「肩をすくめる(かたをすくめる)」という表現は、会話や小説の中でよく見かける日本語の慣用句です。
「彼は肩をすくめて苦笑した」などと使われますが、実際にはどんな気持ちや態度を表しているのでしょうか?
この記事では、「肩をすくめる」の意味、使い方、由来、そして似た表現との違いをわかりやすく解説します。
1. 「肩をすくめる」の意味
「肩をすくめる」とは、両肩を少し持ち上げて首をすぼめるしぐさをすることを指します。
この動作は、言葉を使わずに困惑・あきらめ・同情・驚き・恐れなど、さまざまな感情を表すときに使われます。
つまり、文脈によって意味が変わる表現で、次のような心理を示すことが多いです。
- どうしようもないというあきらめ
- 困った・呆れたという気持ち
- 恐れや不安による反応
- 軽い苦笑・同情の表情
英語でいえば “shrug one’s shoulders” に近い表現です。
2. 「肩をすくめる」の使い方と例文
2-1. あきらめや困惑を表す場合
どうにもならない状況や、相手の言動に呆れたときなどに使われます。
- 彼は何も言わずに肩をすくめた。(=どうしようもないという態度)
- その質問に答えられず、彼女は肩をすくめた。
- 「まあ、仕方ないね」と言って、彼は肩をすくめた。
2-2. 恐れや不安を表す場合
怖いものに対して体をすぼめるような仕草としても使われます。
- 雷の音に驚き、子どもは肩をすくめた。
- 冷たい風に思わず肩をすくめた。
2-3. 同情・苦笑を表す場合
相手の失敗や予想外の出来事に、言葉にせず「まあ、仕方ないね」と表すような場面でも使われます。
- 友人の言い訳を聞いて、彼は肩をすくめて笑った。
- 彼女は「またやっちゃったね」と肩をすくめた。
3. 「肩をすくめる」の由来・語源
「すくめる」は「縮める」「すぼめる」と同じ語源を持つ動詞で、身体をぎゅっと小さくする動作を表します。
「肩をすくめる」とはつまり、首を引っ込めるようにして肩を持ち上げる動作のことで、古くから恐れ・寒さ・恥ずかしさなどの感情を体で表す表現として使われてきました。
4. 「肩をすくめる」の心理的なニュアンス
この表現は、動作自体よりも心の状態を間接的に表すのが特徴です。
人は不安や困惑を感じると、無意識に首や肩をすくめる傾向があるため、「肩をすくめる」は心理的な反応を象徴する動作でもあります。
たとえば、怒られているときや、状況をどうにもできないときに自然と肩を上げてすぼめるのは、「防御」や「萎縮」の表れでもあります。
5. 類語・似た表現との違い
| 表現 | 意味・ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| 肩を落とす | がっかりして元気がなくなる | 試合に負けて肩を落とした。 |
| ため息をつく | 落胆やあきらめを表す | 彼は深いため息をついた。 |
| 首をかしげる | 疑問や納得できない様子を表す | 説明を聞いて首をかしげた。 |
| 肩をすくめる | 困惑・あきらめ・苦笑などを表す | 彼は肩をすくめて笑った。 |
これらはいずれも「感情を体の動きで表す」日本語特有の表現ですが、
「肩をすくめる」は特に“反応的”な動作で、あきらめや戸惑いを含む点が特徴です。
6. 「肩をすくめる」の英語表現
英語では「肩をすくめる」は次のように表現されます。
| 英語表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| shrug one’s shoulders | 肩をすくめる | He shrugged his shoulders and smiled.(彼は肩をすくめて笑った。) |
| shrug | (単独でも)肩をすくめる | She just shrugged.(彼女はただ肩をすくめただけだった。) |
英語でも同じく「困惑」「あきらめ」「関心のなさ」などを表す動作として用いられます。
7. まとめ
「肩をすくめる」とは、困った・あきれた・どうしようもないと感じたときに、肩を少し上げる仕草をすることを意味します。
言葉を使わずに感情を伝える表現であり、日本語でも英語でも共通して使われる自然な人間の動作です。
文学や日常会話で使うと、登場人物や話の情景を豊かに表現できる便利な慣用句です。
