「控える(ひかえる)」という言葉は、日常会話からビジネスシーンまで幅広く使われます。「発言を控える」「会場の外で控える」「控えを取る」など、場面によって意味が変わる多義的な言葉です。この記事では、「控える」の基本的な意味から、使い方の違い、敬語での表現、そして類義語との違いまでを丁寧に解説します。

1. 「控える」とはどういう意味か

「控える」とは、文脈によって複数の意味を持つ言葉で、主に以下の4つの意味がある。

  1. ① 控えめにする・慎む:行動や発言を抑えること。
  2. ② そばに待機する:人のそばで待つ、または次の順番を待つこと。
  3. ③ 記録・写しを取る:書類や内容を別にメモして残すこと。
  4. ④ 予定を控える:(未来の出来事が)間近に迫っていること。

それぞれの使い方を具体的に見ていこう。

2. 「控える」の意味と使い方

2-1. 慎む・控えめにする(行動を抑える)

もっとも一般的な使い方で、「やりすぎない」「遠慮する」「控えめに行動する」という意味。
ビジネスやフォーマルな場面でよく使われる。

例:

  • この時期は外出を控えましょう
  • 発言を控えてください。
  • アルコールの摂取を控えるようにしている。
  • 彼は冗談を言うのを控えた

→ 自己抑制や礼儀を示す丁寧な表現であり、「しない」「やめる」よりも柔らかい言い方。

2-2. そばに待機する・次に備える

「人のそばで待つ」「出番を控えている」といった意味。
式典や舞台などの場面で使われることが多い。

例:

  • 次の出番を控えて、舞台裏で待機している。
  • 応接室の外で控えております。
  • 秘書が社長室の前で控えている。

→ 「待つ」という意味をより丁寧・上品に言い換えた表現である。

2-3. 記録を取る・控えを残す

書類や情報の写しを別に保管することを意味する。
事務処理や公式文書のやり取りでよく使われる。

例:

  • 契約書の控えをお渡しします。
  • 申請書は会社にも控えを残しておいてください。
  • 念のため、日付と金額を控えておきましょう。

→ この場合、「控える」は動詞というより、名詞「控え」として使われることも多い。

2-4. 予定を間近に控える

「控える」は、「(出来事が)もうすぐ起こる」という意味でも使われる。
スケジュールや行事などを前にして使う表現である。

例:

  • 卒業式を控えた学生たち。
  • 彼は結婚式を控えている。
  • 大事な試験を控えて、緊張している。

→ この場合の「控える」は、「目前に迫る」「準備段階にある」という意味を持つ。

3. 「控える」の敬語表現

「控える」はもともと丁寧な言葉だが、さらに敬語として使う場合は以下のように言い換えられる。

状況 敬語表現 意味
控える(自分側) 控えております 「待っています」「おります」の丁寧語。
控える(相手側) お控えください 「控えてください」の丁寧な依頼形。
控える(予定) 〜を控えております 「〜を前にしています」という謙譲表現。

例:

  • ただいま、こちらの部屋で控えております。(=待っています)
  • 発言はお控えください。(=控えてください)
  • 来週、会議を控えております。(=会議が近づいています)

→ 「控える」は、丁寧・謙譲・抑制のニュアンスをすべて含む便利な表現である。

4. 「控える」の類義語と違い

類義語 意味 違い・特徴
慎む 行動や言葉を控えめにする。 礼儀・節度を重んじる場面で使う。
遠慮する 自分の行動を差し控える。 相手への配慮を強調する表現。
待機する 次の指示に備えて待つ。 「そばで控える」と近い意味。
控えめにする 態度や表現を穏やかにする。 日常的で柔らかい印象。
記録する 情報を残す。 「控えを取る」の具体的動作を示す。

→ 「控える」は状況によって複数の類義語に置き換えられるが、どの場合も「抑える・待つ・残す・準備する」という共通点がある。

5. 「控える」を使った例文集

  • このエリアでは飲食を控えてください。
  • 来週には大切な試験を控えている。
  • 彼は控え室で出番を待っている。
  • 取引内容をメモに控えておいた。
  • 食事の量を控えることで健康を維持している。
  • 私は次の会議の進行役を控えております。

6. 英語での「控える」表現

「控える」は文脈によって英語の訳が異なる。

意味 英語表現 例文
慎む・控える refrain from / avoid Please refrain from smoking.(喫煙はお控えください。)
待機する wait / stand by I am waiting outside the room.(部屋の外で控えております。)
控えを取る make a copy / take a note Please keep a copy of the document.(書類の控えを取ってください。)
予定を控える be scheduled / be coming up We have a meeting coming up next week.(来週、会議を控えている。)

→「控える」は一語で多義的なため、文脈に応じて適切な英語表現を選ぶ必要がある。

7. まとめ

「控える」とは、行動を慎む・待つ・記録を残す・予定を前にするなど、文脈によって多様に使われる日本語である。
ビジネスや日常の場面では、「お控えください」「控えております」など丁寧な表現としてよく用いられる。
共通するのは、「節度を持ち、落ち着いた態度を取る」という日本的な礼儀の感覚。
「控える」はまさに、相手への配慮と自己抑制を表す上品な言葉といえる。

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