「進めさせていただきます」は、ビジネスにおいて非常に頻繁に使われる表現の一つです。相手に敬意を示しつつ、自分が主体となって業務を進める意思を丁寧に伝える言い回しとして、メールや会話、会議など様々な場面で重宝されています。しかし、便利な一方で誤用や言い過ぎに注意が必要な場面もあるため、正確な意味や言い換え表現を理解しておくことが重要です。本記事では、「進めさせていただきます」の意味、具体的な使い方、適切な文例、類語との違い、そして注意点について詳しく解説します。
1. 「進めさせていただきます」の意味と特徴
1-1. 基本的な意味
「進めさせていただきます」は、「進める」という行動を、相手の理解や配慮があって初めて行えるものとして、謙虚な気持ちを込めて丁寧に表現した言い回しです。敬語の中でも「させていただく」は謙譲語にあたり、自己の行為を控えめに伝えるため、上司や取引先に対して使っても違和感がありません。
1-2. 主な使用シーン
・資料作成や調査などの業務に着手する際
・会議や打ち合わせで次の議題や工程に移るとき
・相手の承認を得て、作業を進行する旨を伝えるとき
・契約や調整などの手続きを正式に始める際
2. 具体的な使用例
2-1. メールでの例文
・本件につきましては、承知いたしました。こちらで進めさせていただきます。
・内容を確認の上、予定通り進めさせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
・修正点を反映のうえ、明日中に進めさせていただきます。
2-2. 会話・打ち合わせでの使用
・それでは、次の議題に進めさせていただきます。
・皆さまのご了承をいただきましたので、本件をこちらで進めさせていただきます。
・承認いただけましたので、工程を予定通り進めさせていただきます。
2-3. 企画・提案書などでの例
・以上の計画に基づき、実行準備を進めさせていただきます。
・ご確認事項に問題がなければ、本提案の内容で業務を進めさせていただきたく存じます。
3. 言い換え表現とその使い分け
3-1. よく使われる言い換え
・進めてまいります
・着手いたします
・実行に移させていただきます
・対応を開始させていただきます
・進行させていただきます
3-2. 文例での違い
「進めさせていただきます」:丁寧で謙譲の意を含み、相手への配慮を強調
「進めてまいります」:敬意はあるが、やや積極的なニュアンス
「着手いたします」:物事に正式に取り掛かるときに適する
「対応を開始させていただきます」:課題や業務に対し、明確な動作開始を示す
3-3. 使用の注意点
「させていただきます」は便利ですが、過度に使うと文章が重くなる場合があります。社内や軽い連絡であれば「進めます」や「始めます」でも問題ありません。相手や場面に応じて調整が必要です。
4. よくある誤用とその修正例
4-1. 承認前に使ってしまう
誤:ご確認前ではありますが、進めさせていただきます。
正:ご確認いただき次第、進めさせていただきます。
4-2. 意図しない二重敬語
誤:進めさせていただきたいと存じます。
正:進めさせていただきたく存じます。
補足:敬語が重複しないよう、文法的に丁寧さと自然さのバランスが必要です。
4-3. 曖昧なまま使う
誤:とりあえず進めさせていただきます。
正:社内で共有のうえ、段階的に進めさせていただきます。
補足:曖昧な表現を避け、背景や方針も添えると信頼感が増します。
5. 他の敬語との違いと使い分け
5-1. 「進めます」との違い
「進めます」は、事実を端的に述べる表現であり、丁寧さや謙譲の要素が少ないため、目上の人や社外の相手に対してはやや軽く聞こえることがあります。「進めさせていただきます」は、相手の了承や協力を前提に丁寧さを加えた表現で、特に報告・了承を要する場面に適しています。
5-2. 「取り急ぎ進めます」との違い
「取り急ぎ進めます」は、緊急性があるときに使いますが、やや慌ただしい印象を与える可能性があります。「進めさせていただきます」は、慎重かつ丁寧に業務を進行するという印象を与えたいときに適しています。
6. 使用時の注意点
6-1. 承諾前に使わない
「進めさせていただきます」は、あくまでも相手の了承を得たあとに使うのが基本です。承認を得る前に使うと、強引な印象を与えてしまう可能性があります。
6-2. 文章全体のトーンに注意する
「進めさせていただきます」は、文全体の丁寧さに応じた言葉遣いが必要です。カジュアルな文面に突然この表現が出てくると、浮いてしまう場合があります。文章全体のトーンに合った敬語を使いましょう。
6-3. 過剰使用を避ける
一つの文章で「〜させていただきます」を何度も使うとくどく感じられることがあります。「進めてまいります」や「実行します」など、別表現を交えることで読みやすくなります。
7. よくある質問
7-1. 「進めさせていただきます」はメールと会話どちらでも使える?
はい。どちらでも使えます。ただし、会話ではやや堅く聞こえる場合もあるため、社内やフランクな場面では「進めます」「取りかかります」に置き換えても問題ありません。
7-2. 上司や顧客に使っても失礼ではない?
まったく問題ありません。「〜させていただきます」は敬語として確立された丁寧表現であり、特にビジネス上の正式なやり取りには適しています。
7-3. 似た敬語とどう使い分ければいい?
「進めてまいります」:自分の意思がやや強めで、継続のニュアンスあり
「着手いたします」:業務の最初のステップを始めるときに明確な区切りとして使う
「開始いたします」:宣言的でやや堅めの印象
まとめ
「進めさせていただきます」は、業務や作業を始める・継続する際に、相手への敬意と謙譲の気持ちを込めて用いられる、非常に丁寧なビジネス表現です。特にメールや報告、会議での発言に適しており、信頼感や配慮のある印象を与えることができます。使いすぎや誤用には注意しつつ、場面や文脈に応じて「進めてまいります」「着手いたします」などの表現とも使い分けることで、より円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。