日常会話や文章で見かける「高じる」という言葉。その意味や使い方を正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。本記事では、「高じる」の正確な意味、使用例、類語、英語での言い換えなどを網羅的に解説します。読めば「高じる」の理解が一段と深まるはずです。

1. 「高じる」の基本的な意味

「高じる」は、日本語の中でもやや硬めの表現で、日常会話ではあまり頻繁に使われませんが、ビジネス文書や文学的な文章では比較的よく見かけます。

「高じる」は漢字で「こうじる」と書き、「高まる」「激しくなる」「エスカレートする」といった意味があります。何かの状態や感情、傾向などが、徐々に強くなっていく様子を表す言葉です。

たとえば、「趣味が高じて仕事になった」「怒りが高じて手が出た」などのように使われます。このように、「高じる」は、あることが進行した結果、次の段階へと進むイメージを含んでいます。

2. 「高じる」の語源と由来

「高じる」は「高くなる」の連用形「高じ(こうじ)」に、動詞化する接尾語「る」が付いたものと考えられます。古語においても「高まる」という意味で用いられており、感情や物事の度合いが増すことを表す動詞として発展してきました。

平安時代の文学作品にもその用例があり、歴史的にも長く使われてきた語彙であることがわかります。

3. 「高じる」の使い方と具体例

3.1 状態が進行する意味で使う

「高じる」は、ある状態や感情が次第に強まっていくことを表します。

例:

病が高じて入院することになった。

興味が高じて、大学で専門的に学ぶようになった。

3.2 感情が高まる場合

感情、特に負の感情が高まるケースでも使われます。

例:

不安が高じて夜も眠れなくなった。

怒りが高じて暴力沙汰に発展した。

3.3 好きなことが発展する場合

趣味や興味が強くなり、生活や職業に結びつくことを表現する際にもよく使われます。

例:

写真への興味が高じて、カメラマンになった。

ゲーム好きが高じて、プロゲーマーになった。

4. 類語とその使い分け

「高じる」に似た意味を持つ言葉はいくつか存在しますが、それぞれ微妙なニュアンスの違いがあります。

4.1 「深まる」

「深まる」は、主に感情や理解、人間関係などがより密接になることを表します。時間の経過とともに内面的に変化するニュアンスです。

例:理解が深まる、信頼が深まる

4.2 「激しくなる」

「激しくなる」は、感情や状況の程度が強くなるという点では似ていますが、やや一時的または急激な変化を表す傾向があります。

例:雨が激しくなる、争いが激しくなる

4.3 「強まる」

「強まる」は、力や影響力、感情などが強くなることを表す言葉です。比較的広い意味で使われ、「高じる」と同義になるケースもあります。

例:風が強まる、関心が強まる

5. 「高じる」を使う際の注意点

5.1 形式ばった文脈に適している

「高じる」はやや硬い表現なので、カジュアルな日常会話よりも、書き言葉やフォーマルな場面に向いています。話し言葉では「強くなった」「発展した」など、別の言い回しが自然です。

5.2 否定的な文脈での使用が多い

「高じる」は、病気、怒り、不安などネガティブな内容で使われることが多く、ポジティブな意味合いで使う際は慎重な文脈設計が求められます。

6. 「高じる」の英語表現

6.1 escalate

もっとも近い英語表現は「escalate」です。特に問題や感情などが拡大・激化する様子を表す際に使われます。

例:His anger escalated into violence.(彼の怒りは暴力にまで発展した)

6.2 grow into

「趣味が高じて~になった」などの文脈では、「grow into」という表現も適しています。

例:Her love of cooking grew into a career.(彼女の料理好きが高じてキャリアになった)

6.3 develop into

こちらも進展・発展を意味する表現で、比較的フォーマルな文脈に合います。

例:His interest developed into a lifelong passion.(彼の興味は生涯の情熱に発展した)

7. よくある誤用とその修正

7.1 「興味が昂じて」との混同

「高じる」と「昂じる」は、発音が同じで意味も近いため混同されがちですが、文脈によって使い分けが必要です。

「高じる」は程度の進行全般に使われます。

「昂じる」は、主に気持ちが高ぶることに限定されます。

例:興奮が昂じて声が大きくなる(◯)
例:病が昂じて悪化する(×)→「高じて」が正解

8. まとめ

「高じる」は、ある状態や感情、興味などが強まり、次の段階に進む様子を表す語です。使う文脈や相手によって適切に使い分けることが大切です。類語との違いや英語表現も理解しておくと、より正確な日本語運用が可能になります。日常的にはあまり使わない言葉かもしれませんが、文章力を高めたい人にはぜひ身につけておきたい表現です。

おすすめの記事