「〜がてら」という表現は、日常会話や文章の中でよく使われますが、正確な意味や使い方を説明できる人は意外と少ないかもしれません。「散歩がてら買い物に行く」「挨拶がてら立ち寄った」など、一見自然な言い回しですが、文法的には特有の使い方を持っています。この記事では、「がてら」の意味、語源、使い方、例文、そして似た表現との違いまでを詳しく解説します。
1. 「がてら」とはどういう意味か
「がてら」とは、ある行為をするついでに別の行為も行うことを表す言葉である。
つまり、「AするがてらBする」という形で使い、「AをするついでにBも行う」という意味になる。
例:
- 散歩がてらコンビニに行った。(=散歩のついでにコンビニへ行った)
- 挨拶がてらお土産を持ってきました。(=挨拶のついでにお土産も持ってきた)
- 花見がてら写真を撮った。(=花見のついでに写真も撮った)
このように、「がてら」は主となる行為に関連して、別の目的を同時に果たすときに使われる便利な表現である。
2. 「がてら」の語源・由来
「がてら」は漢字で書くと「方々(がてら)」と表記されることもあり、もともとは「〜を兼ねて」「〜の機会に」といった意味を持つ古い言葉である。
語源的には「〜のかたわら(傍ら)」に由来し、「あることをする途中で、もう一つのことを行う」という使い方が自然に定着した。
したがって、「がてら」は単なる「ついでに」よりも、自然な流れや目的の重なりを感じさせる柔らかい表現といえる。
3. 「がてら」の文法的な使い方
「がてら」は主に名詞または動詞の連用形(ます形の語幹)に接続して使う。
- 名詞+がてら: 散歩がてら、買い物がてら、挨拶がてら
- 動詞ます形+がてら: 歩きがてら、出かけがてら、行きがてら
ただし、動詞につく場合は一部の語に限られ、一般的には名詞に付ける形の方が自然で多く使われる。
4. 「がてら」を使った例文
4-1. 日常会話の例
- 友達に会いに行くがてら、近くのカフェに寄った。
- 散歩がてらポストに手紙を出してくるね。
- 通勤がてら英語の勉強をしている。
4-2. ビジネスシーンでの例
- 出張がてら取引先へ挨拶に伺いました。
- 展示会見学がてら市場調査も行いました。
- 帰省がてら地元企業を訪問しました。
このように、フォーマルな文章でも違和感なく使える柔軟な表現である。
5. 「がてら」と似た表現との違い
5-1. 「ついでに」との違い
「ついでに」も似た意味を持つが、ニュアンスに違いがある。
「ついでに」はどちらかというと偶然性が強く、「AのついでにBもやる」という軽い印象を与える。
一方、「がてら」は自然な流れや意図的な兼ね合いを含む。
例:
- 散歩がてら=散歩を楽しみながら自然に別の目的も果たす。
- 散歩のついでに=散歩する機会を利用して別のこともする。
5-2. 「ながら」との違い
「ながら」は同時進行を表すのに対し、「がてら」は目的の併用を表す。
例:
- 音楽を聞きながら散歩する(=同時に二つの行動をしている)
- 散歩がてら音楽を聞く(=散歩を主目的に、その途中で音楽を楽しむ)
このように、「がてら」は時間的な同時性よりも、「機会を利用して別のことをする」という意味合いが強い。
6. 「がてら」を使うときの注意点
「がてら」は便利な表現だが、使用上の注意もある。
- 主目的(前半)と副目的(後半)の関係が自然であることが大切。
- 目上の人に対しては丁寧な言い回しに変えるのが望ましい(例:「〜の折に」など)。
- 動作が同じ時間帯や場所で行われるときに使うのが基本。
不自然な例:
×「勉強がてら映画を見る」→目的が異なりすぎて意味が通らない。
自然な例:
〇「買い物がてら映画を見た」→どちらも外出に関する行動で自然。
7. 英語での「がてら」表現
英語に直訳できる単語はないが、文脈によって次のように言い換えられる。
- while doing(〜しながら)
- on the way to(〜へ行く途中で)
- as well as(〜も同時に)
- taking the opportunity to(〜の機会を利用して)
例:
- I went shopping on the way to my walk.(散歩がてら買い物に行った)
- He visited his friend while running errands.(用事がてら友人に会った)
8. 「がてら」の類義語
「がてら」と似たニュアンスを持つ表現として、以下が挙げられる。
- ついでに:偶然や利便性を重視。
- かたがた:丁寧で格式のある言い方(例:ご挨拶かたがた伺いました)。
- も兼ねて:フォーマルな文章で多く使われる(例:視察も兼ねて出張する)。
9. まとめ
「がてら」とは、ある行為をするついでや機会を利用して別の行為を行うことを表す表現であり、自然で柔らかい響きを持つ。
「ついでに」よりも意図的で、「ながら」よりも時間的な同時性が弱いのが特徴。
日常会話からビジネス文書まで幅広く使える便利な表現なので、文脈に合わせて正しく使い分けるとよい。