」の位置づけ

3.1 輪廻転生と後生

仏教では、人間は死後、善悪の行いに応じて六道(地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天)のいずれかに生まれ変わるとされます。これが「輪廻転生」の考え方です。「後生」はこの輪廻の中の次の生を意味し、多くの仏教宗派では、より良い来世に生まれ変わることが目標とされます。

3.2 浄土思想における後生

浄土宗や浄土真宗では、「後生は極楽浄土に往生したい」と願うことが信仰の中心です。阿弥陀仏の本願を信じ、「南無阿弥陀仏」と唱えることで、後生に極楽浄土へ生まれ変わることができるとされます。

4. 「後生」の類語や似た言葉

4.1 類語との比較

来世(らいせ):後生と同様に死後の世界や次の人生を意味する

彼岸(ひがん):悟りの境地または死後の世界

あの世:俗語として一般的に使われる死後の世界の表現

これらの言葉は「後生」と似ていますが、使用場面や語感が異なります。「後生」はやや宗教的、または古典的な語感を持ち、日常語よりもフォーマルまたは文学的な表現に近いです。

4.2 「後生」の対義語

「後生」の対義語は「現世(げんせ)」や「今生(こんじょう)」です。現世は、私たちが今生きているこの世界を指し、「後生」はその後に訪れる次の世界を意味します。

5. 現代における「後生」の意味と役割

5.1 現代社会での使用頻度

現代において「後生」という言葉はあまり一般的ではありませんが、宗教の場や文学、古典芸能では今でも重要な役割を担っています。また、「後生を大事にする」といった表現に見られるように、死後の世界や人生の在り方を考えるきっかけとなる言葉でもあります。

5.2 宗教以外での用法

宗教以外では、「後生」の表現が比喩的に使われることもあります。たとえば、「後生のことまで考えて行動する」という場合は、「将来の影響や結果までを見据えて」といった意味合いになります。

6. 「後生だから」の意味と使い方

6.1 懇願を表す古語的表現

「後生だから」という表現は、命を懸けたような強い懇願を示す言い回しで、古典落語や時代劇などでよく使われます。直訳すると「自分の後の人生をかけてお願いする」といった意味です。

6.2 現代語への置き換え

現代では「お願いします」「どうか勘弁してください」などに置き換えられますが、「後生だから」という表現には、より強い切実さや古風な味わいがあります。

7. まとめ

「後生」とは、仏教用語としての「死後の世界」「来世」を指す言葉であり、現世に対する将来の生のことを意味します。また、日常会話では懇願の意味で使われることもあります。仏教においては極楽浄土や輪廻転生と深く関わる概念であり、文学的にも重要な表現です。現代では使われる機会は限られていますが、意味や背景を知ることで、日本語の深みや宗教観への理解が深まります。

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