「既往症(きおうしょう)」という言葉は、病院での問診票や健康診断の際によく目にします。「既往症がありますか?」「既往症を教えてください」と聞かれることもありますが、具体的にどのような病気を指すのか、また「持病」とはどう違うのかを理解していない人も多いかもしれません。この記事では、「既往症(きおうしょう)」の意味、使い方、関連する医学用語との違いをわかりやすく解説します。
1. 既往症とは?意味を詳しく解説
既往症(きおうしょう)とは、「過去にかかったことがある病気」のことを意味します。
現在は治っている、または症状が落ち着いている場合でも、「以前にその病気にかかった事実」があれば、それは既往症に含まれます。
例:
・糖尿病や高血圧などの既往症がある。
・既往症の有無を医師に伝える。
・手術前には既往症を申告する必要がある。
つまり、「既往症」とは「過去の病歴」を指す医学的な表現です。
1-1. 読み方と語構成
「既往症」は「きおうしょう」と読みます。
「既往」とは「すでに経過したこと」「過去にあったこと」、「症」は「病気や症状」を意味します。
そのため、「既往症」とは「過去に経験した病気」という意味になります。
1-2. 現在の病気とは違う
既往症は「過去の病気」なので、現在も症状が続いているもの(慢性疾患など)とは区別されます。
ただし、既往症が再発したり、治療後も影響を及ぼす場合は、現在の健康状態を判断する上で重要な情報になります。
2. 既往症の使い方と例文
2-1. 医療現場での使い方
・手術の前に、既往症を詳しく申告してください。
・既往症の影響で、麻酔の種類を変更します。
・既往症の有無によって、治療方針が異なる場合があります。
医療現場では、既往症は治療方針や薬の処方を決める上で欠かせない情報です。
2-2. 健康診断や保険などでの使い方
・生命保険の加入時には、既往症の有無を申告する必要があります。
・既往症がある場合、保険の条件が変わることがあります。
・健康診断の問診票に、既往症を正確に記入することが大切です。
特に保険や健康管理において、既往症の申告は「リスク評価」に関わる重要な要素です。
2-3. 一般的な使い方
・彼は心臓病の既往症があるため、激しい運動は控えている。
・過去の既往症が原因で、体調に注意が必要だ。
・持病ではないが、以前に肺炎の既往症がある。
このように、医療関係以外でも健康や生活に関する会話の中でよく使われます。
3. 既往症と類似語の違い
3-1. 持病との違い
「持病(じびょう)」は、長期間にわたって続いている慢性的な病気を指します。
一方、「既往症」は過去にかかったが、現在は治っている、または症状がない病気も含みます。
項目 | 既往症 | 持病 |
---|---|---|
意味 | 過去にかかった病気 | 現在も続いている慢性の病気 |
状態 | 治っている場合も含む | 継続的に症状がある |
例 | 昔、胃潰瘍になった | 今も糖尿病を治療中 |
つまり、「持病 ⊂ 既往症」と考えることもできます。持病は既往症の一部です。
3-2. 既病との違い
「既病(きびょう)」という言葉もありますが、これは「すでにかかった病気」という意味で、既往症とほぼ同義です。
ただし、一般的な会話では「既往症」の方がよく使われます。
3-3. 既往歴との違い
「既往歴(きおうれき)」は、「過去の病気や治療の履歴」をまとめて指す言葉です。
既往症が「一つの病気」であるのに対し、既往歴は「複数の病気や治療の経過」を意味します。
例:
・彼の既往症は糖尿病。
・彼の既往歴には、胃潰瘍と高血圧がある。
4. 英語での「既往症」表現
英語では、「既往症」は文脈により次のように表されます。
・past illness(過去の病気)
・previous disease(以前の病気)
・medical history(病歴)
・pre-existing condition(既存の疾患・既往症)
例文:
・Do you have any pre-existing conditions?(既往症はありますか?)
・Please write down your past illnesses on the form.(過去にかかった病気を用紙に記入してください。)
特に「pre-existing condition」は、保険や医療の文脈で「既往症」として使われる最も一般的な表現です。
5. 既往症の例
代表的な既往症には、次のようなものがあります。
・高血圧
・糖尿病
・心臓病
・脳卒中
・喘息
・胃潰瘍
・がん
・肝炎
・アレルギー性疾患
これらの病気は、治療後も体に影響を与えることがあるため、問診や診察時に申告が求められます。
6. 既往症を申告する理由
6-1. 医療安全のため
既往症を医師に伝えることで、薬の選択や治療方針を誤らないようにできます。
たとえば、心臓病の既往がある人に強い負担を与える薬を処方すると危険なため、正確な情報が必要です。
6-2. 手術・麻酔のリスク管理
既往症によっては、手術中や麻酔の際にリスクが高まることがあります。
そのため、過去の病気をすべて申告しておくことが安全な医療につながります。
6-3. 保険・補償の正確な判断
保険加入時には、既往症があると契約条件が変わる場合があります。
正確な申告を行うことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
7. 既往症と向き合うポイント
・過去の病気を正確に把握し、記録しておく
・定期的に健康診断を受け、再発を防ぐ
・既往症がある場合は、主治医や家族に共有しておく
既往症は「終わった病気」ではありますが、将来の健康リスクに関わる重要な情報です。
8. まとめ
既往症とは、過去にかかったことのある病気を指す医学用語です。
現在は治っていても、手術や薬の影響、保険契約などに関わる重要な情報となります。
「持病」や「既往歴」との違いを理解し、必要な場面で正確に申告することが、安全で信頼できる医療への第一歩です。