日常会話やビジネスシーン、法的な文脈などで使われる「取り下げる」という言葉。その意味を正確に理解していないと誤解を招く恐れがあります。本記事では、「取り下げる」の意味、使い方、例文、関連語、注意点まで詳しく解説します。
1. 「取り下げる」とは何か
1-1. 基本的な意味
「取り下げる」とは、提出・提示・主張していたものを自分の意思で引っ込める、または撤回することを意味します。日本語では丁寧で控えめな印象があり、主張や申請を一方的に取りやめる際に使われます。
1-2. 類義語との違い
「撤回する」や「中止する」などと混同されがちですが、「取り下げる」は相手に何かを申請・申し出た後、それを辞退または取消すニュアンスがあります。つまり、自らの判断で「出したものを引っ込める」という行為に焦点がある言葉です。
2. 「取り下げる」の使い方と例文
2-1. ビジネスにおける使用例
ビジネスでは「申請」や「提案」などを「取り下げる」場面があります。以下に使用例を示します。
・新規プロジェクトの提案は、先方の意向により取り下げることにしました。
・契約書の提出後、一部内容に不備があり、いったん取り下げました。
このように、丁寧で柔らかい表現として使われるため、トラブルを避ける意図でも有効です。
2-2. 法的・行政的な場面での使用
裁判所への訴訟や警察への届け出など、公式な手続きでも「取り下げる」は頻出します。
・告訴状を提出したが、加害者との話し合いの結果、取り下げることにした。
・異議申立てを一度行ったが、再考の末、正式に取り下げました。
これらはすべて「提出された主張・申立てを自らの意思で引き下げる」という点で共通しています。
3. 「取り下げる」の具体的な使いどころ
3-1. 提案や意見に関して
会議やプレゼンなどで発言した意見や提案を、後から自分の判断で引っ込めるときに使用されます。
・さきほどの案については、状況が変わったため取り下げます。
・プロジェクトチーム内での協議の結果、私の提案は取り下げさせていただきます。
3-2. SNSやブログでの情報発信
インターネット上では一度投稿した情報を「削除する」意味でも「取り下げる」と表現する場合があります。
・過去の発言が誤解を招いたため、当該投稿は取り下げました。
・表現に不適切な部分があったため、記事を取り下げる判断をしました。
ただしこの場合、「削除する」「非公開にする」という行為と重なるため、文脈に応じた使い方が必要です。
4. 注意点と誤用の例
4-1. 命令形で使わない
「取り下げろ」「取り下げてください」などの命令形は、相手に強い印象を与えかねません。あくまでも「自分が取り下げる」ものとして使うことが基本です。
・× あなたの意見を取り下げてください。
・○ 先ほどの私の意見を取り下げさせていただきます。
4-2. 「撤回」との混用
「撤回」は、言動や決定を取り消す意味ですが、「取り下げる」と比べてやや強く、訂正や反省の意図がこもることがあります。
・法案を撤回する(政治的判断)
・提案を取り下げる(柔らかい判断)
適切に使い分けることで、文章の印象も大きく変わります。
5. 関連語との比較と使い分け
5-1. 辞退する
「辞退する」は、オファーや参加の誘いを断るときに用います。「取り下げる」とは方向性が異なります。
・内定を辞退する(申し出を断る)
・申請を取り下げる(提出したものを引っ込める)
5-2. 断念する
「断念する」は、あきらめる気持ちを含んだ言葉で、「取り下げる」とは微妙にニュアンスが異なります。
・夢を断念する(実現不可能と判断)
・計画を取り下げる(一時的に停止や撤回)
5-3. キャンセルする
「キャンセル」は主に予約や契約に対して使われ、ややカジュアルです。公式な文書では「取り下げる」のほうが好まれます。
・予約をキャンセルする(軽い印象)
・申し立てを取り下げる(丁寧な印象)
6. 敬語表現としての「取り下げる」
6-1. 丁寧な表現への言い換え
ビジネス文書や公式文で「取り下げる」は以下のように言い換えるとより丁寧になります。
・取り下げさせていただきます
・取り下げる所存です
・いったん取り下げのうえ、再度検討いたします
6-2. メールや書面での使用例
・先日ご提出した申請書につきまして、都合により取り下げさせていただきたく存じます。
・本件提案につきましては、事情変更により一度取り下げたく存じます。
敬語として違和感がないようにするためには、謙譲語とセットで使用するのが基本です。
7. まとめ:「取り下げる」は柔らかく丁寧な撤回表現
「取り下げる」は、自分が出した主張・申請・提案などを、あとから引き下げる際に用いる丁寧な表現です。ビジネスや法律、行政、インターネット上など幅広い場面で使用され、相手への配慮を示すためにも重要な語彙といえるでしょう。正確な意味と使い方を理解し、敬語や文脈に合わせて使いこなすことで、円滑なコミュニケーションに繋がります。