物語の「始まりの前」を描く「前日譚(ぜんじつたん)」という言葉。映画やアニメ、ドラマ、ライトノベルなど、さまざまなジャンルで目にするこの用語の意味や使い方、類義語との違い、英語表現までを網羅的に解説します。前日譚を知れば、作品をより深く楽しめること間違いなしです。
1. 前日譚の意味と読み方
1.1 「前日譚」の読み方
「前日譚」は「ぜんじつたん」と読みます。漢字を見ると少し堅苦しい印象を持たれるかもしれませんが、実際には映画やアニメの紹介などでよく使われる表現です。
1.2 「前日譚」の意味
「前日譚」とは、ある物語の“本編”が始まるよりも前の出来事を描いた物語、または作品を指します。本編を補完する役割を持ち、キャラクターの過去や世界観の背景などを詳しく掘り下げるために作られることが多いです。
2. 前日譚の由来と語源
2.1 「譚」という言葉の意味
「譚(たん)」とは、故事や伝説、物語を意味する漢語であり、中国由来の熟語に多く使われます。「奇譚」「怪譚」などにも見られるように、話・物語という意味合いを持ちます。
2.2 「前日」と「譚」の組み合わせ
「前日」は「ある特定の日の前の日」ですが、ここでは「物語が始まる前の時間軸」という抽象的な意味で使われています。それに「譚」をつけたことで、「物語の前段階に起きた話」という意味を形成します。
3. 前日譚と関連する言葉の違い
3.1 「続編」との違い
続編は、物語の後の時間軸に展開する作品を指します。時系列で言えば、本編→続編。一方、前日譚は本編の“前”に位置する物語です。順番で言えば、前日譚→本編→続編、となります。
3.2 「スピンオフ」との違い
スピンオフは、メインストーリーから派生した作品で、登場人物の別視点や別行動などを描きます。時系列は本編と並行だったり、未来だったり過去だったりさまざまです。前日譚はあくまで“本編の過去”に焦点を当てています。
3.3 「エピソードゼロ」との違い
「エピソードゼロ」も似た概念ですが、前日譚が“別作品”として語られるのに対し、エピソードゼロは作品本体の一部として導入的に語られることが多いです。
4. 前日譚の英語表現と使い方
4.1 英語での言い方
前日譚は英語で **prequel(プリクエル)** といいます。「pre-(前の)」と「sequel(続編)」を組み合わせた造語です。
4.2 英語例文
- This movie is a prequel to the original series. (この映画はオリジナルシリーズの前日譚です)
5. 有名な前日譚の事例
5.1 映画
- 『スター・ウォーズ エピソード1〜3』:旧三部作(エピソード4〜6)の前日譚として制作され、ダース・ベイダーの誕生を描く。 - 『バットマン・ビギンズ』:バットマンの誕生とその背景を描く。
5.2 小説・アニメ
- 『進撃の巨人 Before the Fall』:本編よりも遥か以前の時代を描くスピンオフ兼前日譚。 - 『Fate/Zero』:『Fate/stay night』の前日譚として、聖杯戦争の前回大会を描く。
5.3 ゲーム
- 『キングダム ハーツ バース バイ スリープ』:シリーズの核心に迫る前日譚。 - 『メタルギアソリッド3』:シリーズの原点を描いた過去編。
6. 前日譚が果たす役割
6.1 キャラクターの深堀り
前日譚では、本編では描かれなかったキャラクターの過去や動機が明かされることが多く、ファンにとっては貴重な情報源となります。
6.2 世界観の補完
本編だけでは説明されなかった歴史や背景、勢力の起源などが前日譚で明らかにされ、物語の厚みが増します。
6.3 感情移入を高める
前日譚を知っていることで、本編における登場人物の選択やセリフがより深く理解でき、感情移入が強まります。
7. 前日譚の制作上の注意点
7.1 矛盾が生じやすい
前日譚は本編より後に制作されることが多いため、設定や人物描写に矛盾が出る危険性があります。設定の整合性は非常に重要です。
7.2 ネタバレになりやすい
前日譚で結末がわかってしまうと、本編のドキドキ感やサスペンス性が失われる可能性があります。そのため、描写のバランスが求められます。
8. 前日譚に関連する日本語の類語と対義語
8.1 類語
- 序章(じょしょう) - 起源譚(きげんたん) - スピンオフ(場合によっては類語に近い)
8.2 対義語
- 続編(ぞくへん) - 後日譚(ごじつたん)
9. 前日譚がファンにもたらす影響
9.1 新規ファン層の獲得
前日譚は、本編を知らない人にも入門的な作品として提供できるため、新たなファン層の取り込みに役立ちます。
9.2 作品世界の拡張
前日譚によって、物語の“前後”が描かれ、シリーズ作品の全体像が立体的になります。
9.3 考察文化との相性
伏線の回収や歴史の裏側が描かれる前日譚は、ファンによる考察や議論を盛り上げるきっかけにもなります。
10. まとめ
「前日譚」は、物語の本編の前にあった出来事を描いた作品であり、登場人物や世界観の深堀りに大きく貢献します。英語では「prequel」と表され、映画やアニメ、小説などさまざまな分野で重要な役割を果たしています。物語をより豊かに楽しむためにも、「前日譚」という概念をしっかりと理解しておくことが大切です。