「申し受け」という表現は、ビジネスのやりとりや書面などでよく目にする丁寧な言い回しの一つです。しかし、日常的な会話ではあまり使われないため、具体的な意味や使い方を正確に理解していない方も少なくないかもしれません。本記事では、「申し受け」の意味や使い方を詳しく解説するとともに、具体的な例文、類語との違い、注意点などもご紹介します。
1. 「申し受け」とはどういう意味か
1-1. 基本的な意味
「申し受け」は、動詞「受ける」に謙譲の意味を持つ「申し」がついた形で、「受け取る」「引き受ける」をへりくだって表現した言い回しです。相手から何かを受ける際、自分の行為を丁寧に伝えるために使われます。
1-2. ビジネス文書での用途
この表現は、依頼や申し出、料金、物品などを「受け取る」ことを丁寧に伝えるときに使われることが多く、口頭よりも文書で用いられる傾向にあります。ビジネスメールや契約書、領収証などで目にする表現です。
2. 「申し受け」の使い方と例文
2-1. 金銭の授受に関する文脈
もっともよく使われるのが、料金や費用を受け取る場面です。丁寧に金銭の受領を伝える表現として広く使われています。
例文:
「お代は当日、会場にて申し受けます。」
「参加費として、3,000円を申し受けます。」
2-2. 意見や依頼を受け入れる場合
相手の申し出や要望を引き受ける際にも「申し受け」が使われます。この場合、へりくだった表現により丁寧で柔らかい印象を与えます。
例文:
「ご意見については、真摯に申し受けます。」
「ご希望の納期、確かに申し受けました。」
2-3. 商品・書類・申込の受領
注文書や資料、申込書などの受領にも「申し受け」が使われます。この表現により、相手への敬意を保ちながら自分の受け取りを伝えることができます。
例文:
「お送りいただいた申込書、確かに申し受けました。」
「商品の返品は、到着後1週間以内に申し受けます。」
3. 類語との違い
3-1. 「承る」との違い
「承る(うけたまわる)」も謙譲語であり、「申し受け」と似た場面で使われることがありますが、意味が少し異なります。
「承る」は、話・命令・依頼などを聞く、引き受ける意味に特化しているのに対し、「申し受け」は物理的な受領(物・金・文書など)に向いています。
3-2. 「頂戴する」との違い
「頂戴する」もへりくだった表現ですが、より日常的かつカジュアルな場面で使われます\。「申し受け」はフォーマルな表現であり、公的な文書やビジネスでの使用が適しています。
4. 使用時の注意点
4-1. 目上の人に対して使うとき
「申し受け」は自分の行動をへりくだって伝える表現ですが、相手の動作を「申し受ける」と言ってしまうと失礼に当たります。相手の行動には尊敬語、自分の行動には謙譲語を使うのが基本です。
誤用例:
「ご意見を申し受けました。(×)」 → 「ご意見を承りました。(〇)」
4-2. 会話よりも文書に適している
「申し受け」は会話ではやや硬すぎる印象を与える場合があり、日常会話では「いただきます」「受け取ります」などの表現の方が自然です。一方で、契約書やメールなどの文章では信頼感や丁寧さを表現するために効果的です。
4-3. 「申し受けます」の文末表現
ビジネスメールでは、「申し受けます」「申し受けました」「申し受けたく存じます」など、丁寧な文末表現と合わせて使うことが望まれます。文全体の丁寧さを損なわないよう注意しましょう。
5. 用途別の具体的な例文集
5-1. ビジネスメールでの使用例
例文:
「ご依頼の件、確かに申し受けました。対応については後日ご連絡いたします。」
「以下の通り、費用を申し受けます。何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。」
5-2. お知らせや案内文での使用例
例文:
「参加費は当日、受付にて申し受けますので、どうぞご準備ください。」
「返品の際は、送料をご負担の上、当社にて申し受けます。」
5-3. 契約書や利用規約などの文言
例文:
「本サービスでは、利用料金として月額1,000円を申し受けます。」
「当社が別途定める手数料を申し受ける場合があります。」
6. 「申し受け」の言い換え表現
場面によっては、別の表現に置き換えることで、より自然かつ柔らかい印象を与えることができます。
- 「承る」:意見・依頼・報告などに対して使用
- 「頂戴する」:口語的な場面や軽いやりとりで使用
- 「受領いたします」:物理的なものの受け取りに対してやや形式的
- 「お受けいたします」:やや柔らかく丁寧な印象を与える
7. まとめ
「申し受け」は、相手から何かを受け取る際に、自分の立場をへりくだって伝える丁寧な表現です。主にビジネス文書や公式なメール、契約書類などで使用され、金銭や物品、依頼事項などの受領を表す際に非常に有用です。
ただし、口語ではやや硬すぎる印象を与えるため、TPOに応じて「承る」「頂戴する」「受領する」などの表現と使い分けることが大切です。また、尊敬語・謙譲語のバランスをしっかり理解したうえで使用することで、より丁寧で信頼感のあるコミュニケーションが可能となります。
ビジネスにおいて信頼関係を築くには、言葉遣い一つが大きな影響を持ちます。「申し受け」という表現を正しく活用し、洗練されたやり取りを目指してみてはいかがでしょうか。