主訴は、医療現場で患者が最も訴えたい症状や不調を指す重要な概念です。診断や治療方針を決定するうえで基礎となる情報であり、正確に理解することが医療従事者に求められます。本記事では、主訴の意味や医療での役割、聞き取りのポイントまで詳しく解説します。

1. 主訴の基本的な意味

1-1. 主訴とは

主訴とは、患者が医療機関を受診した際に最も強く訴える症状や不調のことを指します。医師や看護師が診察や問診を行う際に、診断の出発点として重要な情報です。

1-2. 医療現場での位置づけ

医療現場では、主訴は問診の最初に確認される項目であり、病歴聴取や診断の指針として活用されます。主訴を正確に把握することで、検査や治療の方向性が明確になります。

1-3. 主訴と症状の違い

症状は患者が感じる身体的・精神的な異常全般を指しますが、主訴はその中で患者が最も重視している症状です。症状の数や種類に関わらず、主訴は一つまたは明確な複数の症状に絞られます。

2. 主訴の重要性

2-1. 診断の出発点としての役割

主訴は医師が診断を行う際の出発点です。患者の話を丁寧に聞き取り、主訴を特定することで、必要な検査や診療方針を効率的に決定できます。

2-2. 患者のニーズ把握

主訴を聞き取ることで、患者が医療に求めているニーズや期待も把握できます。治療方針や説明の優先順位を決める際にも重要な指標となります。

2-3. 記録と医療チームでの情報共有

主訴はカルテに記録され、医療チーム内で共有されます。適切に記録することで、診療の連携や後続治療の参考になり、患者の安全性向上につながります。

3. 主訴の聞き取り方

3-1. 開かれた質問を使う

「どのような症状で受診されましたか?」など、患者が自由に話せる質問を用いることで、正確な主訴を把握しやすくなります。

3-2. 患者の表現を尊重する

患者が使用する言葉を尊重し、専門用語に置き換えずにそのまま聞き取ることが重要です。これにより患者の訴えが正確に反映されます。

3-3. 時系列や症状の変化を確認する

症状がいつから始まったか、悪化や改善の経過を尋ねることで、主訴の背景や原因を理解しやすくなります。必要に応じて家族や介護者からの情報も参考にします。

4. 主訴の記録方法

4-1. カルテへの記録

主訴は簡潔かつ具体的にカルテに記録されます。文章は患者の言葉を尊重しながら、医療チームが理解できる形に整えることが求められます。

4-2. コード化や分類

病院やクリニックによっては、主訴をICDコードや内部分類に沿って記録することがあります。これにより統計分析や研究にも活用可能です。

4-3. 記録時の注意点

記録する際は、事実に基づき主観を加えずに記載することが重要です。曖昧な表現は避け、必要に応じて補足情報を追記します。

5. 主訴と関連情報の整理

5-1. 既往歴との関連

主訴は患者の過去の病歴や治療歴と関連付けて理解することが大切です。既往症が主訴に影響を与える場合があるため、整理して把握します。

5-2. 現症状との関連

現在の症状との関連を整理することで、診断や治療方針の優先順位が明確になります。複数の症状がある場合は、主訴との関連を慎重に確認します。

5-3. 家族歴や生活習慣との関連

家族歴や生活習慣も主訴の背景に影響することがあります。必要に応じて追加情報として記録し、診断や生活指導に活用します。

6. 主訴に基づく診療の進め方

6-1. 検査や診断の優先順位決定

主訴を把握することで、必要な検査や診断の優先順位を決定できます。症状の重さや緊急性に応じた対応が可能です。

6-2. 治療方針の立案

主訴を中心に治療方針を立てることで、患者のニーズに合った診療を提供できます。治療の説明や同意取得も主訴を基準に行います。

6-3. フォローアップの指標

治療後の経過観察やフォローアップの際も、主訴が改善しているかを確認することが重要です。主訴の変化は治療効果の評価に直結します。

7. まとめ

主訴とは、患者が医療機関で最も訴えたい症状や不調を示す重要な情報です。医師や看護師は主訴を正確に聞き取り、記録し、診断や治療に活かす必要があります。開かれた質問や患者の表現の尊重、時系列の確認などが聞き取りのポイントです。主訴を中心に診療を進めることで、患者に適切な治療を提供できるだけでなく、医療チームの効率的な連携にもつながります。

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