ビジネスシーンや日常のやり取りで、相手に何かをお願いするときや事情を説明するときに欠かせないのが「ご了承」という表現です。そのうえで「ご了承いただきありがとうございます」というフレーズは、相手の理解や協力に感謝する大切な言葉となります。しかし、便利な一方で使い方を誤ると、かえって不快な印象を与えることも。本記事では、「ご了承いただきありがとうございます」の正しい意味や使い方、類似表現との違いを詳しく解説していきます。円滑なコミュニケーションをめざす方は、ぜひチェックしてみてください。

1. 「ご了承いただきありがとうございます」とは

「ご了承」は「事情を理解して受け入れる」という意味を持つ言葉で、「いただき」という丁寧表現を挟んだうえで、「ありがとうございます」で感謝を示しています。つまり「ご了承いただきありがとうございます」は、**相手がこちらの事情や要望を理解し、受け入れてくれたことに対する感謝**の気持ちを伝えるフレーズです。

1-1. 「ご了承」の基本的な意味

「了承」や「ご了承」は、ビジネスメールなどでしばしば登場する言い回しです。
- 「了承する」= 相手の意見・状況・申し出を納得して受け止める、許容する
- 「ご了承」= 上記を相手に求める、またはそれをしてもらうことに対する敬意を込めた表現

ここに「いただく(いただきます)」という表現を加え、「相手に許容してもらうことへの敬意」を加味したうえで、「ありがとうございます」で感謝を述べる構造になっています。

1-2. 「ご了承いただきありがとうございます」の役割

このフレーズは「(こちらの事情や条件を)理解して受け入れてもらえたこと」に対して、**丁寧に御礼**を伝える場合に使われます。例えば、不具合報告やクレーム対応、急な日程変更の連絡などで相手に負担や不便をかける場面で、「ご迷惑をおかけしますがご理解ください」と依頼し、その後「理解・了承してくれたこと」にお礼を伝える流れが挙げられます。

2. シーン別で見る「ご了承いただきありがとうございます」の使い方

同じ「ご了承いただきありがとうございます」でも、ビジネスシーンや日常シーン、メールなのか口頭なのかによって微妙に伝え方や注意点が変わってきます。ここでは代表的なシーンに分けて解説します。

2-1. ビジネスメールでの使用例

ビジネスメールでは、相手に何かしらの理解や受け入れを求め、了承してもらった後にお礼を伝えるケースが多々あります。

例文
――――――――――――――――
件名:【納期変更のお願い】納期延期に関するご確認
〇〇株式会社 △△様

いつも大変お世話になっております。□□株式会社の▲▲です。

先日ご相談いたしました納期延期の件につきまして、このたびの事情をご了承いただきありがとうございます。お忙しい中、納期の再調整をご快諾いただき、大変助かりました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

――――――――――――――――

このように、相手の理解や受け入れを確認した後、「何を了承してもらったのか」「そのおかげでこちらはどう助かるのか」などを具体的に添えると、より誠意が伝わりやすくなります。

2-2. 日常業務・社内コミュニケーションでの使用例

社内のやり取りであっても、急な依頼やトラブル対応など、相手に迷惑をかけるような場面では、同様に「ご了承いただきありがとうございます」を使うことがあります。ただし、社外ほどかしこまった表現が必要ない場合は、もう少しカジュアルな言い回しにすることも可能です。

例文
――――――――――――――――
〇〇さん、先ほどお伝えしました通り、プロジェクトの進捗が遅れておりまして、スケジュールを変更させていただきました。ご面倒をおかけいたしますが、事情をご理解・ご了承いただきありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
――――――――――――――――

「ご面倒をおかけいたしますが…」とセットにすると、相手への配慮を示しやすくなります。

2-3. 口頭でのやり取り

口頭で「ご了承いただきありがとうございます」という表現を使う際は、やや改まった印象を与えやすいです。ただ、ビジネスの場なら問題ありません。相手との距離や状況を踏まえて、次のような表現に変えることも考えられます。

- 「ご理解いただきありがとうございます。」
- 「承知くださりありがとうございます。」
- 「快くお引き受けくださりありがとうございます。」

場面に合った表現に言い換えるとスムーズなコミュニケーションが期待できます。

3. 「ご了承いただきありがとうございます」の類似表現

「ご了承いただきありがとうございます」に近い表現を上手に使い分けることで、文章や会話にバリエーションを持たせられます。ここではいくつかの類似フレーズを見ていきましょう。

3-1. 「ご理解いただきありがとうございます」

「ご了承」の代わりに「ご理解」という表現を用いるケースは多いです。ニュアンスとしてはほぼ同じですが、「理解する」という行為をクローズアップしている点が異なります。「ご了承」は「納得して受け入れる」という強めのイメージを与えることもあるため、もう少し柔らかい印象を与えたい場合には「ご理解いただきありがとうございます」を使用すると良いでしょう。

3-2. 「ご協力いただきありがとうございます」

相手が単に理解しただけでなく、何か協力的な対応をしてくれた場合は、「ご協力いただきありがとうございます」のほうがより的確です。たとえば、資料の準備をお願いしたり、作業を分担してもらったりした場面では、こちらの表現のほうが感謝の意が明確に伝わります。

3-3. 「ご容赦いただきありがとうございます」

「容赦」は「許しを与える」「大目に見る」といった意味を持ちます。相手に対して迷惑をかけてしまう場合や、不備などを許してもらう必要がある場面で使われます。たとえば、**不備の連絡をした後に「ご容赦いただきありがとうございます」と伝えることで、「今回の過失を許してもらう」ニュアンスを込めることができる**でしょう。ただし、やや強い謝罪や恐縮の要素を含むので、使用場面は慎重に選ぶ必要があります。

4. 「ご了承いただきありがとうございます」を使う際の注意点

丁寧な言葉でありながら、使いどころを誤ると相手に不快感を与えたり、誤解を生んだりする可能性もあります。以下の点を意識することで、適切に使うことができるでしょう。

4-1. 「了承」「了承済み」を強要しない

「ご了承いただきありがとうございます」というフレーズは、相手がすでに合意してくれた・承諾してくれた前提で使うものです。もし相手がまだ納得していない段階でこの言い回しを使うと、「こちらの都合を押しつけている」と捉えられかねません。実際に了承が得られているかどうかを確認してから、感謝を述べるのが鉄則です。

4-2. 重ね言葉に注意

日本語には、二重敬語や重ね言葉の使い方が難しい側面があります。例えば「ご了承いただく」自体が敬語表現なのに、さらに過剰に敬語を重ねると不自然になってしまうこともあります。
- NG例:「ご了承いただきましてください」→ 誤用
- OK例:「ご了承いただきまして、ありがとうございます」→ 自然

正しい敬語の形になっているか、落ち着いてチェックしましょう。

4-3. 相手との関係や文脈を踏まえる

丁寧すぎる表現は場合によっては距離感を生み出すこともあります。社内の気軽なやりとりや、親しい取引先との会話では、もう少し砕けた言い回しに変更しても問題ないでしょう。
- 「ありがとうね、理解してもらえて助かった!」といったフランクな言葉が適切な場合もあります。
- 一方で、初対面の相手や重要なビジネス相手には、しっかり敬語で伝えるのが基本です。

5. ビジネス文書での活用例

ビジネス文書(メールやお知らせ文、案内状など)で「ご了承いただきありがとうございます」を使う機会は多いでしょう。具体的な文例をいくつか挙げ、全体の流れとあわせてチェックしてみてください。

5-1. メールでの文例

件名:

【会議日程再調整のお願い】ご対応の御礼
――――――――――――――――――――
〇〇株式会社 △△様

いつもお世話になっております。□□株式会社の▲▲です。

先ほどご案内いたしました通り、当初予定していた会議日程を急遽変更させていただきました。お忙しい中、スケジュール変更をご承知いただきありがとうございます。おかげさまで、プロジェクトを円滑に進めることができそうです。

今後ともご迷惑をおかけする場合もあるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。

――――――――――――――――――――

5-2. お知らせ文での文例(社内通知)

――――――――――――――――――――
各位

いつも業務にご尽力いただき、ありがとうございます。

社内ネットワークのメンテナンス作業に伴い、○月○日(○)の深夜帯にインターネット接続およびメール送受信が一時的に停止する予定です。皆さまにはご不便をおかけいたしますが、作業日程および内容につきましてご了承いただきありがとうございます。

ご質問・ご不明点などございましたら、システム管理部(内線XXXXX)までお問い合わせください。

――――――――――――――――――――

こちらの例では、相手がすでに合意している前提というよりも「不便をかけることを理解してほしい」意味合いで使われています。厳密には「ご理解いただきありがとうございます」でも良い場面ですが、「了承」のニュアンスを含ませたい場合には、このような表現が使われることもあります。

6. まとめ

「ご了承いただきありがとうございます」は、相手がこちらの都合や要望を受け入れ、理解してくれたことへの感謝を表すフレーズです。相手に迷惑をかけたり、負担を強いる可能性がある場面で、その合意を得られた際に使うことで、丁寧に感謝の意を伝えられます。

1. 基本的な意味と役割
 - 「ご了承」は「納得して受け入れる」ことを指す
 - 「いただき」「ありがとうございます」を組み合わせ、丁寧な感謝を表現

2. 使うシーンや例文
 - ビジネスメール、社内コミュニケーション、口頭での対応など
 - 相手がすでに合意している前提で使う

3. 類似表現
 - 「ご理解いただきありがとうございます」:よりソフトな印象
 - 「ご協力いただきありがとうございます」:具体的な協力に対して感謝
 - 「ご容赦いただきありがとうございます」:迷惑や不備を許してもらう場合

4. 注意点
 - 相手がまだ了承していない段階で使うとトラブルのもと
 - 二重敬語や表現の重複に気をつける
 - 相手との関係性や文脈に応じた言葉遣いを選ぶ

5. ビジネス文書での活用
 - メールやお知らせ文などで、具体的な事例とともに使う
 - 何に対して了承・理解を得たのかを明示すると好印象

以上のポイントを押さえておけば、「ご了承いただきありがとうございます」を正しく使え、円滑なコミュニケーションが期待できるはずです。相手とのやりとりの中で、ぜひ活用してみてください。

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