「それは管轄外です」「当社の管轄外となります」といった表現を、ビジネスや行政の現場で見聞きしたことがある人も多いでしょう。「管轄外」という言葉は丁寧な印象がありますが、使い方を誤ると冷たい印象にもなりかねません。この記事では、「管轄外」の正しい意味、使い方、類語との違い、注意点などをわかりやすく解説します。
1. 「管轄外」の基本的な意味
1-1. 読み方は「かんかつがい」
「管轄外(かんかつがい)」とは、ある組織・担当者・機関などが責任や権限を持たない範囲や対象を意味します。「自分の担当ではない」「その組織が扱うべき範囲ではない」という意味合いです。
1-2. 「管轄」という言葉の意味
「管轄」は、一定の範囲について管理・監督・判断する権限を持っていることを表します。これに「外」がつくことで、「その範囲の外にある=対象外・無関係」という意味になります。
2. 「管轄外」の使い方と例文
2-1. 行政や公的機関での使用例
自治体、警察、税務署などの公的機関では、明確な権限の分担があるため、取り扱えない案件について「管轄外」という表現が使われます。
例文
・その件は当市の管轄外となりますので、都の窓口にお問い合わせください
・この事故はA警察署ではなく、B署の管轄です。こちらでは対応できません
2-2. 企業・ビジネスでの使用例
企業においても、部署や担当者の業務範囲外の問い合わせや依頼について「管轄外です」と説明することがあります。
例文
・そのサービスは弊社の管轄外となっております
・契約内容に関するご質問は法務部の管轄となりますので、そちらにお尋ねください
2-3. 丁寧な表現にする工夫
「管轄外です」は簡潔な一方、やや突き放す印象にもなりやすいため、ビジネスメールや接客では次のようにやわらかい言い回しが好まれます。
例文
・恐れ入りますが、当方の所管ではございません
・あいにく、こちらの部署ではお答えいたしかねます
・担当部署に確認の上、改めてご連絡差し上げます
3. 類語・関連語との違い
3-1. 所管外との違い
「所管外(しょかんがい)」も「管轄外」とほぼ同義です。違いはほとんどなく、意味も使い方も共通しますが、「所管」は特に役所や官公庁の文書で多く使われます。
3-2. 担当外との違い
「担当外」は、個人やチームの仕事の範囲を超えていることを示します。「管轄外」は組織や制度全体の権限の範囲外を指す場合が多いため、スケールに違いがあります。
例:
・その業務は私の担当外です(個人レベル)
・当社の管轄外です(組織・制度レベル)
3-3. 関与していないとの違い
「関与していない」は「かかわっていない」ことを表す中立的な言い回しです。一方で「管轄外」は、明確に「権限がない」という意味合いを含みます。
4. 英語での「管轄外」の表現
4-1. outside one’s jurisdiction
もっとも一般的な表現は「outside one’s jurisdiction」です。公的な権限や組織的な担当範囲を超えていることを意味します。
例文
This matter is outside our jurisdiction.
(この件は私たちの管轄外です)
4-2. not within our scope / responsibility
「私たちの担当範囲ではありません」と丁寧に伝える表現として、「scope(範囲)」や「responsibility(責任)」を使うこともあります。
例文
That issue is not within our responsibility.
(その問題は私たちの責任範囲ではありません)
5. 「管轄外」と言うときの注意点
5-1. 無責任な印象を与えないように
「管轄外だから知りません」「対応できません」と突き放すような言い方は、相手に冷たい印象を与える可能性があります。適切な窓口の案内や代替案の提示を添えるのが丁寧です。
5-2. 相手の立場に立った表現を
たとえ自分の権限外であっても、相手が困っている場合には共感や配慮を示す姿勢が大切です。「本来は管轄外ですが、できる範囲でお調べします」といった一言が信頼感につながります。
6. まとめ
「管轄外」とは、自分または所属組織が権限や責任を持たない範囲を示す表現です。公的機関や企業でよく使われ、明確な業務範囲を伝えるうえで便利な言葉ですが、使い方によっては冷たい印象を与えることもあります。類語との違いや丁寧な言い換え表現を理解し、状況に応じて適切に使い分けることで、相手に配慮した伝え方ができるようになります。