「重版(じゅうはん)」という言葉は、本の帯やニュース記事などで「重版決定!」「重版出来(じゅうはんしゅったい)」といった形で目にすることがあります。出版業界ではよく使われる専門用語ですが、似た言葉に「増刷」もあるため、違いが分かりにくいという声も少なくありません。この記事では、「重版」の意味や使い方、増刷との違いなどをわかりやすく解説します。

1. 「重版」とは何か

1.1 基本的な意味

「重版」とは、一度発行された本がよく売れて在庫がなくなったときに、もう一度同じ内容の本を印刷・発行することを指します。つまり、「需要が高くて再度刷られること」が重版の基本的な意味です。

1.2 漢字の意味

「重」は「ふたたび」「繰り返し」を、「版」は「印刷されたもの(出版物)」を意味します。したがって「重版」は「もう一度版を重ねて印刷すること」となります。

2. 重版の使い方と例

2.1 一般的な使い方

・発売3日で重版決定
・話題の漫画が異例の5回目の重版
・初版が即完売し、重版が急がれる事態に

2.2 出版関係者の会話での使用

・「今朝、あの本の重版が決まりました」
・「重版が決まったから、書店にまた並ぶよ」
・「初版部数が少なかったので、すぐに重版の依頼を出した」

3. 「増刷」との違い

3.1 重版と増刷の定義

・**重版**:内容に修正や加筆が加えられたうえで再度印刷されること
・**増刷**:内容は初版とまったく同じで、単に部数を追加印刷すること

3.2 どちらも“再び印刷する”という点は同じ

どちらも「売れた本を追加で印刷すること」には変わりありません。ただし、内容に変化があるかどうかで言葉を使い分けます。

3.3 現場では区別されないことも

実際の出版現場では、修正がなくても便宜的に「重版」という言葉が使われることも多く、一般的な読み手にとってはほぼ同義語として扱われています。

4. 重版がかかる理由とタイミング

4.1 書店での売れ行きが好調

本が発売後すぐに完売してしまった場合、出版社は在庫切れを防ぐために重版をかけます。書店からの注文が多く寄せられることがきっかけになります。

4.2 メディアやSNSでの話題性

テレビやラジオで取り上げられたり、SNSで口コミが拡散されたりした結果として、急激に注文が増え、重版に至ることもあります。

4.3 受賞やランキング入り

文学賞の受賞やベストセラーランキング入りをきっかけに、出版元が重版を決定するケースもあります。

5. 「重版出来(じゅうはんしゅったい)」とは?

5.1 出版業界独自の用語

「重版出来(しゅったい)」は、「重版が決定し、印刷工程に進んだ状態」を表す出版用語で、「出来(しゅったい)」とは「刷り上がった印刷物」のことです。

5.2 使い方の例

・「重版出来しました!」(=実際に刷り上がった)
・「重版決定」と「重版出来」は厳密には別物だが、一般的には同じように使われることもあります。

5.3 メディアでの登場

この言葉はテレビドラマ『重版出来!』のタイトルにも使われ、出版業界用語として広く知られるようになりました。

6. 言い換え・関連語

6.1 言い換え表現

・再版(再び出版すること)
・再印刷(印刷そのものを再び行うこと)
・刷り増し(増刷とほぼ同じ意味)

6.2 関連する用語

・初版:最初に印刷・発行された版
・第〇刷:何回目の印刷かを示す表記(第1刷、第2刷…)
・改訂版:内容に大きな変更・加筆修正が加えられた新たな版

7. まとめ

「重版」とは、書籍がよく売れて追加で印刷・発行されることを指す言葉で、出版業界では成功の証として喜ばれるものです。似た言葉に「増刷」がありますが、内容の修正の有無で使い分けられます。また、「重版出来」という言葉も併せて理解しておくことで、本に関するニュースや帯の表記がより深く理解できるようになります。本を読む楽しみに加えて、その本がどのように世に広がっていったのかも感じられるようになるでしょう。

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