「与する(くみする)」という言葉は、少し古風で難しく感じられますが、
新聞・ビジネス文書・歴史小説などでは今も使われる表現です。
「権力に与する」「敵に与する」といった形で見かけることが多く、
その意味を正確に理解しておくと文章の読解力がぐっと上がります。
この記事では、「与する」の意味・使い方・由来・類語をわかりやすく解説します。

1. 「与する」とは?

「与する(くみする)」とは、ある立場・勢力・考え方に味方する、賛同して行動を共にするという意味の表現です。
つまり、誰かや何かの側に立って協力・同調することを指します。

与する(くみする):仲間になる。味方する。賛同して行動を共にする。
(出典:広辞苑)

  • 例文1:彼は権力者に与して、利益を得ようとした。
  • 例文2:私は不正に与するつもりはない。
  • 例文3:彼女は少数派の意見に与した。

このように、「与する」は誰かの側につく・味方になるという意味で使われますが、
しばしば「悪いことに加担する」「不正に同調する」という否定的なニュアンスを伴うこともあります。

2. 読み方と漢字の由来

  • 読み方:くみする
  • 漢字:与(くみ)する

「与(あたえる)」という漢字にはもともと「関わる」「関与する」「共にする」という意味があります。
ここから、「ある側に加わる」「共に行動する」という意味に派生し、「くみする」と読むようになりました。

したがって、「与する」は「他者や組織に関与し、その立場を支持する」という行動を指すのです。

3. 「与する」の使い方と例文

3-1. 政治・社会での使い方

  • 権力に与する(=権力の側につく)
  • 政府に与するマスコミ(=政府寄りの報道をする)
  • 敵国に与する行為(=敵の味方をすること)

このように、「与する」は政治・思想・立場を表す場面でよく用いられます。

3-2. 否定形での使い方

「与しない」という形で使われることも多く、こちらは「賛同しない」「味方しない」「関わらない」という意味になります。

  • 例文1:私はその考え方には与しない。
  • 例文2:暴力に与してはならない。
  • 例文3:彼は腐敗に与しない清廉な人物だ。

この場合、「与しない」は中立や抵抗の姿勢を示す表現になります。

4. 「与する」の文体的特徴

「与する」は日常会話ではほとんど使われません。
やや文語的・書き言葉的な表現であり、次のような文脈で使われることが多いです。

  • 新聞や評論文:「暴力に与する勢力を排除すべきだ」
  • 歴史小説や時代劇:「諸将、皆北条氏に与す」
  • ビジネスや法律文書:「不正に与することは許されない」

このように、文章を引き締め、知的・重厚な印象を与える言葉としても用いられます。

5. 「与する」と似た言葉の違い

言葉 意味 ニュアンスの違い
賛同する 意見や考えに同意する 思想的な同意に重きを置く
加担する (悪いことに)手を貸す 否定的な意味が強い
協力する 一緒に目的を達成しようとする 中立的でポジティブな表現
同調する 他人の意見や態度に合わせる 流されるようなニュアンスもある

「与する」はこれらの中間に位置し、積極的に味方するという意味もあれば、
不正な側に加わるという否定的な意味でも使える、幅のある表現です。

6. 英語での「与する」表現

英語表現 意味・用法 例文
side with ~の側につく、味方する He sided with the government.(彼は政府に与した。)
ally with ~と同盟する、協力する They allied with the enemy.(彼らは敵に与した。)
support 支持する、支援する She supported the reform movement.(彼女は改革派に与した。)
associate with 関わる、関係を持つ He refused to associate with them.(彼は彼らに与しなかった。)

7. 「与する」を使った有名な表現

  • 権力に与する:体制側につき、既存の権力を支持すること。
  • 敵に与する:敵陣営に味方し、裏切ること。
  • 暴力に与する:暴力的な行為や思想に加担すること。
  • 悪に与する:不正や不義に協力すること。

8. まとめ

「与する(くみする)」とは、ある立場や勢力に味方し、行動を共にするという意味の表現です。
肯定的にも否定的にも使える語であり、とくに政治・倫理・歴史などの文脈でよく登場します。
現代では少し硬い表現ですが、「権力に与する」「不正に与しない」など、
文章を引き締める知的な言い回しとして覚えておくと役立ちます。

おすすめの記事