「その都度」という表現は、ビジネスにおいてもよく用いられる便利な言い回しですが、使い方によってはあいまいさや相手への不安を与えてしまう可能性があります。この記事では、「その都度」の基本的な意味から、使うべき場面、注意点、さらには言い換え表現まで詳しく解説します。
1. 「その都度」の基本的な意味
1-1. 「その都度」の辞書的な定義
「その都度」は、ある事象が起きるたびに毎回、そのタイミングで、という意味を持つ言葉です。「何かが起きるたびにそのときに応じて対応する」というニュアンスが含まれています。
1-2. ビジネスシーンにおける解釈
ビジネスの場では、決まった手順がない業務や、都度状況が異なる対応において「その都度」が使われます。「その都度対応いたします」といった形で用いられることが多く、柔軟性や臨機応変さを表す一方で、明確な計画がない印象を与える可能性もあります。
2. 「その都度」の使用例
2-1. 丁寧な口頭表現としての使用
・状況を見ながら、その都度判断いたします。
・ご不明点がありましたら、その都度ご連絡ください。
2-2. メール文例
・進捗に応じて、その都度ご報告いたします。
・ご要望がございましたら、その都度対応いたしますのでお申し付けください。
2-3. 契約・業務内容に関わる文脈
・発注ごとに条件が異なるため、その都度見積もりを提出いたします。
・トラブルが発生した場合は、その都度対応を行う方針です。
3. 「その都度」を使う際の注意点
3-1. 曖昧な印象を避ける
「その都度」は柔軟な対応を意味する一方で、「計画性がない」「場当たり的」といった印象を与える場合もあります。たとえば、スケジュールや納期に関して「その都度対応」と述べると、責任の所在が不明確になることがあります。
3-2. 具体性を持たせて補足する
「その都度」を使用する際は、「何を」「どういう判断基準で」「誰が」対応するかを可能な限り明確にすると信頼感が高まります。
例:
・案件ごとに内容が異なるため、その都度、担当者が確認の上対応いたします。
・発注頻度にばらつきがあるため、その都度、納期を調整させていただきます。
4. 「その都度」の言い換え表現
4-1. 適宜
場面に応じて対応することを端的に表す言葉です。文章の硬さやビジネス度が上がります。
例:
・適宜ご判断いただければと存じます。
・適宜、資料を更新してまいります。
4-2. 状況に応じて
「その都度」の柔軟性を維持しながら、より説明的な表現になります。
例:
・状況に応じて対応いたします。
・進捗に応じて、スケジュールを見直します。
4-3. 必要に応じて
相手に「必要性」を前提とした判断を委ねる際に使える表現です。
例:
・必要に応じて、ご連絡差し上げます。
・必要に応じた対応を進めてまいります。
4-4. 都度ご相談のうえ
相手との協議を前提にしている点で、丁寧さと柔軟性を同時に伝えられます。
例:
・都度ご相談のうえ、条件を調整させていただきます。
・詳細は都度ご相談させていただければ幸いです。
4-5. その都度ご判断いただく形で
敬語表現と組み合わせることで、相手の主導権を尊重した伝え方になります。
例:
・方針につきましては、その都度ご判断いただく形で進めてまいります。
5. 使用場面ごとのおすすめ表現
5-1. 社内連絡で
・状況に応じて、各自で判断をお願いします。
・必要に応じて随時更新します。
5-2. 取引先とのやりとりで
・案件ごとに条件が異なりますので、その都度ご相談させてください。
・適宜、対応させていただきます。
5-3. クレームやトラブル対応で
・事案の内容を確認し、その都度適切に対応いたします。
・都度、担当者より状況を共有させていただきます。
まとめ
「その都度」は柔軟な対応や逐次対応を示す便利な表現ですが、使い方次第であいまいな印象を与えてしまうリスクもあります。特にビジネスの場面では、「適宜」「必要に応じて」「状況に応じて」などの言い換え表現を活用し、具体性や誠意を補うことが大切です。丁寧かつ明確な言葉選びによって、相手との信頼関係をより強固にすることができるでしょう。