ビジネスメールや報告書などで頻繁に使われる「本件」という表現。便利な一方で、繰り返し使うと単調に見えたり、やや堅すぎる印象を与えてしまうこともあります。この記事では、「本件」の言い換えや類語、使い分けのポイントをシーン別に詳しく解説します。自然で伝わりやすい表現を身につけ、相手に与える印象をワンランク上げましょう。
1. 「本件」の意味と使われる場面
1.1 「本件」の基本的な意味
「本件」とは、「この件」「今回の件」「今話題にしている事柄」などを意味するビジネス用語です。特定の案件や議題を簡潔に示すために使われます。
1.2 よく使われるビジネスシーン
「本件」は以下のような文脈でよく使われます。
・メールの冒頭での話題提示(本件についてご連絡いたします)
・依頼・確認・報告の対象(本件の対応をお願いいたします)
・議事録や報告書の記載(本件に関する進捗状況)
簡潔に用件を伝えるのに適した語ですが、連続して使われると無機質な印象になるため、適度に言い換えを取り入れることが推奨されます。
2. 「本件」の代表的な言い換え・類語
2.1 同じ意味で使える表現
「本件」と意味が近く、文脈によって置き換えられる表現には以下のようなものがあります。
この件
当該案件
今回の件
ご依頼の件
ご指摘の事項
該当の内容
該当案件
現在の事案
当件
ご相談いただいた件
どれも基本的には「本件」と同様の意味を持ちますが、表現の丁寧さややわらかさが異なります。
2.2 形式的・柔らかい表現の使い分け
「当該案件」「該当の内容」はやや硬めの言い回しで、文書や報告書に適しています。一方、「この件」「ご依頼の件」などはメールでのやりとりに適した、少し柔らかい表現です。相手や状況に応じて使い分けることが大切です。
3. シーン別|「本件」の適切な言い換え方
3.1 ビジネスメールでのやりとり
メールの中で「本件」が繰り返されると、やや事務的な印象になります。以下のように言い換えると、自然で読みやすい文になります。
例:
・本件についてご確認をお願いいたします
→ ご依頼の件につきましてご確認をお願いいたします
→ 先日ご相談いただいた件についてご回答いたします
相手が話題にした内容をそのまま言い換えることで、より丁寧な印象を与えることができます。
3.2 会議資料・報告書での使用
書類や議事録では、少し堅い表現の方が適しています。
例:
・本件の対応状況は以下の通りです
→ 当該案件の対応状況は以下の通りです
→ 該当事項の進捗状況をご報告いたします
報告書では文脈の一貫性が重要なので、初出では「本件」、以降は「当件」「当該案件」と言い換えるのも効果的です。
3.3 電話や対面での会話
口頭で「本件」というと少し不自然に聞こえる場合があります。そのような場面では、もう少しくだけた表現にするのが望ましいです。
例:
・本件はどうなっていますか?
→ この件はどうなっていますか?
→ ご相談の内容について、進捗はいかがでしょうか?
自然な会話の中では「本件」にこだわらず、平易な言葉に置き換えるのがスムーズです。
4. 「本件」の使い過ぎを防ぐためのコツ
4.1 同じ文中での連続使用を避ける
一つのメールや文書内で「本件」という言葉を何度も繰り返すと、読み手にとって単調で分かりにくい印象を与えます。文章全体の読みやすさを意識して、同義の語に置き換えましょう。
4.2 代名詞や具体的な言葉を活用する
以下のような工夫で「本件」の多用を防ぐことができます。
・それについて
・上記の件
・〇〇プロジェクトの件
・〇月△日の問い合わせについて
具体的な内容や日付、案件名を使うことで、文に自然な流れが生まれます。
4.3 自然な流れで主語を省略する
メールや報告書では、「本件は〜」と毎回書かなくても、前後の文脈で伝わることがあります。無理に主語を入れず、自然な日本語にすることも大切です。
5. よくある質問(FAQ)
5.1 「本件」の英語表現には何がありますか?
英語で「本件」を表すときには、以下のような表現が一般的です。
・this matter
・this issue
・the case
・the subject
・regarding this topic
文脈によって適切な表現が変わるため、メールでは "Regarding this matter" や "As for this case" などがよく使われます。
5.2 「本件」と「当該」の違いは何ですか?
「本件」は「この件」の意味であり、話し手から見た現在の話題を指します。一方で「当該」は「対象となる」「該当する」などの意味があり、より客観的で硬い表現として使われます。報告書や契約書などでの使用に向いています。
5.3 口語で「本件」を使うのは適切ですか?
日常会話や口頭でのやりとりでは「本件」という表現はやや硬く聞こえるため、できるだけ「この件」「例の件」など自然な表現に言い換えるとよいでしょう。あえて丁寧に話す必要がある場合を除いて、口語では避けるのが無難です。
6. まとめ
「本件」という言葉は、ビジネスシーンで非常に便利で汎用性の高い表現ですが、使い方によっては堅すぎたり、無機質な印象を与えることもあります。言い換えや類語を知り、適切に使い分けることで、文章や会話に柔軟性と品位が生まれます。相手や状況に応じた言葉の選び方を意識することが、信頼されるビジネスコミュニケーションの第一歩です。