北海道の地名には、アイヌ語由来や漢字の読み方が難しいものが多くあります。その中でも「後志」という地名は特に読み方に迷う人が多い名称です。本記事では、「後志」の正しい読み方とその由来、関連する知識について丁寧に解説します。
1. 「後志」の正しい読み方とは?
1.1 読み方は「しりべし」
「後志」は「しりべし」と読みます。初めて見たとき、「ごし」「あとし」「こうし」と読んでしまう人も少なくありません。実際、「後」という漢字は通常「うしろ」や「あと」「ご」と読むため、「しり」と読むのは非常に珍しいです。
そのため、「後志」の読み方は、北海道外の人を中心に読み間違えが頻発します。旅行先や地図上でこの地名を見たとき、戸惑った経験のある人も多いでしょう。
1.2 なぜ「後志=しりべし」になるのか?
この地名の読みはアイヌ語に由来しています。「しりべし」という音は、アイヌ語で「山の川のある場所」や「山の背」を意味する言葉に起源があるとされています。それに後から当てられたのが「後志」という漢字です。
つまり「後志」は、音に合わせて意味とは無関係な漢字を当てた「当て字」です。このような当て字の地名は、北海道を中心に数多く存在します。
2. 「しりべし」の地名の由来
2.1 アイヌ語が語源
「しりべし」は、アイヌ語の「シリ・ペッ・ウシ」(山・川・のあるところ)や「シリ・ペシュ」(山の背)などに由来すると考えられています。「シリ」は「山」、「ペッ」は「川」、「ウシ」は「あるところ」を意味します。
このように、アイヌ語の意味を考えると、後志地方が山や川に恵まれた自然豊かな地域であることが地名にも表れているのがわかります。
2.2 明治時代に定着した漢字表記
「後志」という漢字表記が採用されたのは、明治時代の北海道開拓期にあたります。政府が北海道を14の「国」に分けた際、「しりべし」の音に合うように「後志国」と命名されたのです。
ここでもやはり意味より音が優先されたため、「後志=しりべし」という現在の読み方が定着しました。
3. 後志地方の地理と特徴
3.1 北海道西部の広域を占める
後志地方は、北海道の西部、日本海側に位置します。小樽市、余市町、ニセコ町、倶知安町などを含み、観光地としても有名です。
特にニセコはパウダースノーで世界的に知られ、冬季には海外からのスキー客で賑わいます。また、夏は登山や温泉を楽しむ観光客も多く訪れます。
3.2 自然環境が豊か
後志地方には羊蹄山や積丹半島など、風光明媚な自然景観が広がっています。海と山の両方に恵まれた地形が特徴で、漁業、農業、観光の三本柱で成り立つ地域経済を支えています。
また、余市町はニッカウヰスキーの創業地としても知られ、観光資源としても人気を集めています。
4. 読み間違えられやすい北海道の他の地名
4.1 難読地名が多い理由
北海道には「後志」だけでなく、読みにくい地名が多数存在します。これはアイヌ語の音を日本語の漢字に当てた結果、意味と読みが一致しない地名が多くなったためです。
たとえば、「音威子府(おといねっぷ)」「幌加内(ほろかない)」「神恵内(かもえない)」などがその代表例です。
4.2 当て字の文化的背景
明治政府は日本全国で行政区画を整備する際、地名を漢字で統一しました。北海道ではアイヌ語の地名が多く、それに音を合わせて無理やり漢字を当てはめたケースが多数見られます。
これにより、見た目と読み方が一致しない、いわゆる「難読地名」が形成されました。「後志」もそのひとつです。
5. 道民にとっては常識の「しりべし」
5.1 地元では当たり前の読み方
北海道に住む人々にとって、「後志(しりべし)」という読み方は日常的なものです。ニュースや天気予報、学校教育などでも頻繁に登場する地名であるため、違和感なく受け入れられています。
観光ガイドや地域のパンフレットでも当然のように「しりべし」と使われており、地元では読み間違いをする人はほとんどいません。
5.2 観光案内にはふりがなやローマ字も
ただし、観光客に向けては読み間違いを防ぐための工夫もされています。例えば、「後志(しりべし)」とふりがなを振った看板や、「Shiribeshi」とローマ字で併記されたパンフレットなどが配布されています。
外国人観光客にもわかりやすいように、多言語対応が進められている点も特徴です。
6. まとめ:「しりべし」という地名の魅力と理解の重要性
「後志(しりべし)」という地名は、読み方だけでなく、その背景にあるアイヌ文化や北海道の歴史を知る手がかりとなります。読みづらいからこそ興味を持ち、調べてみることで、日本の多様な文化的背景に触れることができます。
後志地方は、美しい自然と歴史、そして独自の文化を併せ持つ魅力的な地域です。正しく地名を知ることで、その土地に対する理解と愛着もより一層深まるはずです。