社内文書や行政書類などでよく目にする「回付」という言葉。日常会話ではあまり使われませんが、ビジネスや法務の現場では重要な意味を持ちます。本記事では、「回付とは何か」から、似た言葉との違い、具体的な使い方までを詳しく解説します。

1. 「回付」の読み方と基本的な意味

1-1. 読み方

「回付」は一般的に「かいふ」と読みます。漢字の「回」は“まわす”“循環する”という意味を持ち、「付」は“渡す”“添える”という意味があります。つまり「回付」とは、「回して渡す」「順に送り届ける」というニュアンスを持つ言葉です。

1-2. 基本的な意味

「回付」とは、文書や書類などを順に関係者へ回して渡すことを指します。単なる伝達ではなく、社内の承認や確認の流れの中で使われるのが特徴です。たとえば、申請書を各部署へ回して承認印をもらう場合などが典型的な「回付」です。

1-3. 「回付」が使われる場面

回付はビジネスだけでなく、法律や行政の世界でも用いられます。たとえば、裁判所や官公庁で書類を他の部署や上位機関へ送る際にも「回付」という表現が用いられます。ビジネスでは主に「書類の流れを示す言葉」、法務では「手続き上の文書移送」を意味します。

2. 「回付」と似た言葉との違い

2-1. 「回覧」との違い

「回覧」は、文書を順番に回して内容を確認してもらう行為を指します。一方で「回付」は、文書を届ける・送る行為に焦点が当たります。
つまり、「回覧」は“見てもらうこと”が目的で、「回付」は“届けること”が目的という違いがあります。

2-2. 「回議」との違い

「回議(かいぎ)」とは、文書を回して意見や承認を求めることです。
「回付」は単に“渡す”行為であり、意見を求めるニュアンスは含みません。したがって、回議は「回付+議論・承認」という広い意味を持つ言葉だといえます。

2-3. 「回送」との違い

「回送」は、主にモノや人を別の場所へ送ることを意味します。バスの「回送中」などがその例です。
「回付」はそれに比べ、文書や手続きを送るという限定的な意味で使われます。

3. ビジネスシーンにおける「回付」の使い方

3-1. 社内文書での使用例

社内で稟議書や申請書を提出するとき、複数の承認者を経由する流れが発生します。このような場合、「書類を各部署へ回付する」「次の承認者に回付する」と表現します。
例文:
・「この契約書を法務部へ回付しました。」
・「承認が完了したら、経理部に回付してください。」
このように、業務プロセス上の「書類の移動」を表すのに使われます。

3-2. 電子ワークフロー上での「回付」

最近では、電子申請システムやワークフローソフトでも「回付」という言葉が使われます。
例えば、オンラインで稟議書を提出する際に「回付先」を設定し、順番に承認を求める仕組みがあります。
この場合も、紙の文書と同じく「誰に」「どの順番で」回すかが重要になります。
例文:
・「ワークフロー上で部長に回付済みです。」
・「回付先を変更したため、再度申請をお願いします。」

3-3. 法務・行政における「回付」

法務や行政の分野では、「回付」は正式な手続き用語として使われます。
たとえば、裁判所で事件が別の管轄に移される場合、「事件を〇〇支部へ回付する」と表現されます。
また、行政文書が上級機関へ送られる際にも「回付」という言葉が使われます。
このように、文書や手続きが一段階上の機関へ送られるときにも「回付」が使われるのです。

4. 「回付」を使う際の注意点

4-1. 書類・文書以外には使わない

「回付」はあくまで文書・書類などを回す行為を指します。荷物や人など、物理的な移動に対しては通常使いません。「この荷物を回付した」という表現は誤用になります。

4-2. 類似語と混同しない

「回覧」や「回議」など似た言葉がありますが、それぞれ目的が異なります。
・回覧=見るために回す
・回議=意見・承認を求めるために回す
・回付=届けるために回す
このように区別しておくと、誤解やミスを防ぐことができます。

4-3. 回付ルートを明確にする

実務では、「誰から誰へ」「どの順番で」回付するのかを明確にしておくことが重要です。
特に電子ワークフローでは、ルートの設定を間違えると承認が滞る原因になります。
また、回付後に書類をどう扱うか(保管・承認・廃棄など)も明示しておくと業務がスムーズです。

5. 「回付」を使った例文集

5-1. 社内文書の例文

・「この申請書を上司へ回付してください。」
・「総務部から回付された書類を確認しました。」
・「経理課に回付後、承認印をもらってください。」

5-2. 電子ワークフローでの例文

・「承認ルートを設定し、課長に回付しました。」
・「回付先の部署を間違えたため、再申請します。」
・「電子決裁システムで回付を完了しました。」

5-3. 法務・行政文書での例文

・「本件は本庁へ回付され、以後の手続きは本庁で行われます。」
・「書類を関連部署に回付し、承認印を受けてください。」
・「裁判所から別の支部へ回付された事件について通知が届きました。」

6. まとめ:正しく理解して効率的に使おう

「回付」とは、書類や文書を順に回して届ける行為を指します。
ビジネスシーンでは申請書や稟議書、法務・行政の場では手続き文書の移送など、幅広く用いられる用語です。
重要なのは、「回付」「回覧」「回議」の違いを理解し、正しい文脈で使うこと。
正確に使いこなせば、文書管理や承認業務の効率化に大いに役立ちます。
社内外のコミュニケーションを円滑に進めるためにも、「回付」という言葉の意味と使い方をしっかり身につけておきましょう。

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