「賜りたく存じます」は、ビジネスシーンや改まった場面で、相手に何かを丁寧にお願いする際に使われる非常に格式高い敬語表現です。意味を理解せずに使ってしまうと、文脈にそぐわなかったり、違和感を与えたりすることもあります。本記事では、「賜りたく存じます」の正確な意味や使い方、使用例、言い換え表現、注意点についてわかりやすく解説します。
1. 「賜りたく存じます」の意味とは
1-1. 言葉の構造と敬語レベル
「賜りたく存じます」は、「賜る（たまわる）」という謙譲語と、「〜したいと存じます」という丁寧な希望の形が組み合わさった表現です。「賜る」は「いただく」の謙譲語で、「目上の人から何かをいただく」という意味を持ちます。「存じます」は「思います」の謙譲語です。つまりこの表現は「〜していただければと考えております」という、控えめかつ丁寧な依頼表現です。
1-2. 使用するシーン
この表現は、特に次のような場面で使われます。
・取引先や顧客への正式な依頼
・セミナーや式典などへの出席依頼
・お願いや意見を丁重に求めたい場面
・社外に向けた案内文やお礼状
ビジネスの中でも格式や丁寧さが重視される状況で用いるのが適しています。
2. 実際の使用例とシーン別例文
2-1. ビジネスメールでの使用例
・ご多忙中恐れ入りますが、ご回答を賜りたく存じます。
・お手数ですが、資料のご確認を賜りたく存じます。
・本件につきまして、上司の承認を賜りたく存じます。
2-2. 挨拶文や案内状での使用例
・今後ともご指導ご鞭撻を賜りたく存じます。
・ご多忙の折とは存じますが、ご出席を賜りたく存じます。
・ご厚情を賜りたく、お願い申し上げます。
2-3. 電話応対・訪問時の口頭例
・あいにく担当者が不在のため、後ほど改めてお時間を賜りたく存じます。
・先ほどの件につきまして、少々ご説明のお時間を賜れますでしょうか。
3. 言い換え表現と使い分け
3-1. 同様の意味を持つ丁寧表現
・いただけますと幸いです
・お願い申し上げます
・ご確認のほどよろしくお願いいたします
・ご協力をお願い申し上げます
・ご意見を頂戴できれば幸いです
3-2. 言い換え例文
・ご返信を賜りたく存じます
→ ご返信をお願い申し上げます
→ ご返信をいただけますと幸いです
・今後とも変わらぬご愛顧を賜りたく存じます
→ 今後とも変わらぬご支援をお願い申し上げます
→ 引き続きのご厚情をいただけますようお願い申し上げます
4. 使用時の注意点
4-1. 使う場面を選ぶ
「賜りたく存じます」は、あくまでフォーマルな表現です。カジュアルなやり取りや社内の気軽な連絡、メールの中で多用すると、かえって不自然な印象を与えることがあります。取引先や顧客に対する正式な文書や依頼、スピーチなど、格式を求められる場面に限定して使うのが望ましいです。
4-2. 繰り返しすぎない
一つの文書内で何度も「賜りたく存じます」を使うと、文面が堅くなりすぎてしまいます。他の丁寧な依頼表現と使い分けて、自然で読みやすい文体を意識しましょう。
4-3. 二重敬語に注意
「ご確認を賜りたくお願い申し上げます」のように敬語を重ねすぎると、不自然な文章になります。「賜りたく存じます」だけで十分丁寧な表現であるため、他の敬語を付け加える必要はありません。
5. よくある質問と疑問
5-1. 「賜ります」との違いは？
「賜ります」は、「いただきます」という断定的な謙譲表現です。一方「賜りたく存じます」は「いただきたいと考えております」という控えめな依頼を表します。ビジネスシーンで何かをお願いする場合には、「賜りたく存じます」の方が柔らかく印象が良くなります。
5-2. 上司や社内で使ってもいいの？
上司に使っても問題ありませんが、頻繁に使うと堅苦しく感じられることがあります。社内では「お願い申し上げます」や「ご確認いただけますと幸いです」など、場に応じて柔らかく言い換えるのがおすすめです。
5-3. 書き言葉だけ？話し言葉でも使える？
主に書き言葉として使われますが、フォーマルな場での挨拶やスピーチなどでは口頭でも自然に使えます。日常会話やメールで多用すると堅苦しくなるため、適度な使用が求められます。
6. まとめ
「賜りたく存じます」は、目上の人や社外の相手に対して丁寧にお願いや依頼を伝えるための敬語表現です。特にビジネスの改まった場や、正式な案内、依頼状、感謝文などにおいて非常に有効です。ただし、使いすぎや文脈に合わない使用は、かえって違和感を与えることもあるため、場面に応じた自然な言葉遣いが大切です。適切な敬語表現を選び、相手に敬意と誠意を伝える文章を心がけましょう。
