祭りやイベントなどで見かける「露天商」。たこ焼きや焼きそばなどの屋台を出している人たちを指すこの言葉ですが、実際にはどのような職業なのでしょうか。本記事では、露天商の意味、歴史、仕事内容、必要な許可や資格、開業までの流れをわかりやすく解説します。これから露天商を始めたい人にも役立つ内容です。
1. 露天商とは何か
1-1. 露天商の基本的な意味
露天商（ろてんしょう）とは、屋外の公共スペースやイベント会場などで、飲食物や雑貨、くじ引きなどを販売する商売を行う人を指します。 「露天」とは屋根のない屋外を意味し、「商」は商売を行う人のことです。つまり、露天商とは「屋外で商売をする人」という意味になります。
1-2. 屋台との違い
露天商と屋台は似た言葉ですが、厳密には少し違いがあります。 屋台は食べ物を販売する移動式店舗を指し、露天商は飲食に限らず雑貨やゲーム、くじ引きなどを扱うこともあります。 屋台は露天商の一形態であり、露天商という言葉のほうが広い範囲を指しています。
2. 露天商の歴史
2-1. 江戸時代の露天商
露天商の歴史は古く、江戸時代にはすでに「振り売り」「屋台商人」と呼ばれる人々が存在していました。 当時は庶民の生活必需品や食べ物を、通りや寺社の前などで販売する形が一般的でした。 特に祭りの日には露天商が並び、人々の楽しみの一つとなっていたといわれています。
2-2. 戦後から現代まで
戦後の日本では、復興期に露天商が増加し、祭りや縁日などのイベントに欠かせない存在となりました。 焼きそば、りんご飴、金魚すくいなどの定番屋台はこの時代に広まり、今でも日本の夏祭り文化を象徴しています。 現在はイベント運営会社や自治体が露天商を管理し、出店には許可が必要となっています。
3. 露天商の仕事内容
3-1. 主な販売内容
露天商の販売内容は多岐にわたります。 ・食べ物：たこ焼き、焼きそば、クレープ、かき氷など ・遊び系：くじ引き、射的、ヨーヨー釣り、スーパーボールすくい ・雑貨類：アクセサリー、工芸品、おもちゃなど これらは季節やイベントの種類に応じて変化し、地域の特色を反映することもあります。
3-2. 出店場所と営業形態
露天商は主に次のような場所で営業を行います。 ・祭りや花火大会などのイベント会場 ・神社仏閣の縁日 ・商店街のイベント ・観光地やフリーマーケット 営業形態としては、個人事業主として活動する人もいれば、露天商の組合に所属している人もいます。
4. 露天商を始めるために必要な許可
4-1. 食品を扱う場合の「営業許可」
露天商で食べ物を販売する場合は、保健所の「食品営業許可」が必要です。 特に調理を伴う屋台（たこ焼き、焼きそばなど）は、移動販売車や仮設調理場としての基準を満たさなければなりません。 また、営業者本人が「食品衛生責任者」の資格を取得する必要があります。
4-2. 公共スペース使用の「出店許可」
露天商が営業するには、自治体やイベント主催者から出店許可を得る必要があります。 許可なしで道路や公園などに出店することは「無許可営業」となり、法律で禁止されています。
4-3. 消防・ガスの安全基準
ガスを使用する屋台では、火気の取り扱いに関する消防法上の安全基準も守る必要があります。 消火器の設置やガスボンベの固定など、火災防止対策が義務づけられています。
5. 露天商のメリットとデメリット
5-1. メリット
・少ない初期投資で始められる ・自由な働き方ができる ・イベントごとに売上が変動し、繁忙期には高収入も可能 ・お客様と直接関わり、やりがいを感じやすい
5-2. デメリット
・天候に左右されやすい ・出店許可や設備準備などの手間がかかる ・安定した収入を得るのが難しい ・繁忙期と閑散期の差が大きい
露天商は自由度が高い反面、自己管理能力や営業力が求められる仕事です。
6. 露天商として開業する手順
6-1. 取り扱う商品を決める
まず、どんな商品を販売するかを決めます。 食べ物、雑貨、遊戯系など、自分の得意分野や興味に合わせて選びましょう。
6-2. 必要な設備を整える
屋台やテント、調理器具、発電機、照明など、販売に必要な設備を準備します。 近年は軽トラックを改造した「キッチンカー」で営業する人も増えています。
6-3. 許可申請を行う
扱う商品に応じて、保健所や自治体への申請を行います。 特に食品を扱う場合は、衛生面や設備基準を満たす必要があります。
6-4. イベント出店を申し込む
自治体や商店街が主催するイベント、夏祭り、マルシェなどに出店申請をします。 出店料はイベントによって異なり、数千円から数万円程度が一般的です。
7. 露天商の収入と現状
7-1. 露天商の平均収入
露天商の収入は季節やイベント規模によって大きく変動します。 一般的には1日の売上が2〜10万円前後、利益率は30〜50％ほどといわれています。 ただし、天候不良やイベント中止で収入が減ることもあります。
7-2. 現代の露天商の新しい形
最近では、伝統的な祭りだけでなく、マルシェやキッチンカーイベントなど新しい露天商スタイルも広まっています。 SNSを活用して集客する事例も多く、若い世代の参入も増えています。 伝統的な屋台文化と現代のビジネススタイルが融合しつつあるのが特徴です。
8. 露天商に向いている人の特徴
8-1. 行動力がある人
露天商は自ら動いて仕入れ・出店・販売を行うため、積極的に行動できる人に向いています。
8-2. 人との交流が好きな人
お客様との会話が多いため、人と接することが好きな人に向いています。 笑顔や気配りが売上にもつながります。
8-3. 柔軟な対応ができる人
天候やイベント状況に応じて、販売内容や場所を柔軟に調整できる力も求められます。
9. まとめ：露天商は日本の文化を支える職業
露天商とは、屋外で商品を販売する人のことを指し、古くから日本の祭りや縁日を支えてきた職業です。 始めるには許可や設備が必要ですが、工夫次第で高い収入を得ることも可能です。 自由な働き方ができ、人々と直接関われる魅力的な仕事です。 現代では、伝統を守りつつ新しいスタイルの露天商も増えています。露天商は、今もなお日本の地域文化とともに息づく生業といえるでしょう。
