古文でよく登場する「已然形(いぜんけい)」。高校古文や大学入試では頻出の文法事項ですが、「どんな形なのか」「どんな意味があるのか」が曖昧な人も多いでしょう。この記事では、已然形の意味、作り方、見分け方、用法を初心者にもわかりやすく解説します。例文付きで、古文読解に役立つ知識を身につけましょう。
1. 已然形とは?基本の意味と役割
已然形(いぜんけい)とは、古文の活用形の一つで、「すでに起こったこと」「確定したこと」を表す形です。
文法的には、「すでに〜した」「〜したので」「〜すると」といった確定的な意味を持ち、主に接続助詞「ば」や係助詞「ど」「ども」などを伴って使われます。
現代語で言うと、「〜ので」「〜したところ」「〜したが」などに相当します。文の因果関係や逆接を表す重要な働きを担っています。
2. 已然形の活用位置と文法上の位置づけ
古文には6つの活用形があり、その中で已然形は次のように位置づけられます。
「未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形」
このうち已然形は、「ある動作や状態がすでに起こった後の結果」や「確定した事実」を表すときに使われます。
現代語には直接対応する形がなく、古文特有の用法として理解することが大切です。
3. 已然形の語源と意味の由来
3-1. 「已然」という言葉の意味
「已然」とは漢字で「すでに(已)」「しかる(然)」と書きます。つまり、「すでにそうなった」という意味を持っています。
この語源からも分かるように、已然形は「すでに起こった」「確定した」ことを表す活用形なのです。
3-2. 対になる「未然形」との関係
已然形は、未然形と対になる形です。
未然形が「まだ起こっていない」「これから起こること」を表すのに対し、已然形は「すでに起こった」ことを示します。
・未然形:「行か(ず)」=まだ行っていない
・已然形:「行け(ば)」=すでに行った結果
このように、意味の上でも対比関係にあることがわかります。
4. 各動詞の已然形の作り方
4-1. 五段活用
五段活用動詞は、語幹の母音が「e」に変化した形が已然形です。
例:
・書く → 書け(ば)
・話す → 話せ(ば)
・読む → 読め(ば)
五段動詞は覚えやすく、ほとんど「え段」に変化すると覚えるとよいでしょう。
4-2. 上一段・下一段活用
上一段・下一段動詞は、連用形と同じ形が已然形になります。
例:
・見る → 見れ(ば)
・落つ → 落ちれ(ば)
語幹+「れ」で已然形になるのが特徴です。
4-3. カ行変格活用
カ変動詞(来)は特殊な変化をします。
・来(く) → 来(けれ)
「けれ」が已然形です。古文では「来(けれ)ば」などの形でよく見られます。
4-4. サ行変格活用
サ変動詞(す・おはすなど)は「せ」が已然形です。
・す → せ(ば)
・おはす → おはせ(ば)
サ変も五段と似ていて、語幹+「せ」で表せます。
5. 助詞との組み合わせで変わる已然形の意味
5-1. 「ば」との組み合わせ
已然形+「ば」は、原因・理由や確定条件を表します。
・春になれば花が咲く。(確定条件:「〜すると」)
・雨降れば道ぬかる。(原因・理由:「〜ので」)
未然形+ば(〜なら)と意味が異なるため、区別が必要です。
5-2. 「ど」「ども」との組み合わせ
已然形+「ど」「ども」は、逆接(〜けれども)を表します。
・雨降れど行かず。=雨が降ったけれど行かない
・風吹けども花散らず。=風が吹いたけれど花は散らない
このように、已然形は文の意味をつなぐ重要な役割を果たしています。
6. 已然形の代表的な例文と現代語訳
6-1. 原文と現代語訳
・「花咲けば春を知る。」
(花が咲くと春が来たと分かる。)
・「雨降れども行かむ。」
(雨が降るけれども行こう。)
・「月見れば心も知らず。」
(月を見ていると心が落ち着かない。)
これらの例文のように、已然形は動作の結果や確定条件、逆接などを自然に表すのに使われます。
7. 已然形と連体形・連用形の違い
7-1. 連体形との違い
連体形は名詞を修飾する形で、「〜こと」「〜もの」と訳されます。
一方、已然形は文をつなぐ働きを持ち、「〜ので」「〜すると」のように文を展開させます。
例:
・連体形:「行く人」
・已然形:「行けば分かる」
7-2. 連用形との違い
連用形は動作の連続や中止を表し、「〜て」「〜ながら」などの形で使われます。
一方で已然形は確定的な状態や因果を示すため、意味の深さが異なります。
例:
・連用形:「行きて見たり。」(行って見た)
・已然形:「行ければ見ゆ。」(行くと見える)
8. 已然形を見分けるポイント
8-1. 「ば」「ど」「ども」が続くか確認する
助詞「ば」「ど」「ども」が直後に来ている場合、その前の動詞は已然形である可能性が高いです。
特に「〜ば」で「〜ので」「〜すると」と訳せるときは、已然形+ばの用法になります。
8-2. すでに起こったことを表しているかを見る
文の内容が「確定」「結果」「理由」を表しているなら、已然形が使われていると判断できます。
9. 古文読解での已然形の重要性
古文では、已然形を正しく理解できるかどうかで文意の解釈が大きく変わります。
たとえば「〜ば」が未然形なのか已然形なのかによって、仮定条件(もし〜なら)なのか原因・確定条件(〜ので、〜すると)なのかが決まります。
試験問題でもこの違いが問われることが多く、古文文法の基礎として非常に重要です。
10. まとめ|已然形は「すでに起こったこと」を表す形
已然形とは、「すでに起こった」「確定した」ことを表す活用形で、主に助詞「ば」「ど」「ども」などと組み合わさって使われます。
未然形と対になっており、意味の違いを理解することで古文読解が格段にわかりやすくなります。
「〜ば」や「〜ども」の前に来る動詞の形に注目し、文全体の意味を考えることで、正しく已然形を見抜くことができます。
古文の基礎をしっかり固めるために、已然形の仕組みと使い方を押さえておきましょう。
