ニュースやビジネス文書などでよく使われる「懸念する(けねんする)」という言葉。
「安全性が懸念される」「今後の影響を懸念する」といった表現をよく耳にしますが、
日常会話ではやや硬い印象の言葉でもあります。
この記事では、「懸念する」の正しい意味や使い方、似た表現との違いをわかりやすく紹介します。

1. 「懸念する」とは?

「懸念(けねん)する」とは、悪い結果や問題が起こるのではないかと心配することを意味します。
つまり、将来に対する不安や心配を表すフォーマルな表現です。

懸念(けねん):気にかかること。不安に思うこと。心配。
(出典:広辞苑)

  • 例文1:このままでは経営が悪化することが懸念される。
  • 例文2:新制度の導入による混乱が懸念されている。
  • 例文3:天候の影響が収穫に及ぶことを懸念している。

このように、「懸念する」は主にネガティブな可能性に対する心配を表現する言葉です。

2. 「懸念」の語源

「懸念」は、もともと仏教用語として使われていた言葉で、
「懸」は「心にかける」、「念」は「思う・考える」という意味を持ちます。

つまり、「懸念」とは心に引っかかって離れない思いを表しており、
「ずっと気になって落ち着かない」「不安が残る」といったニュアンスがあります。

3. 「懸念する」の使い方

3-1. フォーマルな場面で使う

「懸念する」は、日常会話よりもビジネス・報道・公的文書で使われる硬い表現です。

  • 当社としては、納期の遅延を懸念しております。
  • 専門家は円安の長期化を懸念している。
  • この政策には副作用が懸念される。

カジュアルな会話では、「心配している」「不安に思う」と言い換えるのが自然です。

3-2. 主語が「人」以外になることも多い

「懸念される」という受け身の形で使われることが多く、
この場合は「誰が心配しているのか」を明確にせずに、一般的・客観的な不安を表現します。

  • 気温の上昇が作物に影響を与えることが懸念される。
  • 少子高齢化が経済に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
  • 交通量の増加により事故の発生が懸念される。

4. 「懸念する」と似た言葉の違い

言葉 意味 使われる場面・違い
心配する 不安を感じること。 日常的で柔らかい表現。
危惧する 悪い結果になるのを恐れる。 「懸念」よりも強い警戒心を伴う。
不安視する よくない方向に向かうと考える。 分析的・報道文などで多い。
案じる 思いやって心配する。 人情味・感情を込めた表現。

「懸念する」は「心配する」よりも硬く、「危惧する」よりもやや穏やかな印象を持ちます。

5. 「懸念する」を使う際の注意点

  • ポジティブなことには使わない(例:「成功を懸念する」→誤り)。
  • 主に将来に関する不安を述べるときに使う。
  • 主語を省略して「懸念される」と客観的に言うと、丁寧な印象になる。

たとえば「台風による影響が懸念される」と言えば、
「多くの人が心配している」という意味を婉曲的に伝えられます。

6. 英語での「懸念する」表現

英語表現 意味・用法 例文
be concerned about ~ ~を心配している(最も一般的) We are concerned about the delay.(遅れを懸念しています。)
worry about ~ ~を心配する(やや口語的) He worries about his job.(彼は仕事を心配している。)
be afraid that ~ ~ではないかと恐れる I'm afraid that sales will drop.(売上が下がるのではないかと懸念している。)
be apprehensive about ~ ~に不安を感じる(フォーマル) Experts are apprehensive about the new law.(専門家は新法に懸念を示している。)

7. 「懸念」を使った代表的な言い回し

  • 安全性が懸念される(=安全性に問題がある可能性を心配する)
  • 影響が懸念される(=悪影響の可能性を心配する)
  • 混乱が懸念される(=秩序が乱れる恐れがある)
  • 景気の先行きが懸念される(=今後の経済に不安がある)

8. まとめ

「懸念する(けねんする)」とは、悪い結果が起こるのではないかと不安に思うことを意味する言葉です。
フォーマルで客観的な響きを持つため、ビジネスや報道の場でよく使われます。
似た表現の「危惧する」「心配する」との違いを理解して使い分けることで、
より正確で洗練された日本語表現が身につきます。

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