「矜恃」という言葉は、日常会話ではあまり使われませんが、文学作品やビジネス文書、評論などで目にすることがあります。単に「誇り」と訳されることもありますが、自尊心やプライドと少し異なる、内面的な尊厳や自負を含む微妙なニュアンスを持っています。本記事では、「矜恃」の意味、語源、使い方、類語表現、例文、注意点まで幅広く解説します。

1. 「矜恃」の基本的な意味

「矜恃(きょうじ)」は、自分自身の価値や能力に対して持つ誇りや自尊心を表す言葉です。
基本意味
 - 自分の価値や能力に自信を持ち、尊重する心
 - 内面的な誇りや自負
例:
彼は自らの矜恃を守るために決して譲歩しなかった
社会人としての矜恃を失わない行動
比喩的意味
 - 自尊心・プライドを守ること
 - 外部の評価よりも自己の信念を重視する態度
例:
苦境に立たされても、矜恃を失わず努力を続ける
その言葉に傷ついたが、矜恃のため黙って受け流した
「矜恃」は、単なる「誇り」や「プライド」とは違い、自己評価と自己尊重を伴うニュアンスがあります。

2. 「矜恃」の語源と成り立ち

「矜恃」は漢字二文字から成り立っています。
矜(きょう)
 - 慎み深く尊ぶ、誇りに思う
 - 他人の目に屈せず自分を大事にする意味
恃(じ)
 - 頼る、信じる、自信を持つ
 - 自分自身や能力に依存する意味
この二文字が合わさることで「自分の能力や価値を信じ、誇りに思う心」という意味を形成しています。
古典文学や漢詩では、武士や学者の内面的な誇りを表現する際に使われてきました。

3. 「矜恃」の使い方

「矜恃」は文章や会話で、主に名詞として使用されます。文脈によってニュアンスが変化するため、正しい理解が必要です。

3-1. 日常生活での使い方

日常会話ではやや硬い表現ですが、自己尊重や誇りを強調する際に使えます。
例:
自分の矜恃を守るために断った
小さな失敗にめげず矜恃を保つ
親としての矜恃を忘れずに行動する

3-2. ビジネス・職業上での使い方

ビジネス文書や報告書、評論では、職業的誇りや専門性を示す際に使用されます。
例:
弁護士としての矜恃を守る
技術者の矜恃を損なわない品質管理
教育者の矜恃にかけて正しい指導を行う
文脈に応じて、単なる「プライド」以上の意味、自己の職務や専門性に誇りを持つニュアンスを伝えられます。

3-3. 文学・評論での使い方

文学作品では、登場人物の内面的な尊厳や葛藤を描く際に「矜恃」が使われます。
例:
主人公は矜恃を失わぬよう静かに決断した
戦場に立つ武士の矜恃が描かれている
矜恃を胸に秘め、逆境に立ち向かう姿
評論やエッセイでも、人間の精神的強さや価値観を表現する際に有効です。

4. 「矜恃」の類語・言い換え表現

「矜恃」と似た意味を持つ表現には以下のようなものがあります。
誇り(ほこり)
 - 一般的な自己尊重
 - 「矜恃」より抽象度は低く、軽いニュアンスもある
プライド
 - 英語由来で自尊心を指す
 - 自己評価や外的評価に左右される場合もある
自尊心(じそんしん)
 - 自分の価値を尊ぶ心
 - 「矜恃」と近いが、やや心理学的表現
威厳(いげん)
 - 他者に対して示す尊厳
 - 外面的な表現が強く、内面的な矜恃とはやや異なる
面目(めんぼく)
 - 社会的・対人関係上の誇り
 - 「矜恃」は個人内面の誇りを指す点で異なる

5. 「矜恃」を使った例文集

日常生活
 - 彼は矜恃を保ちながら、自分の信念に従った。
 - 矜恃を失わないために、最後まで努力を続けた。
ビジネス・職業文脈
 - 医師としての矜恃にかけて患者に最善の治療を提供する。
 - 研究者の矜恃を守るために、データの正確性を最優先した。
文学・詩的表現
 - 矜恃を胸に秘め、彼女は嵐の中を歩いた。
 - 武士の矜恃が物語の緊張感を高める。
比喩表現
 - 小さな勝利でも矜恃を感じる瞬間がある。
 - 他人の評価に左右されず、矜恃を守ることが大切だ。

6. 「矜恃」を使う際の注意点

文章や文脈を選ぶ
 - 日常会話ではやや硬い印象になる
 - 文学作品、評論、ビジネス文書で自然
内面の誇りを表す言葉であること
 - 外面的な威厳や面目とはニュアンスが異なる
 - 自己の価値や信念に根ざした誇りを表現
類語との使い分け
 - 「プライド」「誇り」「自尊心」と混同しない
 - 文脈に応じて適切に選択することで意味が明確になる

7. まとめ:「矜恃」とは内面的な誇り・自尊心

「矜恃(きょうじ)」は、単なる「誇り」や「プライド」とは異なり、自己の価値や能力に対する内面的な尊厳や自負を意味します。
日常生活:自己尊重や信念に基づく行動
ビジネス・職業:専門性や職務に対する誇り
文学・評論:心理描写や内面的葛藤の表現
類語との違いを理解し、文脈に応じて使うことで、文章や会話で深みのある表現が可能になります。
矜恃を意識することで、自分自身の価値や尊厳を守る姿勢を表現でき、文章や会話に説得力や品格を与えることができます。

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