「毀損(きそん)」という言葉は、法律文書やビジネスレポートなどで見かけることが多い表現です。しかし、その正確な意味や使い方、似た言葉との違いについては曖昧なまま使っている人も少なくありません。この記事では、「毀損」の定義から使用例、破損や損害との違い、さらに実務での注意点までを丁寧に解説します。

1. 毀損とは?基本の意味と読み方

1.1 読み方は「きそん」

「毀損」は、「きそん」と読みます。常用漢字外の「毀(こぼつ)」が使われているため、ビジネスの現場では「破損」や「損傷」と言い換えられることもありますが、法律用語などでは「毀損」が用いられることが多いです。

1.2 意味の定義

毀損とは、物理的・非物理的に「壊す」「損なう」「価値を下げる」ことを指します。
- 物体に対して → 壊す、傷つける
- 評判や権利に対して → 名誉を傷つける、価値を損なう

つまり、毀損は「目に見える損傷」に限らず、「目に見えない価値の低下」も含んだ幅広い概念です。

2. 毀損の使い方:文脈別の具体例

2.1 物理的な毀損の例

- 火災により建物の一部が毀損した
- 商品のパッケージが毀損していたため返品された
- 輸送中の機器が毀損した場合、補償の対象になる

これらは「破損」や「損傷」と置き換え可能なケースです。

2.2 非物理的な毀損の例

- 虚偽報道により企業の名誉が毀損された
- SNSでの誹謗中傷が個人の信用を毀損する可能性がある
- プライバシーの毀損は法的責任を伴うことがある

このように、毀損は精神的・社会的価値を損なう意味でも使用されます。

3. 毀損とよく似た言葉との違い

3.1 「破損」との違い

破損は、物理的に「壊れたり割れたりすること」に限定されます。
- 破損 → 物体のダメージ
- 毀損 → 物体だけでなく、価値・名誉・信用の損失も含む

3.2 「損害」との違い

損害は「経済的・法律的な不利益」を指します。毀損が原因となって損害が発生するという関係性です。
例:製品の毀損 → 顧客離れ → 損害発生

3.3 「損傷」との違い

損傷は「物理的・生理的な損なわれた状態」を示す言葉で、毀損と同様に物に対して使うことが多いですが、毀損のほうが法律的・フォーマルな響きを持ちます。

4. 法律用語としての毀損

4.1 名誉毀損(めいよきそん)

名誉毀損とは、虚偽または事実に基づいて他人の社会的評価を低下させる行為です。刑法230条に規定されており、民事上の損害賠償請求も可能です。

4.2 器物損壊・毀損

「器物損壊罪」は物を壊すことで成立しますが、法文上には「毀損」という言葉も用いられています。例:ガラスを割る、他人の車に傷をつけるなど。

4.3 著作権の毀損

コンテンツの不正編集や無断転載は、著作者の人格権を毀損する行為と見なされることがあります。

5. ビジネスで「毀損」が使われる場面

5.1 ブランドイメージの毀損

- 炎上や不祥事によって信頼が損なわれる
- 広告表現の誤りによる評判毀損
- 提携先の問題が波及し、企業価値が毀損するケースも

5.2 情報セキュリティとデータ毀損

- サーバ障害でデータが毀損(破損)する
- システムエラーによる業務情報の毀損
- ハードディスクの物理的毀損と論理的毀損

5.3 財務諸表や資産の毀損

- 減損会計における資産価値の毀損
- 投資先の不良債権化による金融資産の毀損
- 為替変動により資産評価が毀損される例も

6. 毀損を防ぐためにできること

6.1 情報の正確な管理

名誉や信用の毀損を避けるには、発信する情報の信頼性と公開範囲の精査が欠かせません。

6.2 モノの管理と保守

物理的な毀損は予防が可能です。定期点検や適切な保管、輸送方法の最適化により、事故や劣化を最小限に抑えることができます。

6.3 社内リスクマネジメント

内部通報制度やクレーム対応の整備により、不祥事による評判毀損のリスクを減らすことができます。

7. まとめ

「毀損(きそん)」とは、物理的・非物理的に壊す、または価値を損なうことを意味する表現です。破損や損害、損傷といった言葉とは使い分けが必要で、特に法律やビジネスでは注意が求められます。
物理的な損壊だけでなく、名誉・信用・ブランドといった無形資産への影響も含まれる点が特徴です。社会的信頼やデータ、財産などを守るうえでも、「毀損」という概念を正しく理解しておくことは、あらゆる立場の人にとって重要だといえるでしょう。

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