血腫(けっしゅ)とは、体の中で血液が血管外に漏れ、皮下や筋肉、臓器の間などにたまってしまう状態を指します。打撲やけが、手術後などに発生することが多く、放置すると腫れや痛み、感染の原因になることもあります。本記事では、血腫の意味から種類、症状、治療法、日常生活での注意点まで詳しく解説します。

1. 血腫とは何か

血腫とは、血管が破れて血液が血管外に漏れ出し、体内の一定の場所にたまった状態のことをいいます。外傷などによって血管が損傷すると、血液が組織内に滲み出て固まり、それが「しこり」や「腫れ」として現れます。

1-1. 血腫の医学的定義

血腫は、血液が組織内に限局してたまったものを指し、一般的な「内出血」とは区別されます。内出血は血液が広く拡散している状態を指しますが、血腫は血液が固まりとして残るのが特徴です。

1-2. 血腫ができる仕組み

外傷や圧迫、手術、あるいは自然に血管が破れたときに血液が流れ出し、周囲の組織に溜まります。その後、血液の一部が固まり、しこりや腫れを形成します。時間の経過とともに体が吸収することもありますが、吸収されずに残ることもあります。

2. 血腫の主な原因

血腫はさまざまな原因で発生しますが、多くの場合、外部からの衝撃や医療処置がきっかけです。

2-1. 打撲やけが

スポーツや転倒、事故などで体をぶつけたときに血管が損傷し、皮下や筋肉内に血液が溜まることがあります。これは最も一般的な血腫の原因です。

2-2. 手術や注射後

手術や注射の際に血管が傷つくと、その部分に血液が漏れて血腫ができます。特に抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している人では起こりやすい傾向があります。

2-3. 脳血管の損傷

頭部への強い衝撃や高血圧などで脳内の血管が破れた場合、「脳血腫」と呼ばれる状態になります。命に関わることもあるため、迅速な治療が必要です。

2-4. 自然発生的な血腫

外傷がなくても、血管がもろくなっている高齢者や血液凝固異常のある人では、自然に血腫ができることがあります。

3. 血腫の種類

血腫は発生部位によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。

3-1. 皮下血腫

皮膚の下にできる血腫で、見た目があざや腫れとして現れます。軽度の場合は自然に吸収されますが、痛みや熱感を伴うこともあります。

3-2. 筋肉内血腫

筋肉内に血液が溜まるタイプで、強い打撲や運動中の外傷が原因です。筋肉痛に似た痛みや、筋肉の動かしにくさが現れます。

3-3. 頭蓋内血腫(脳血腫)

頭部の中に血液がたまる状態で、「硬膜下血腫」や「硬膜外血腫」などの種類があります。頭痛や意識障害などの症状が現れ、緊急治療が必要です。

3-4. 関節内血腫

膝や肘などの関節内に血液が溜まるタイプで、スポーツ外傷などで起こります。関節が腫れたり、可動域が制限されることがあります。

3-5. 臓器内血腫

肝臓や脾臓などの内臓内に出血が生じることもあります。腹痛や吐き気、血圧低下などを伴う場合は緊急対応が必要です。

4. 血腫の症状

血腫の症状は部位や大きさによって異なりますが、一般的には以下のような変化が見られます。

4-1. 腫れと痛み

血液がたまることで患部が腫れ、圧迫されるような痛みが生じます。押すと硬いしこりのように感じることもあります。

4-2. 皮膚の変色

皮下血腫の場合、血液が皮膚の下にあるため、赤紫色や青黒く変色します。時間が経つと黄色や茶色に変化し、徐々に吸収されていきます。

4-3. 可動域の制限

筋肉内や関節内に血腫があると、動かしたときに痛みが生じ、可動域が制限されます。無理に動かすと悪化する場合もあります。

4-4. 圧迫による症状

大きな血腫が神経や血管を圧迫すると、しびれや循環障害が起こることもあります。特に太ももや腕などで発生した場合は注意が必要です。

5. 血腫の診断方法

血腫の診断は、症状の観察に加え、画像検査によって行われます。

5-1. 触診と問診

医師が腫れや痛みの場所を確認し、打撲やけがの経緯を聞き取ります。これによっておおまかな血腫の大きさや位置を判断します。

5-2. 超音波検査(エコー)

皮下や筋肉内の血腫は、超音波検査で確認できます。血液が固まっているか、液状かも把握できるため、治療方針の決定に役立ちます。

5-3. CT・MRI検査

脳や内臓の血腫では、CTスキャンやMRIが行われます。出血の量や場所を正確に把握することで、手術が必要かどうかを判断します。

6. 血腫の治療法

血腫の治療は、軽度であれば自然吸収を待ちますが、重度の場合は医療的処置が必要です。

6-1. 安静と冷却

打撲による軽度の血腫は、まず患部を冷やし、安静にすることが基本です。冷やすことで出血を抑え、炎症や腫れを軽減します。

6-2. 圧迫と挙上

弾性包帯などで軽く圧迫し、患部を心臓より高く保つと血流が抑えられ、血腫の拡大を防げます。

6-3. 吸引や切開による排出

大きな血腫や自然吸収しない場合には、医師が針やメスを使って血液を排出する処置を行います。これにより痛みや圧迫感が軽減されます。

6-4. 感染予防と薬物療法

血腫が長期間残ると感染する可能性があるため、抗生物質が処方されることもあります。また、痛み止めや炎症を抑える薬も用いられます。

7. 日常生活での注意点

血腫がある場合は、日常生活でも注意が必要です。無理な動作や刺激を避け、回復を助けるようにしましょう。

7-1. 入浴やマッサージを控える

血腫ができた直後は、入浴やマッサージによって血流が促進されると、出血が悪化する可能性があります。腫れが引くまでは避けましょう。

7-2. 温めるのは数日後から

冷却で炎症を抑えた後、数日経過してから温めると、血液の吸収が促進されます。タイミングを誤ると逆効果になるため注意が必要です。

7-3. 痛みや腫れが長引く場合は受診

自然に治る血腫も多いですが、痛みが強い、腫れが増す、熱を持つといった場合は感染や他の疾患の可能性もあります。早めの受診が大切です。

8. まとめ:血腫は放置せず、適切な対処が重要

血腫とは、血管外に血液が溜まった状態で、外傷や手術、自然出血などが原因で起こります。軽度なものは自然に治りますが、放置すると感染や神経圧迫などのリスクもあります。冷却・安静・受診を心がけ、異常を感じたら早めに医療機関に相談することが大切です。

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