「賜る（たまわる）」は日本語の中でも特に丁寧な表現の一つで、ビジネスや公的な場面でよく使われます。しかし、意味や正しい使い方を理解していないと誤用してしまうことも多い言葉です。本記事では、「賜る」の意味や語源、使い方のポイント、敬語としての注意点まで詳しく解説します。丁寧で正しい日本語を身につけたい方はぜひご覧ください。
1. 「賜る」とは？基本的な意味を理解しよう
1-1. 「賜る」の意味
「賜る（たまわる）」は「いただく」の謙譲語にあたり、相手から物や行為を「いただく」「受ける」という意味で使われます。特に敬意を表す場合に用いる言葉で、上司や取引先、お客様など目上の人から何かを受け取る際に使われます。 例： 「ご指導を賜り、誠にありがとうございます。」 「ご助力を賜りましたこと、深く感謝申し上げます。」
1-2. 「賜る」の語源と漢字の意味
「賜る」は「賜」という漢字が使われています。もともと「賜」は「与える」という意味を持つ漢字で、古くは天皇や高貴な人が臣下に物を与えることを指していました。 しかし、現代の「賜る」は謙譲語として「いただく」という意味で使われ、謙虚さと敬意を込めた表現です。 語源を知ると、なぜ謙譲語として使われるのかが理解しやすくなります。
2. 「賜る」の使い方と例文
2-1. 物をいただく場合の使い方
「賜る」は物品やサービスなどを相手から受け取る際に使われます。謙譲語なので自分側の行為をへりくだって表現します。 例文： 「ご厚志を賜り、誠にありがとうございます。」 「貴重なご意見を賜り、大変感謝しております。」
2-2. 行為や助言など無形のものをいただく場合の使い方
物だけでなく、助言や指導、助力など目に見えないものをいただく際にも使います。 例文： 「ご指導ご鞭撻を賜り、心より御礼申し上げます。」 「多大なるご支援を賜り、感謝申し上げます。」
2-3. メールやビジネス文書での使い方
ビジネスメールや文書では、丁寧に感謝や依頼を表現する際に頻繁に使われます。 例文： 「ご回答を賜り次第、折り返しご連絡申し上げます。」 「ご検討賜りますよう、お願い申し上げます。」
3. 「賜る」と似た言葉との違い
3-1. 「賜る」と「いただく」の違い
「いただく」は謙譲語で幅広く使われる一方、「賜る」はより格式が高く丁寧な表現です。ビジネスや公式の場で重みを持たせたいときに使います。 「いただく」でも十分丁寧ですが、特に目上の方や重要な場面では「賜る」を使うとより敬意が伝わります。
3-2. 「賜る」と「頂戴する」の違い
「頂戴する」も謙譲語で「もらう」の意味ですが、「賜る」ほど格式は高くありません。 ビジネスシーンではどちらも使われますが、文書やフォーマルな場では「賜る」がより丁寧です。
3-3. 「賜る」と「承る」の違い
「承る」は「聞く」や「受ける」の謙譲語で、主に情報や依頼を受ける場合に使います。 「賜る」は物や助力などの受領を表し、「承る」は意見や依頼の受付が中心です。 例： 「ご注文を賜りました」→物の注文を受けた。 「ご意見を承りました」→意見を聞いた。
4. 「賜る」を使う際のポイント
4-1. 謙譲語であることを理解する
「賜る」は自分の行為に使う謙譲語です。相手の行為や状態に使うと間違いです。 例として「お客様が賜る」は誤用で、「お客様に賜る」もおかしいため注意が必要です。
4-2. 丁寧すぎる表現にならないようにバランスを取る
「賜る」は非常に丁寧な言葉なので、多用すると堅苦しくなりすぎることがあります。適切な場面で使い、他の丁寧語とバランスを取りましょう。
4-3. 敬語の重複に注意
「賜る」は謙譲語のため、他の敬語（尊敬語や丁寧語）と重複して使うと不自然になることがあります。 例：「ご教示賜りますようお願い申し上げます」が自然な表現です。
5. 「賜る」を使ったよくある表現
5-1. 感謝を表すフレーズ
「ご指導ご鞭撻を賜り、厚く御礼申し上げます。」 「ご協力を賜りまして、誠にありがとうございます。」
5-2. 依頼を表すフレーズ
「ご確認賜りますようお願い申し上げます。」 「ご回答賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。」
5-3. 返信や返答を促すフレーズ
「ご返答を賜りますと幸いです。」 「ご教示賜りますようお願い申し上げます。」
6. 「賜る」を使うときの注意点と誤用例
6-1. 誤用例と正しい例
誤用：「お客様からご教示を賜りました。」（正しくは「お客様からご教示をいただきました」） これは「賜る」が自分側の行為の謙譲語であり、相手の行為に使うのは誤りです。
正しい例：「お客様よりご教示を賜り、誠にありがとうございます。」
6-2. カジュアルな場での使用は控える
「賜る」は非常にフォーマルな言葉なので、親しい間柄やカジュアルな場面では使わず、「もらう」「いただく」などのほうが適切です。
6-3. 敬語のバランスに注意する
「賜る」を使うときは、文章全体の敬語表現が適切かどうかを確認しましょう。敬語が過剰すぎたり不足したりすると、相手に違和感を与えることがあります。
7. まとめ：「賜る」を正しく使って丁寧な表現を身につけよう
「賜る」は謙譲語で「いただく」を意味し、物や行為を目上の人から受け取る際に使う非常に丁寧な言葉です。語源や意味を理解し、適切な場面で使うことが大切です。
特にビジネスシーンでは相手に敬意を示す表現として欠かせませんが、誤用や使いすぎには注意しましょう。この記事で紹介したポイントや例文を参考にすれば、正しい使い方が身につき、好印象のコミュニケーションが可能になります。
