「晩春(ばんしゅん)」という言葉には、日本の四季に対する繊細な感覚が込められています。春の終わりを表すこの言葉は、文学や手紙の季語としてもよく使われます。この記事では、「晩春」の正確な意味、具体的な時期、使い方や関連表現について丁寧に解説します。

1. 晩春とは

1.1 意味の解説

晩春とは「春の終わりごろ」を意味する言葉です。「晩(おそい)」という漢字が使われているように、春という季節の中でも終盤、つまり後半から終わりにかけての時期を指します。

1.2 読み方と表記

読み方は「ばんしゅん」です。漢字表記は「晩春」で、手紙や俳句などでは時候の挨拶や季語としてよく使われます。

2. 晩春の時期とはいつか

2.1 暦のうえでの晩春

日本の二十四節気に基づいて考えると、春は「立春」から「立夏」までの期間を指し、立夏直前のおよそ4月中旬から5月上旬が晩春にあたります。

2.2 天候や季節感としての晩春

実際の体感としては、桜が散り、気温も安定してきて、若葉が目立つようになる時期を晩春と感じることが多いです。地域差もありますが、ゴールデンウィークのころは晩春に分類されることが多いです。

3. 晩春の使い方と例文

3.1 日常表現としての使い方

「晩春の穏やかな日差しが心地よい」
「晩春の候、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます」

3.2 手紙やメールでの時候の挨拶

・晩春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
・晩春とはいえ、日差しの中に初夏の気配を感じるこの頃。

ビジネス文書やフォーマルな手紙では、4月下旬から5月上旬にかけて「晩春の候」という時候の挨拶がよく使われます。

4. 晩春と関連する言葉

4.1 仲春・初春との違い

春は三分割して語られることがあり、初春は立春~啓蟄(2月初旬〜3月初旬)、仲春は啓蟄~清明(3月中旬〜4月中旬)、晩春は清明~立夏(4月中旬〜5月初旬)にあたります。

4.2 晩春を詠んだ俳句や詩

晩春は自然の移ろいが感じられる季節でもあり、俳句や詩で季語としてよく使われます。例:「晩春や 川面に遊ぶ 鯉の影」

5. 映画『晩春』との関連

5.1 小津安二郎の映画『晩春』

「晩春」という言葉は、1949年の日本映画『晩春』(監督:小津安二郎)のタイトルとしても有名です。この作品では、春の終わり=人生の転機や別れと重ねる演出がなされており、「晩春」のもつ感情的な深みが表現されています。

5.2 春の終わりが持つ感情的な意味

「晩春」は単に季節の終わりではなく、別れや節目といった人生の情景と結びつくこともあります。そのため、文学や芸術でも象徴的に使われることが多いです。

6. まとめ

晩春とは、春の終わりの時期を表す言葉で、4月中旬から5月上旬ごろにあたります。手紙の時候の挨拶や文学表現、映画タイトルなど、日常から芸術に至るまで幅広く使われています。「晩春」を理解することで、日本語ならではの季節感や情緒をより深く味わうことができます。

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