日本語の接続詞「並びに」は、日常会話ではあまり聞かないものの、ビジネス文書や公的な文章ではよく使用されます。しかし、「および」や「そして」との違いがわかりづらく、誤用されやすい言葉でもあります。この記事では「並びに」の意味、正しい使い方、類語との違い、注意点について詳しく解説します。

1. 「並びに」の基本的な意味

1-1. 「そして」「および」と同じ意味を持つ接続詞

「並びに」は、複数の語句や項目を並列でつなぐ接続詞です。意味としては「そして」や「および」とほぼ同じですが、やや格式ばった印象を与えます。特に文書や契約書、ビジネス上の案内文などで使用されることが多い言葉です。

1-2. 書き言葉としての使用が一般的

「並びに」は口語ではほとんど使われません。日常会話では「そして」や「それと」などが使われるため、「並びに」は主に書き言葉の中で見られる語です。特に、公文書や契約書では定型句の一部としてよく使われます。

2. 「並びに」の使い方と用例

2-1. 複数の名詞を列挙する場合

もっとも基本的な使い方は、名詞を複数並べるときに使用する方法です。

例:
本契約は、甲、乙並びに丙の三者によって締結される。
(この場合、甲と乙、そして丙という三者を列挙しています。)

2-2. 文の中間や終わりで使う

「並びに」は文の途中、または文末に置かれることが多く、項目をつなぐ形で機能します。

例:
対象となるのは、正社員、契約社員並びに派遣社員である。

このように、複数の要素をつなげる際に自然な流れで挿入できます。

2-3. 条件や対象が広がるときに便利

「並びに」は列挙項目の範囲が広がるときにも有効です。特に法的文書や規定などでは、関係者や対象者を漏れなく表現するために使われます。

例:
社員及びその家族並びに扶養親族に対して補助金を支給する。

この文では、対象が「社員」と「家族」、そして「扶養親族」へと段階的に広がっています。

3. 「および」「ならびに」「及び」との違い

3-1. 「および」と「ならびに」の違い

「および」は話し言葉でも比較的自然に使える接続詞です。一方、「ならびに」は「および」よりもさらにかたい表現となります。意味は同じですが、文書の格式に応じて使い分けがされます。

例:
○○株式会社および関連会社 → カジュアル寄り
○○株式会社並びに関連会社 → かたい・公的寄り

3-2. 「及び」と「並びに」の違い

「及び」も意味は「および」と同じですが、漢字表記になることでよりフォーマルな印象を与えます。「及び」と「並びに」の使い分けは文書の種類や目的により異なりますが、法律文書では「及び」や「並びに」がより頻出します。

4. 「並びに」を使うときの注意点

4-1. 使いすぎると読みにくくなる

「並びに」は文章を堅く見せる効果がありますが、過剰に使用すると文が不自然になったり、読みにくくなったりします。口語や柔らかい文体にしたい場合は「そして」や「それと」などに言い換えましょう。

4-2. 対象の関係性を考える

「並びに」を使う場合、列挙する対象同士の関係が対等であることが重要です。意味的に無関係なものを無理に「並びに」でつなぐと、読者に混乱を与える可能性があります。

例:
誤:商品の価格並びに製造年月日
(価格と年月日は性質が異なるため、不自然)

正:商品の価格および割引率
(同じカテゴリの情報同士を接続している)

5. 「並びに」が使われる場面と例文

5-1. 契約書や公文書

契約書では、関係当事者や対象範囲を明確にするために「並びに」が頻繁に使われます。

例:
甲、乙並びにその代理人がこの契約を履行する。

5-2. ビジネスメールや案内文

ビジネスメールでは丁寧な印象を与える目的で使われます。

例:
貴社並びに関係各位のご発展を心よりお祈り申し上げます。

このように、格式を求める場面では効果的な語句です。

6. 「並びに」の英語表現

6-1. 「and」による接続

英語では「並びに」は基本的に「and」で表現されます。ただし、文章の格式や意味の広がりによっては、「as well as」や「in addition to」などを使うこともあります。

例:
Employees and their families, as well as dependents, are eligible for benefits.
(社員およびその家族並びに扶養家族が対象となります。)

6-2. 契約書や規則での英訳

法的な文脈では、「together with」や「along with」も適切な場合があります。日本語の「並びに」のように、対象の範囲を明確に拡張するために使われます。

7. 「並びに」を正しく使いこなすために

7-1. 文脈と格式を意識する

「並びに」は文脈と文書の形式によって使い方が異なります。カジュアルな文やブログ記事には不向きですが、ビジネス文書や契約関連には非常に有効です。

7-2. 類語との適切な使い分けが重要

「および」「そして」「それと」などの類語と比較し、それぞれの場面に合った語を選ぶことで、文章の伝達力が大きく変わります。「並びに」は特定のフォーマルな状況において、相手への敬意や配慮を示すツールとなります。

8. まとめ:「並びに」は格式ある接続詞

「並びに」は、複数の項目や人を列挙する際に使える、やや格式の高い日本語の接続詞です。「および」や「そして」との意味の違いは大きくないものの、使用する場面によって文章の印象が大きく変わります。契約書や案内文など、フォーマルな文章にふさわしい語として、適切な文脈で活用しましょう。

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