ビジネスメールや会話の中でよく使われる「同行させていただく」という表現。しかし、ややかしこまりすぎたり、同じ表現が繰り返されることで不自然な印象を与えることもあります。この記事では、「同行させていただく」の適切な言い換え表現をシーン別に紹介し、ビジネスでより自然で丁寧な言葉遣いを実現するためのポイントを解説します。
1. 「同行させていただく」の意味と使い方
1-1. 基本的な意味と敬語の構造
「同行させていただく」は、誰かに付き添って行動を共にすることを、謙譲語と丁寧語で表現した言い回しです。
「同行する」:一緒に行動すること
「させていただく」:相手の許可や厚意によって、自分がその行動をするというへりくだった言い方
つまり、「同行させていただく」は、「あなたの許可を得て、一緒に行動させてもらいます」という意味合いを持ちます。
1-2. ビジネスシーンでの使用例
以下は、よく見られる使用例です:
「明日の商談に同行させていただければと存じます」
「〇〇部長の出張に同行させていただきます」
この表現自体に間違いはありませんが、頻用しすぎると堅苦しく、相手によっては過剰な敬語と受け取られる可能性もあります。
2. 言い換えが必要な場面とは?
2-1. 過剰な謙譲表現による違和感
「同行させていただく」は、謙譲語+受け身表現のため、非常に丁寧ですが、シンプルなやり取りにはやや仰々しく聞こえることがあります。相手との距離感や文脈によって、より柔らかい表現が求められることもあります。
2-2. 同じ表現の繰り返しを避けたいとき
報告書やメールなどで何度も「同行させていただく」を使うと、読みにくくなりがちです。同義の言葉を使い分けることで、文章がスムーズに読めるようになります。
3. 「同行させていただく」のビジネスで使える言い換え表現
3-1. 「ご一緒させていただく」
ややカジュアルな印象になりますが、会話や少し柔らかい文面には最適です。
例文:
「本日は〇〇様にご一緒させていただきます」
「営業訪問にご一緒させていただければ幸いです」
3-2. 「同行いたします」
「させていただく」よりも簡潔でビジネスらしい言い回しです。やや上級者向けの敬語として、スマートに使うことができます。
例文:
「〇〇の会議には私が同行いたします」
「明日は営業担当者と同行いたします」
3-3. 「同席いたします」
訪問先や会議などに「同じ場にいる」ことを表現したいときに有効です。同行よりも場の共有に重きがある表現です。
例文:
「本日の打ち合わせには、私も同席いたします」
「会議には課長とともに同席いたします」
3-4. 「同伴いたします」
ややフォーマルですが、式典や会食など、丁寧な場にふさわしい表現です。
例文:
「〇〇様の視察には私が同伴いたします」
「上司の会食に同伴させていただく予定です」
3-5. 「同行の予定です」
予定・事実としての表現をシンプルに伝えたいときに便利です。報告やスケジュールの説明に適しています。
例文:
「明日は〇〇の営業に同行の予定です」
「社長の出張に同行の予定となっております」
4. シーン別 言い換えの活用例
4-1. 上司に報告するメール文面
堅めで丁寧な表現を心がける必要がありますが、繰り返しを避けることで読みやすくなります。
悪い例(繰り返し):
明日の訪問には同行させていただきたく存じます。午後の打ち合わせにも同行させていただければと存じます。
良い例(言い換えあり):
明日の訪問には同行させていただきたく存じます。午後の打ち合わせには同席予定です。
4-2. 社外向けの案内や連絡
少し柔らかく、かつ丁寧な印象を保つ必要があります。「ご一緒させていただく」が自然です。
例文:
当日は〇〇部長にご一緒させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
4-3. 会議・出張報告書や社内報告
フォーマルかつ簡潔にまとめるには、「同行いたします」や「同伴いたします」が向いています。
例文:
本日の会議には営業部の田中課長が同席いたしました。
来週の出張には私が同行いたします。
5. 「同行させていただく」を使う際の注意点
5-1. 相手の許可を暗に含む表現であること
「させていただく」は、相手の厚意や許可が前提となる表現です。そのため、自分主体の行動や業務命令に対して使うと違和感を与える可能性があります。
NG例:
明日の会議に同行させていただきます(←自分の業務として当然の行動なら不要に丁寧すぎ)
5-2. 敬語のバランスに注意
「同行させていただく」は十分丁寧な敬語表現ですが、それ以上にへりくだると過剰になり、不自然です。謙譲語と丁寧語を適切に使い分けましょう。
6. まとめ:言い換えで伝わる印象を調整しよう
「同行させていただく」は丁寧で正しい日本語表現ですが、言葉の重複や過剰な敬語を避けるために、状況や相手に応じた言い換えが求められます。
「同行いたします」「ご一緒させていただく」「同席いたします」などの表現を適切に使い分けることで、より自然で伝わりやすいビジネスコミュニケーションを実現できます。言葉遣いひとつで相手に与える印象は大きく変わります。TPOに応じて、的確な表現を選べるよう心がけましょう。