「上司に言われた」「お客様に言われた」など、日常でもよく使う「言われた」という言葉。しかしビジネスの場では、より丁寧で自然な敬語に言い換える必要があります。本記事では、「言われた」の意味と適切な敬語表現、メールや会話での使い方を具体例とともに解説します。

1. 「言われた」は敬語ではない?

1. 「言う」の尊敬語と謙譲語

「言う」は、尊敬語で「おっしゃる」、謙譲語で「申し上げる」になります。「言われた」は一見敬語のように見えますが、実は「言う」の受け身形であり、丁寧な文体であっても敬語とは言い切れません。

2. 「言われた」は敬語のつもりで使いがち

例:「部長に言われたので提出しました。」
→この言い方では、敬意が不十分で上司や顧客に対して失礼に感じられることがあります。

2. 「言われた」の敬語として正しい表現

1. おっしゃいました/おっしゃった

尊敬語の基本形。上司や目上の人の発言を伝えるときに使います。
例:「部長がおっしゃった内容をもとに、修正いたしました。」

2. おっしゃっていました

継続的・やわらかい言い回しとして使えます。
例:「〇〇様はそのようにおっしゃっていました。」

3. ご指示がありました

「言う」ではなく「指示する」行為に焦点を当てた言い換えです。
例:「部長より、そのようにご指示がありました。」

4. ご意見をいただきました

「言われた」の内容が助言や感想の場合は、この表現が自然です。
例:「お客様より貴重なご意見をいただきました。」

5. 伺っております/承っております

自分が聞いた内容をへりくだって伝える謙譲語。
例:「その件につきましては、〇〇様から承っております。」

3. シーン別・「言われた」の敬語表現

1. 上司の発言を第三者に伝える場合

NG:「部長に言われた通りに進めています。」
OK:「部長のご指示に従い、進めております。」

2. クレーム対応など顧客の言葉を報告する場合

NG:「お客様にそのように言われました。」
OK:「お客様よりそのようなお申し出がございました。」

3. 電話応対やメールでの表現

例:「〇〇様がおっしゃっていた通り、資料を本日お送りいたしました。」

4. 日常的な社内報告の中でも丁寧に

例:「先ほど課長より、明日の会議についてご連絡がありました。」

4. 使い分けのポイント

1. 尊敬語か謙譲語かを判断する

・目上の人が主語 → 尊敬語(おっしゃる、ご指示)
・自分や自社が主語 → 謙譲語(申し上げる、承る)

2. 相手や文脈に合わせて自然に

同じ意味でも、相手によって適切な言葉は変わります。たとえば、上司への報告では「ご指示がありました」、顧客対応では「お申し出がございました」など、表現を調整しましょう。

3. 「言われた」はどうしても使いたいとき

完全な敬語でなくても、会話の流れで「言われました」「言われております」と使うことも可能ですが、文書や改まった場面では避けるのが無難です。

5. メールでの具体例

1. 社内宛の報告メール

「本件につきまして、部長より来週中に対応するようご指示がございました。」

2. 社外への連絡メール

「先日のお打ち合わせにて、〇〇様より〇〇の件についてご意見をいただきました。」

3. 返信での確認表現

「先方より、来週中の納品をご希望とのことと承っております。」

6. 「言われた」に代わるフレーズ一覧

・おっしゃいました

→ 上司や顧客が主語のときに

・ご指示がありました

→ 指示や命令の場合に

・ご意見をいただきました

→ 要望やフィードバックの内容に

・承りました

→ 丁寧に聞き受けたときの表現に

・伺っております

→ 間接的に聞いたことを丁寧に伝えるときに

まとめ

「言われた」は日常的に使いやすい言葉ですが、ビジネスの場では「おっしゃいました」「ご指示がありました」「ご意見をいただきました」など、より丁寧で適切な敬語表現に言い換えることが求められます。敬語の種類(尊敬語・謙譲語)を正しく理解し、相手や文脈に合わせた表現を選ぶことで、信頼感と品位のあるコミュニケーションが実現できます。メールや会話でも自然に使い分けられるよう、表現の引き出しを増やしておきましょう。

おすすめの記事