「以って(もって)」は、日本語の文章表現の中でも格式が高く、主に公式文書やビジネス文書で使われる言葉です。手段や理由、期限、結果を示す多様な意味を持ち、その正しい使い方を知ることは、説得力のある文章作成に役立ちます。この記事では「以って」の語源から現代での使い方まで、丁寧に解説します。

1. 「以って」の読み方と基本的な意味

1.1 読み方のポイント

「以って」は一般的に「もって」と読みます。漢字の「以」は「い」とも読めますが、「以って」となると必ず「もって」です。正確な読み方を知ることは誤読を防ぎ、ビジネス文書での信頼性向上につながります。

1.2 「以って」の主な意味

「以って」には大きく分けて以下の4つの意味があります。 1. 手段・方法を示す 2. 理由・原因を示す 3. 時間・期限を示す 4. 結果・状態を示す
これらは文章の文脈や意図によって使い分けられます。

2. 「以って」の語源と歴史的背景

2.1 漢字「以」の成り立ち

「以」は古代中国で成立した漢字で、「もって」や「もつて」の助詞的用法を持っていました。日本語に取り入れられる際、漢文訓読の影響を受け、「以って」は「もって」という読みと使い方で定着しました。

2.2 古典文学・文書での使用例

平安時代や鎌倉時代の文学作品、『徒然草』や『源氏物語』、また江戸時代の武家文書などに「以って」が多用されてきました。たとえば、『徒然草』の一節では、「以って君子の行いを計るべし」といったように、手段や理由を示すための表現として機能していました。

2.3 近現代における変遷

明治以降の口語文の普及とともに、「以って」は次第に日常会話からは姿を消し、現在では主にビジネス文書や公的文書での使用に限られています。格式ある文章での使用は、相手に敬意を示す意味合いもあります。

3. 意味別の使い方と例文解説

3.1 手段・方法を示す

「以って」は「~を手段として」という意味で使われます。 例:電子メール**以って**ご連絡差し上げます。 意味:電子メールを用いて連絡すること。

3.2 理由・原因を示す

何かの理由や根拠を示す時に使います。 例:不手際**以って**皆様にご迷惑をおかけしました。 意味:不手際が原因で迷惑をかけた。

3.3 時間・期限を示す

期限や基準点を表す際に用います。 例:4月1日**以って**新制度を施行いたします。 意味:4月1日を基準にして新制度を始める。

3.4 結果・状態を示す

ある状態や結果をもって何かを完結させる場合。 例:これ**以って**すべての手続きを完了いたしました。 意味:これをもって手続きが終了した。

4. 類語との違いと使い分けのポイント

4.1 「によって」「により」との比較

「によって」「により」は日常的にも使われ、より柔らかいニュアンスです。対して「以って」は堅く格式のある印象が強いので、書面での正式なやり取りに向いています。

4.2 「をもって」との関係

「をもって」は「以って」の平仮名混じりの表現で、どちらも同じ意味ですが、「をもって」のほうがビジネス文書で一般的に使われています。意味の差はほぼありません。

4.3 「で」との違い

「で」は口語の手段表現であり、「以って」は書き言葉であるため、口語文では使いにくい点に注意が必要です。

5. ビジネス文書での「以って」の具体的使用例

5.1 契約終了の通知

本通知**以って**契約終了の意志を申し伝えます。

5.2 発注確認の連絡

ご注文**以って**正式な発注といたします。

5.3 謝罪文における使用

今回の不手際**以って**深くお詫び申し上げます。

6. 「以って」を使う際の注意点

6.1 過度の使用による堅苦しさ

多用すると堅苦しい印象を与えるため、使い過ぎには注意が必要です。

6.2 誤読の防止

「もって」と正しく読むことが大切です。誤って「いもって」などと読むと信用を損ないます。

6.3 適切な場面の選定

カジュアルな場面では「で」「によって」などの表現が適切で、堅い言葉は公的文書に限定しましょう。

7. よくある誤用とその訂正例

7.1 手段以外の意味での誤用

誤用例:「明日**以って**来てください」(時間の期限ではなく命令の意味で誤用) 訂正例:「明日**までに**来てください」

7.2 誤った読み方

誤用例:「いもって」 訂正例:「もって」

8. まとめ

「以って」は古くから用いられる格式ある言葉で、手段・理由・期限・結果など多様な意味を持ちます。現代のビジネスや公的文章で使う際には、その意味と使い方を正しく理解し、類語と使い分けることが重要です。適切に使えば文章の信頼性や説得力を高めることができます。

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