「取り次ぐ」という言葉は、日常でもビジネスシーンでもよく使われますが、正確な意味や使い方を理解している人は意外と少ないものです。この記事では、「取り次ぐ」の正しい意味や使い方、類語との違い、そして電話応対などの具体的な使用例まで丁寧に解説します。社会人として恥をかかないために、言葉のニュアンスをしっかり押さえておきましょう。
1. 「取り次ぐ」の基本的な意味
1-1. 「取り次ぐ」とは何を指す言葉か
「取り次ぐ(とりつぐ)」とは、他者の間に立って情報や物事を伝えることを意味します。主に「人と人」「依頼と対応者」「情報と受け手」をつなぐ行為を指します。つまり、「直接伝えるのではなく、間に立って伝える」イメージの言葉です。
たとえば、会社で「課長に伝えておきます」といった場合、実際に課長へ連絡や伝達を行う行為が「取り次ぐ」にあたります。
1-2. 国語辞典での定義
「取り次ぐ」は、国語辞典では以下のように定義されています。
人と人との間に立って、要件や伝言などを伝えること。
品物・注文などを受けて、関係する相手に渡す・伝えること。
このように、「仲介」「伝達」「橋渡し」といったニュアンスを持つのが特徴です。
2. 「取り次ぐ」の使い方と例文
2-1. ビジネスシーンでの使い方
ビジネスにおける「取り次ぐ」は、主に電話対応や顧客対応の場面でよく使われます。例えば以下のような表現が一般的です。
・「担当者にお取り次ぎいたします」
・「ただいま担当者が席を外しておりますので、戻り次第お取り次ぎいたします」
・「あいにく課長は会議中です。後ほどお取り次ぎいたしましょうか?」
これらは相手に丁寧な印象を与える言い回しであり、社内外どちらのコミュニケーションにも適しています。
2-2. 日常会話での使用例
ビジネス以外の場面でも「取り次ぐ」は使われます。
・「母に電話を取り次いでもらった」
・「知人の紹介で取り次いでもらった」
・「神仏に願いを取り次ぐ」
このように、形式ばらない場面でも「誰かの間に立って伝える」意味で使われます。
3. 「取り次ぐ」と「伝える」「紹介する」との違い
3-1. 「伝える」との違い
「伝える」は自分自身が直接相手に情報を届けることを意味します。
一方で「取り次ぐ」は、他者の依頼や情報を代理で伝える点が異なります。
例:
・伝える → 「私が本人に直接言います」
・取り次ぐ → 「本人に代わってお伝えします」
この違いにより、責任の所在や立場の明確さが変わります。
3-2. 「紹介する」との違い
「紹介する」は、人を新たに引き合わせる行為です。
一方、「取り次ぐ」は、既に関係がある相手同士の間を仲介する行為です。
例:
・紹介する → 「この方は新しい取引先の担当者です」
・取り次ぐ → 「担当者におつなぎします」
したがって、「取り次ぐ」はすでに関係性が存在する中での伝達・接続行為といえます。
4. 電話応対での「取り次ぐ」の使い方
4-1. 正しい言い回しの例
電話応対では「取り次ぐ」という言葉を使う場面が多くあります。以下のような表現が自然で丁寧です。
・「〇〇でございますね。少々お待ちくださいませ。担当者にお取り次ぎいたします。」
・「申し訳ございませんが、担当者が離席しております。戻りましたらお取り次ぎいたします。」
・「あいにく会議中でございます。恐れ入りますが、伝言をお預かりしてよろしいでしょうか。」
これらは電話対応の基本として覚えておくと、社外からの印象を良くすることができます。
4-2. NG例とその理由
・「取り次げません」→直接的で冷たい印象を与える
・「いません」→ビジネスでは不適切な表現
・「担当者が今、忙しいです」→カジュアルすぎて失礼にあたる
正しくは、「あいにくただいま席を外しております」「申し訳ございませんが、ただいま対応中でございます」といった柔らかい表現を選びましょう。
5. 「取り次ぐ」の類語と使い分け
5-1. 類語一覧と意味の違い
「取り次ぐ」に近い意味を持つ言葉には、次のようなものがあります。
・「仲介する」:人と人の間に立って取り持つ
・「橋渡しする」:人や物事をつなぐ役割を担う
・「取り持つ」:人間関係や状況をうまくつなげる
・「伝える」:直接、情報を届ける
これらの中でも、「取り次ぐ」は最もビジネス的でフォーマルな響きを持ちます。
5-2. シーン別の使い分け
・上司や取引先への連絡:→「取り次ぐ」
・人の関係をつなぐ場面:→「橋渡しする」「紹介する」
・カジュアルな伝言:→「伝える」
状況や相手との関係性に応じて、適切な言葉を選ぶことが大切です。
6. 「取り次ぐ」を使う際の注意点
6-1. 敬語の使い方に注意
「取り次ぐ」は動詞なので、敬語にする際には「お取り次ぎする」「お取り次ぎいたします」と表現します。
間違って「取り次がせていただきます」と言う人もいますが、これは不自然な日本語です。
正しい敬語:
・「担当者にお取り次ぎいたします」
・「お電話をお取り次ぎします」
6-2. 相手への印象を左右する言葉選び
「取り次ぐ」は、相手に丁寧で誠実な印象を与える一方、使い方を誤ると冷たい印象にもなりかねません。特に電話対応では、声のトーンや言葉遣いに注意し、相手を待たせる場合も「少々お待ちくださいませ」と添えることで印象が柔らかくなります。
7. まとめ:「取り次ぐ」は人をつなぐ言葉
「取り次ぐ」は、単に「伝える」だけではなく、「相手の意図や立場を考慮して仲介する」という意味を持つ言葉です。ビジネスでは信頼や印象を左右する大切な要素でもあります。正しい使い方を覚えておくことで、円滑なコミュニケーションが可能になり、仕事の質も向上します。
日常生活でも自然に使えるよう、ぜひ今回紹介したポイントを実践してみてください。