日常会話や文章の中で時々見かける「これ幸い(これさいわい)」。一見古風な表現ですが、ビジネスや小説などでも使われる日本語らしい言い回しです。この記事では、「これ幸い」の意味、使い方、由来、類語、そして誤用されやすいポイントを詳しく解説します。

1. 「これ幸い」とは何か

1-1. 基本的な意味

「これ幸い」とは、「ちょうどいい機会だ」「都合がよいことだ」といった意味を持つ表現です。 「これを好機として」「これをチャンスにして」というニュアンスで使われます。 つまり、ある出来事や状況を自分にとって有利な方向に活かすことを表す言葉です。

1-2. 読み方

「これ幸い」は「これさいわい」と読みます。 「幸い(さいわい)」は「幸せ」「都合がよい」という意味を持ち、ここでは後者の意味で使われています。

1-3. 意味の構成

「これ」は「このこと」「この状況」を指し、「幸い」は「ちょうど良い」「好都合」という意味。 つまり、「これ幸い」とは「この機会を都合よく思って利用する」という構造です。

2. 「これ幸い」の使い方

2-1. 会話での使い方

日常会話ではややかしこまった表現ですが、皮肉や軽い冗談としても用いられます。 例文: ・「これ幸いとばかりに、彼はその場を立ち去った。」 ・「これ幸いに、彼女は提案を自分の手柄にした。」

どちらも「都合の良さ」を強調する用法で、必ずしもポジティブな意味だけではなく、「ずる賢く利用する」というニュアンスでも使われます。

2-2. ビジネス文書での使い方

ビジネスの場では、丁寧な文章の中で「これを機に」と同じ意味で用いられることがあります。 例文: ・「これ幸いに、今後のご協力をお願い申し上げます。」 ・「これ幸いに、社内体制を見直す運びとなりました。」 このように、フォーマルな表現としても使用可能です。

2-3. 文章・文学での使い方

文学やナレーションの文脈では、やや古風で情緒的な響きを持ちます。 例文: ・「敵が油断した隙を、これ幸いと攻め入る。」 ・「雨が止んだのをこれ幸いに、外へ飛び出した。」 この場合は「好機を逃さず行動する」という前向きな印象で使われます。

3. 「これ幸い」の由来

3-1. 古典語としての背景

「これ幸い」は古くから日本語に存在する表現で、平安時代や江戸時代の文学作品にも見られます。 もともとは「これを幸いに思う」という形から派生したもので、「この状況をありがたいと感じて行動する」という意味合いがありました。

3-2. 武士の言葉としての用法

武士や戦国時代の物語では、「これ幸い」が「攻め入る」「仕掛ける」といった戦術的な意味で使われていました。 「敵が退いたのをこれ幸いに突撃する」というように、状況をチャンスと捉える姿勢を表していたのです。

4. 「これ幸い」のニュアンスと注意点

4-1. 前向きにも皮肉にも使える表現

「これ幸い」は、文脈によってプラスにもマイナスにも作用する言葉です。 前向きに使えば「良い機会に恵まれた」という意味になりますが、皮肉として使うと「都合よく利用した」という批判的な響きになります。

4-2. 誤用しやすいパターン

「これ幸い」を「これを幸い」と混同するケースがあります。 文語的には「これを幸いに」が正しい形で、「これ幸い」はやや口語的な表現です。 ただし現代ではどちらも慣用句として受け入れられています。

5. 「これ幸い」の類語・言い換え

5-1. 類語表現

「これ幸い」と同じような意味を持つ表現には、以下のようなものがあります。 ・「これを機に」 ・「好機と見て」 ・「都合よく」 ・「うまく利用して」 これらはフォーマルな文脈でも使いやすく、置き換え可能な場合が多いです。

5-2. 言い換えの使い分け

- ポジティブな文脈では:「これを機に」「この機会に」 - ネガティブ・皮肉な文脈では:「これ幸いに」「都合よく」 このように、場面によって言い回しを変えることで、文章の印象を調整できます。

6. 「これ幸い」を使った例文集

6-1. 日常的な文例

・「彼は上司の不在をこれ幸いに、早めに帰宅した。」 ・「彼女はこれ幸いにと、話題を自分に有利に変えた。」 どちらも「状況を利用した」という皮肉なニュアンスです。

6-2. 前向きな文例

・「これ幸いに、彼は新しい挑戦を始めた。」 ・「チャンスをこれ幸いと捉え、全力で取り組む。」 このように使えば、積極的で前向きな印象になります。

6-3. 文語的・古風な文例

・「敵の油断をこれ幸いに攻め入る。」 ・「天が味方したのをこれ幸いと、彼は剣を振るった。」 文語的な響きを持たせたいときに効果的な表現です。

7. 「これ幸い」の英語表現

7-1. 直訳に近い表現

「これ幸い」は英語で「take advantage of this opportunity」や「make the most of this situation」と訳されます。 どちらも「この機会を最大限に活かす」という意味です。

例文:
・He took advantage of this opportunity to start a new project.
(彼はこれ幸いと新しいプロジェクトを始めた。)

7-2. 皮肉的な使い方

皮肉な意味で「これ幸い」を使いたい場合は「take advantage of the situation for his own benefit」などが近い表現になります。 例文: ・She took advantage of the situation to make herself look better. (彼女はこれ幸いに、自分をよく見せようとした。)

8. 「これ幸い」と現代社会

8-1. SNSや会話での使われ方

現代では「これ幸い」という表現はやや古風な印象がありますが、SNSなどではユーモラスに使われることもあります。 たとえば、「雨で出かけられない、これ幸いに映画を見よう」など、日常の小さな“好機”を表す際にも使われます。

8-2. ビジネスにおける応用

ビジネスメールやプレゼンなどでは、「これを機に」よりもやや格調高い響きを出したいときに「これ幸い」を用いると印象的です。 「これ幸いに、ご支援をお願い申し上げます」とすれば、控えめながらも丁寧な表現になります。

9. 「これ幸い」のまとめ

「これ幸い(これさいわい)」とは、「都合の良い機会を捉える」「好機と見る」という意味を持つ言葉です。 日常会話からビジネス文書、文学表現まで幅広く使われ、前向きにも皮肉にも用いられる柔軟な言い回しです。 「これ幸いに」を上手に使い分けることで、文章に深みと品格を加えることができます。

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