「抜去(ばっきょ)」という言葉は、医療現場や工事現場、機械設備の分野などでよく使われる専門的な表現です。「カテーテルを抜去する」「杭を抜去する」といったように、何かを“引き抜く”“取り除く”という意味で用いられます。この記事では、「抜去」という言葉の正確な意味や使い方、関連語との違いをわかりやすく説明します。

1. 「抜去」とは?

「抜去(ばっきょ)」とは、文字通り物を引き抜いて取り除くことを意味します。

  • :引き抜く、取り出す。
  • :取り除く、取り去る。

この2つの漢字の組み合わせにより、「体や装置などに挿入されているものを取り出す」「設置されているものを撤去する」といったニュアンスになります。

つまり、「抜去」は「引き抜いて除去する」という動作を表す正式・専門的な言葉です。

2. 「抜去」の使い方と例文

「抜去」は主に医療や建設などの専門分野で使われ、日常会話ではあまり登場しません。以下では分野別の使い方を紹介します。

2-1. 医療分野での「抜去」

医療の現場では、体内や皮下に一時的に挿入した器具を取り除く際に使われます。

  • 「カテーテルを抜去する」=尿道や血管に入れた管を取り出す。
  • 「ドレーンを抜去した」=体内の排液チューブを取り除いた。
  • 「輸液ルートを抜去する」=点滴のチューブを外す。

「抜去」は「抜く」よりも正式で、医療記録や看護記録などの文書では一般的な表現です。

例文:

  • 「術後3日目にドレーンを抜去した。」
  • 「自己抜去が見られたため、再度固定を行った。」

※「自己抜去」とは、患者本人が自分で医療器具を抜いてしまう行為を指します。

2-2. 建設・工事分野での「抜去」

建設現場では、「設置したものを引き抜いて撤去する」際に使われます。

  • 「仮設の支柱を抜去する」
  • 「地中の杭を抜去する」
  • 「ケーブルを抜去した」

つまり、「撤去」や「除去」と似ていますが、「引き抜く」という動作がある点が特徴です。

2-3. その他の分野での使用

機械・電気・通信の分野でも、部品や配線を「抜去」するという表現が使われます。

  • 「サーバーラックから旧機器を抜去する」
  • 「古い配線を抜去し、新しいものに交換する」

このように、「抜去」は対象物を物理的に取り除くという共通の意味で、複数の業界で使用されています。

3. 「抜去」と似た言葉との違い

「抜去」と混同されやすい言葉には、「除去」「撤去」「抜く」などがあります。それぞれの違いを整理してみましょう。

語句 意味 特徴
抜去 挿入・設置されたものを引き抜いて取り除く。 専門的・医療的な表現。
除去 不要なものを取り除く。 「掃除」「薬剤」など広い意味で使う。
撤去 設置物を取り払って片付ける。 建設・都市計画などで使われる。
抜く 日常語。手で引き抜く行為を指す。 一般的で口語的。

つまり、「抜去」は「抜く+取り去る」を正式に表現した言葉であり、医療・技術的な文書に最も適した言い方です。

4. 医療現場での注意点

医療文書で「抜去」を使う場合は、必ず誰が・何を・いつ抜去したかを明記します。

  • 誤用例:「抜去しました。」(何を抜去したのか不明)
  • 適切な例:「10月25日10時、左下腹部ドレーンを抜去。」

また、「自己抜去」「誤抜去」など、患者や介助者による意図しない行為を区別して記録することも大切です。

5. 「抜去」の英語表現

文脈によって英訳が異なりますが、一般的には以下のように使い分けられます。

  • 医療分野:removal(例:catheter removal=カテーテル抜去)
  • 工事分野:extraction または removal
  • 技術文書:pull-out(機械部品の引き抜き)

例文:「Catheter was removed successfully.(カテーテルは正常に抜去された)」

6. まとめ

「抜去(ばっきょ)」とは、体内や装置などに挿入・設置されたものを引き抜いて取り除くことを意味します。医療分野では「器具の取り外し」、工事分野では「構造物の撤去」を指すなど、専門的なニュアンスを持つ言葉です。「除去」「撤去」との違いを理解し、文脈に応じて正確に使い分けましょう。

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