「ご提示させていただきます」はビジネスメールや書類でよく見かける言葉ですが、敬語としての正確な使い方や適切な表現を知らずに使うと、誤解を招くこともあります。本記事では意味の解説から使い方のポイント、よくある誤用例、言い換え表現まで幅広く解説します。
1. 「ご提示させていただきます」の意味と敬語の成り立ち
1-1. 「提示」の意味とは
提示とは、相手に何かを示したり、案内したりすることを指します。具体的には資料や条件、提案内容などを相手に見せる行為のことです。ビジネスシーンでは契約書、見積もり、企画書などを相手に示す場面で多く使われます。
1-2. 「ご提示させていただきます」の敬語構造
「ご提示させていただきます」は、「提示」に尊敬の接頭語「ご」を付け、さらに「させていただく」という謙譲の表現を重ねた形です。厳密には「ご提示」と「させていただく」はそれぞれ敬語であり、これを組み合わせると二重敬語になります。
しかし、実際のビジネスコミュニケーションでは丁寧さを強調する意味で広く使われています。
1-3. 二重敬語の問題点
二重敬語は日本語の敬語ルールから見ると過剰な表現となり、言葉として不自然に感じる人もいます。とくに上司や取引先など目上の人に対しては注意が必要です。一方で、クッション言葉として定着しているケースも多く、許容範囲内とも言われています。
2. ビジネスシーンにおける「ご提示させていただきます」の適切な使い方
2-1. 相手への丁寧な案内としての利用
例えば、見積もり書や企画案を送るとき、「ご提示させていただきます」という表現は、相手に敬意を示しつつ自分側の動作を謙譲的に伝えたい場合に使います。このとき、資料が相手にとって重要なものであることを意識して使うとよいでしょう。
2-2. 提案・報告の場面での活用
社内の上司や取引先に提案内容を共有するときも、柔らかく丁寧な印象を与えたいなら「ご提示させていただきます」が有効です。ただし、口頭やフランクなやり取りでは言い過ぎに感じられる可能性もあります。
2-3. 過剰敬語として避けたほうがいいケース
公式文書や契約書の文面では過剰敬語は避けるべきです。また、長文の文章の中で繰り返し使うと冗長に感じられ、読み手の集中を妨げる恐れもあります。状況に応じて使い分けましょう。
3. 「ご提示させていただきます」のよくある誤用例と改善ポイント
3-1. 二重敬語を避けるべき場合
「ご提示させていただきます」は二重敬語になるため、例えば目上の人や公式な文書では「提示いたします」や「提示させていただきます」に言い換えるのが望ましいです。
3-2. 「させていただきます」の乱用
謙譲語の「させていただきます」は丁寧な印象を与えますが、乱用すると文章が重たくなり、逆に読みづらくなります。必要な場面だけに留め、シンプルな表現を心がけましょう。
3-3. 相手に動作を強いる印象を与える場合
「ご提示させていただきます」は丁寧ですが、相手に対して動作を強いるニュアンスにもなりかねません。依頼やお願いの場面では「ご検討くださいませ」など、受け手の判断を尊重する表現も合わせて使うとよいでしょう。
4. 「ご提示させていただきます」の適切な言い換え表現
4-1. 「ご提示いたします」
こちらは「提示」に尊敬の「ご」はつけていますが、「いたします」で謙譲語を表すため、二重敬語を避けたい場合の定番表現です。公式文書や取引先へのメールに適しています。
4-2. 「提示させていただきます」
「ご」の尊敬語を外し、謙譲語のみで丁寧に表現した形です。口頭や社内メールで使いやすいです。
4-3. 「ご案内申し上げます」
提示内容が情報提供や案内の場合に使えます。やや柔らかく、相手に配慮した印象を与えられます。
4-4. 「お知らせいたします」
通知や報告の意味合いが強い場面で便利な言い換えです。特に決定事項や重要情報の連絡時に適しています。
4-5. 「ご説明申し上げます」
内容を詳しく解説・説明するときの言い換えです。提示以上に丁寧な印象を与えたい際に使えます。
5. ビジネスメールでの具体的な活用例
5-1. 見積もり送付時のメール例
お世話になっております。
先日ご依頼いただきました件につきまして、添付資料をもってご提示させていただきます。内容をご確認いただき、ご不明点がございましたらお気軽にご連絡ください。
何卒よろしくお願いいたします。
5-2. 会議資料の共有メール例
いつもお世話になっております。
来週開催予定の会議資料をご提示させていただきます。お手数ですが事前にご確認いただき、ご意見などございましたらお知らせください。
よろしくお願いいたします。
5-3. 条件変更の案内メール例
平素より大変お世話になっております。
契約条件の変更に関する詳細を改めてご提示させていただきます。ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。
ご質問等ございましたらご遠慮なくお問い合わせください。
5-4. フォローアップメール例
お忙しいところ失礼いたします。
先日お送りいたしました資料につきまして、ご不明点等はございませんでしょうか。
追加でご説明やご提示させていただける事項があれば、いつでもお知らせください。
6. 「ご提示させていただきます」を使う際のマナーと注意点
6-1. 相手の立場を考慮した敬語の選択
相手の年齢や社歴、立場によって敬語のレベルは調整しましょう。とくに目上の人や重要な取引先には、過剰敬語は避けつつ失礼のない表現を心がけることが大切です。
6-2. 文脈に合った言葉を選ぶ
「提示」は資料や条件など具体的なものを示す際に適していますが、案内や説明の場合は別の言葉を選ぶほうが伝わりやすい場合があります。
6-3. 文章のバランスに注意
敬語や丁寧語が多すぎると文章が重くなります。全体のバランスを考えて、簡潔かつ読みやすい文章を心がけましょう。
6-4. 句読点や改行を適切に使う
長文になるほど、句読点や改行を工夫して読みやすくすることが重要です。メールの場合は箇条書きや段落分けも有効です。
7. まとめ
7-1. 「ご提示させていただきます」は敬意と謙譲を重ねた丁寧な表現
「ご提示させていただきます」は相手に敬意を示しつつ、自分の動作を謙譲的に表現するフレーズですが、厳密には二重敬語のため使いどころに注意が必要です。
7-2. 相手や状況に応じた言い換えを使い分けよう
場面に応じて「ご提示いたします」や「提示させていただきます」などの言い換えを適切に選ぶことで、より自然で好印象なコミュニケーションが可能になります。
7-3. メールや文章では読みやすさも重視
敬語の使い方だけでなく、文章のわかりやすさや読みやすさもビジネスマナーの一つです。簡潔に伝えることを心がけましょう。