「迚も」という言葉は古文や文学作品で見かけることがありますが、現代の文章ではあまり目にすることがありません。「とても」と読むことが多いですが、正確な意味や用法を理解している人は意外と少ないです。本記事では「迚も」の意味、読み方、使い方、類語、歴史まで詳しく解説します。

1. 「迚も」の基本的な意味

1-1. 現代日本語での意味

「迚も(とても)」は、程度が非常に高いことや、極端な状態を表す副詞です。
「非常に」「大いに」「甚だしく」といった意味で用いられる
古典文学や書き言葉で使われることが多い
例:
「迚も驚いた」=非常に驚いた
「迚も美しい景色」=たいへん美しい景色

1-2. 強調表現としての役割

「迚も」は、主観的感情や物事の程度を強調するために使われます。
喜び、驚き、悲しみなどの感情の度合いを強める
文章の表現を豊かにする役割がある
例:
「迚も嬉しく思う」=非常にうれしい
「迚も恐ろしい出来事」=極めて恐ろしい

2. 「迚も」の読み方

2-1. 標準的な読み方

「迚も」は一般的に**「とても」**と読みます。
現代仮名遣いでは「とても」と書くことが多く、日常生活では漢字で書かれることは稀です。

2-2. 文語・古典での読み方

古文や漢文訓読では「とても」と読まれる
口語的には「とても」と同じ意味で使用されるが、文語独特のリズムがある
例:
『源氏物語』:「迚も嬉しきこと」=非常に嬉しいこと
『徒然草』:「迚も珍しき物」=たいへん珍しいもの

3. 「迚も」の語源・由来

3-1. 漢字の成り立ち

「迚」=「とお(おお)く」「遠い」の意味もありますが、ここでは音読として使用
「も」=副助詞で、強調の意味を付加
結果として「迚も=とても」という強調副詞になる

3-2. 歴史的背景

平安時代以降の文学作品で使用例が見られる
江戸時代以降は、「とても」と平仮名表記されることが増え、漢字表記は文語や格式のある文章に残った
明治期以降の近代文学では、漢字より仮名表記が主流となった

4. 「迚も」の使い方

4-1. 形容詞や動詞を修飾

「迚も」は形容詞や動詞の前に置かれて、程度を強調します。
例:
「迚も美しい花」=非常に美しい花
「迚も感動した」=たいへん感動した

4-2. 文語表現としての使い方

文語的文章では、漢字表記で「迚も」を用いると文章が格式高くなる
手紙、詩歌、随筆などで古風な表現を演出できる
例:
「迚も御心安かれ」=どうか心安らかであれ
「迚も珍しき光景」=たいへん珍しい景色

4-3. 現代語での置き換え

現代では「とても」「非常に」「すごく」に置き換えることができる
日常文章では漢字表記より平仮名表記のほうが自然
例:
「迚も寒い」=「とても寒い」
「迚も面白い話」=「非常に面白い話」

5. 「迚も」の類語・関連語

5-1. 類語

非常に:程度の高さを表す副詞
大いに:程度が非常に大きいこと
甚だ(はなはだ):強調表現(文語的)
すこぶる:非常に、たいへん(文語・口語双方)

5-2. 言い換え表現の例

「迚も嬉しい」→「非常に嬉しい」
「迚も素晴らしい」→「大いに素晴らしい」
「迚も珍しい」→「すこぶる珍しい」

6. 「迚も」を使った例文集

6-1. 文語・古典的例文

「迚も御気持ち痛み入る」=たいへんご心配おかけしました
「迚も珍しき鳥を見たり」=非常に珍しい鳥を見た
「迚も嬉しきこと限りなし」=とても嬉しいことに限りがない

6-2. 現代文での例文

「迚も寒い日だったので、家から出られなかった」
「迚も面白い映画だったので、もう一度見たい」
「迚も感動的な演奏で、涙が出た」

6-3. 詩歌・文学作品での例文

「迚も美しき桜の花」=非常に美しい桜の花
「迚も心惹かれる景色」=たいへん心惹かれる景色
「迚も尊き御行」=非常に尊いお行い

7. 「迚も」を使う上での注意点

7-1. 現代文での使用

現代では「とても」と平仮名で書くことが自然
漢字表記「迚も」は古文・文語的文章や詩歌、格式のある文書に限る

7-2. 文語表現の理解

古典文学を読む際に意味を取り違えないよう注意
「迚も」は強調副詞であり、肯定・否定文どちらでも使用可能

7-3. 類語との違い

「非常に」「すこぶる」「甚だ」とほぼ同義だが、文体やニュアンスが異なる
文語・古典的文章では「迚も」が自然

8. 「迚も」を理解するメリット

8-1. 古典文学の理解が深まる

『源氏物語』『徒然草』『万葉集』などで多用
古語としての意味やニュアンスを理解すると作品理解が深まる

8-2. 文語表現の文章力向上

手紙、詩歌、随筆で使うと文章が格調高くなる
古典文学や歴史文書を引用する際に便利

8-3. 日本語表現の幅が広がる

強調表現の多様化が可能
文語・口語双方で適切に使える副詞として活用できる

9. まとめ

「迚も」とは、非常に、たいへん、甚だしくといった意味を持つ副詞です。
古典文学や格式ある文章で使用される漢字表記の副詞
形容詞や動詞を修飾し、程度を強調する
類語には「非常に」「大いに」「すこぶる」「甚だ」があり、文脈に応じて使い分ける
現代では「とても」と平仮名表記されることが多く、口語文章や日常表現では漢字表記はほとんど見かけません。しかし、古典文学や格式ある文章を理解・表現する際には「迚も」の知識が役立ちます。適切に使うことで、文章の表現力や深みが増すでしょう。

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