「解離性健忘(かいりせいけんもう)」は、ストレスやトラウマが関係して記憶が一時的に失われる症状として知られています。医学的にも心理学的にも重要な概念で、正しい理解と対応が求められます。本記事では読み方から症状、原因、治療まで詳しく解説します。
1. 解離性健忘の読み方と意味
「解離性健忘」の読み方は、かいりせいけんもうです。「解離性」は心理学で使われる用語で、意識や記憶、感情のつながりが一時的に断たれることを指します。「健忘」は記憶喪失のことです。つまり「解離性健忘」とは、心理的要因によって特定の記憶が思い出せなくなる状態を意味します。
1-1. 解離性とは
心理学における「解離」とは、本来つながっているはずの記憶・感情・意識が分離してしまう現象です。強いストレスやトラウマ体験によって、心が無意識に防御反応として記憶を切り離すことがあります。このため、通常の記憶障害とは異なり、脳の器質的な損傷が原因ではありません。
1-2. 健忘とは
「健忘」とは記憶が失われる状態を指します。解離性健忘の場合、日常生活に支障をきたすほどの記憶喪失が起こることがありますが、脳の物理的障害が原因ではなく、心理的・精神的な要因に起因します。
2. 解離性健忘の症状
解離性健忘の症状は個人差がありますが、共通して見られるものがあります。典型的には以下のような症状が挙げられます。
2-1. 特定の記憶の喪失
強いストレスやトラウマに関連する出来事や期間の記憶が思い出せなくなります。たとえば事故や事件、虐待の記憶が突然思い出せないことがあります。
2-2. 身元や個人情報の混乱
重度の場合、自分の名前や住所、家族のことなど基本的な個人情報が一時的に思い出せなくなることもあります。この場合は、医療機関での早期対応が必要です。
2-3. 健忘の範囲
記憶喪失は、特定の出来事だけに限られることもあれば、数時間や数日単位の広範囲にわたることもあります。一般的に、「限定型」と「全般型」に分類されます。限定型は特定の記憶のみ失われるタイプ、全般型は自分自身の生涯の記憶まで失われる場合もあります。
3. 原因と背景
解離性健忘は心理的なストレスやトラウマが大きく関係しています。脳に器質的な障害がなくても、心の防衛機制として記憶が遮断されるのです。
3-1. トラウマとの関係
幼少期の虐待や交通事故、自然災害など、強い心理的衝撃が解離性健忘の原因になることがあります。心がその記憶を直接受け止めきれない場合、防衛的に記憶を切り離すメカニズムが働きます。
3-2. ストレスや心理的要因
日常的な強いストレスや心理的圧迫も解離性健忘を誘発することがあります。仕事や家庭環境での強い負荷が原因となり、記憶が断片化する場合があります。
3-3. 脳機能との関係
解離性健忘は器質的な脳損傷が原因ではありませんが、記憶や意識のネットワークが心理的ストレスにより一時的に機能低下することが研究で示されています。
4. 診断方法
解離性健忘は医師や臨床心理士による診断が必要です。症状の確認や心理テスト、面接を通じて診断されます。
4-1. 面接と問診
過去の出来事やストレスの状況を詳しく聞き取り、記憶の喪失が心理的要因に基づくものかどうかを確認します。
4-2. 脳画像検査
必要に応じてMRIやCTで脳の構造異常がないか確認することもあります。器質的障害が原因でないことを確認することが重要です。
4-3. 心理検査
解離性障害の評価を行う心理検査(解離性体験尺度など)が用いられ、症状の程度や範囲を把握します。
5. 治療法と対処法
解離性健忘の治療は心理療法が中心です。記憶が自然に回復する場合もありますが、必要に応じて専門家による支援が行われます。
5-1. 心理療法
カウンセリングや認知行動療法(CBT)、トラウマ治療などで、失われた記憶や感情を整理するサポートが行われます。
5-2. 薬物療法
解離性健忘そのものを直接治療する薬はありませんが、併発する不安や抑うつ症状に対して抗不安薬や抗うつ薬が用いられることがあります。
5-3. 日常生活での対処
家族や友人のサポート、ストレスの軽減、安心できる環境の確保が重要です。急に記憶が戻らない場合でも、焦らず専門家の指導を受けることが大切です。
6. まとめ
「解離性健忘(かいりせいけんもう)」とは、心理的ストレスやトラウマが原因で特定の記憶が一時的に失われる症状です。「解離性」は心の防衛機制による記憶の切り離し、「健忘」は記憶喪失を意味します。症状の範囲は個人差があり、心理療法を中心に治療が行われます。早期に医療機関を受診し、適切な支援を受けることが回復の鍵となります。
