「おびただしい」という言葉は、新聞やニュース、文学作品などで頻繁に目にする表現ですが、実際にどのような意味を持ち、どう使えばいいのか分かりづらいと感じる人も多いでしょう。この記事では「おびただしい」の意味や使い方、例文、類語表現などを詳しく紹介します。
1. 「おびただしい」の意味
1.1 国語辞典での定義
「おびただしい(夥しい)」とは、数量や程度が非常に多いことを表す形容詞です。主に、目に見える物の数や量が多いことを強調したいときに使われます。また、その多さに驚いたり、圧倒されたりするようなニュアンスも含まれています。
1.2 語源と漢字の意味
「おびただしい」は漢字で「夥しい」と書きます。「夥」は「多くの人や物が集まっているさま」を表す漢字で、古くから「極めて多い」という意味を持っていました。現在ではひらがな表記が一般的ですが、漢字表記が用いられることもあります。
2. 「おびただしい」の使い方
2.1 よく使われる文脈
「おびただしい」は、次のような場面で使われることが多いです:
数量が非常に多いとき(例:人、物、血、雨など)
見た目や状況に圧倒されるとき
ネガティブな印象を強調したいとき
2.2 例文で見る使い方
以下に、実際の文章における「おびただしい」の使用例を紹介します:
現場にはおびただしい量の血が流れていた。
台風の影響で、おびただしい数の木が倒れていた。
SNS上にはおびただしい数のコメントが寄せられている。
書棚にはおびただしい数の本がぎっしりと並んでいた。
2.3 感情や状況を強調する効果
「おびただしい」は、単に「多い」と言うよりも、読者や聞き手に強い印象を与える表現です。そのため、物理的な多さだけでなく、混乱・混沌・恐怖・驚きといった感情も同時に伝えることができます。
3. 「おびただしい」と似た言葉(類語)
3.1 「多い」との違い
「おびただしい」は「多い」と似ていますが、単に数量の多さを表す「多い」と比べて、より主観的・感情的な要素が加わる点が特徴です。
例:
○:参加者が多い(客観的な数量)
○:参加者がおびただしい数だった(圧倒される印象)
3.2 類語の例とニュアンスの違い
類語 意味や特徴
莫大(ばくだい) 非常に大きな数量や金額に対して使われる。主に経済的な文脈で使用。
甚大(じんだい) 被害や影響が非常に大きい場合に使う。ネガティブな意味合いが強い。
夥多(かた) 古語的・文学的な表現で、「極めて多い」の意味。現代ではあまり使われない。
大量(たいりょう) 数や量が非常に多いことを、比較的客観的に表す。
4. 「おびただしい」が使われる具体的な場面
4.1 ニュースや報道の中で
テレビや新聞などの報道で、「おびただしい被害」「おびただしいデータ漏洩」などと使われることがあります。ニュースでは、特に異常事態や深刻な状況を伝えるために用いられます。
4.2 文学作品や小説での使用
小説や随筆などでは、「おびただしい」は情景描写を強調するために使われます。例えば、戦場の描写で「おびただしい血の跡が…」というように、視覚的・感情的インパクトを与える効果があります。
4.3 日常会話での使い方
日常の中でも、インパクトを強めたい場面で使うことがあります。
例:
「あの人、ほんとにおびただしい数の靴持ってるよね」
「メールが開いたらおびただしい量の通知が…」
ただし、やや大げさな印象を与えるため、使い方には注意が必要です。
5. 「おびただしい」を使う際の注意点
5.1 過剰表現にならないように
「おびただしい」は非常に強い表現のため、使いすぎると大げさに聞こえたり、信頼性を損なったりすることがあります。特に、事実を伝える場面では慎重に使用する必要があります。
5.2 適切な対象に限定する
「おびただしい」は、数量が「目に見える」ものに使うことが一般的です。抽象的な概念にはあまり使われません。
例:
○:おびただしい人数、おびただしい紙くず
×:おびただしい友情(←抽象的で不自然)
5.3 文脈との整合性を確認する
文章全体のトーンやテーマに対して「おびただしい」が不釣り合いにならないように意識しましょう。例えば、穏やかな雰囲気の文に突然「おびただしい」が出てくると、違和感を与えることがあります。
6. まとめ:「おびただしい」は強い印象を与える言葉
「おびただしい」という言葉は、単なる「多さ」を超えて、読み手や聞き手に強い印象を残す日本語表現です。感情や状況の深刻さを表すのに適しており、文学的にも報道的にも使いどころの多い語彙といえます。正しい意味と使い方を理解し、文脈に応じて適切に用いることで、文章や話し言葉の表現力を高めることができます。