ニュースや法律関係の記事で「訴えを棄却する」「上告が棄却された」といった表現を目にすることがあります。
一見「却下」と似ていますが、実は法的には明確な違いがあります。
この記事では、「棄却(ききゃく)」の意味、使い方、そして「却下」との違いをわかりやすく解説します。

1. 「棄却」とは?

「棄却(ききゃく)」とは、申し立てや訴えを認めずに退けることを意味する言葉です。
特に、裁判や行政の場面でよく使われる法的用語です。

棄却(ききゃく):訴えや上告などを理由がないとして退けること。
(出典:広辞苑)

  • 例文1:裁判所は原告の訴えを棄却した。
  • 例文2:上告は理由がないとして棄却された。
  • 例文3:異議申し立てが棄却された。

つまり、「棄却」は、内容を審理したうえで正当な理由がないと判断し、請求を退けることを指します。

2. 読み方と漢字の意味

  • 読み方:ききゃく
  • 漢字構成:「棄」=すてる、「却」=しりぞける

「棄却」は、文字通り「すててしりぞける」ことを意味します。
すなわち、相手の主張を検討したうえで「採用しない」「退ける」という判断を示す表現です。

3. 「棄却」と「却下」の違い

「棄却」と「却下」はよく似ていますが、使われる場面と意味に違いがあります。

用語 意味 使われる場面
棄却 内容を審理した結果、理由がないとして退ける 裁判の判決・決定・上告など
却下 形式的な不備などにより、そもそも審理しないで退ける 訴えの形式要件を満たさない場合など

簡単に言えば、

  • 棄却=内容を審理したうえで退ける
  • 却下=内容を審理せずに退ける

という違いがあります。

具体例で比較

  • 訴えを棄却する:裁判で内容を検討した結果、主張が認められない。
  • 訴えを却下する:書類不備や要件不足で、そもそも審理対象にならない。

たとえば、「被告の責任を争う裁判で、原告の主張が根拠に欠けると判断された場合」は棄却、
「訴状の提出期限を過ぎていたため受け付けられなかった場合」は却下、という違いです。

4. 法律用語としての「棄却」

「棄却」は法律文書や判決文で頻繁に使われる用語です。
主に次のような文脈で登場します。

  • 請求棄却:原告の請求を退ける。
  • 上告棄却:上告(判決の不服申し立て)を退ける。
  • 異議棄却:異議申し立てを認めない。

裁判所が「棄却」という言葉を使う場合、
それは形式的な問題ではなく、実質的な審理を経ての判断であることを意味します。

判決文の例

原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

このように書かれた場合、「裁判所が訴えの内容を検討した結果、理由がないと判断した」ということです。

5. 「棄却」を使った一般的な使い方

法律用語としての使用が中心ですが、ビジネスや日常表現でも「退ける」「採用しない」という意味で使われることがあります。

  • その提案は社内で棄却された。(=検討の結果、採用されなかった)
  • 新しい制度案が委員会で棄却された。

ただし、日常会話ではやや硬いため、「却下された」「採用されなかった」と言い換える方が自然です。

6. 「棄却」に似た言葉との違い

言葉 意味 ニュアンスの違い
却下 形式上の理由で受け入れない 審理を行わない段階の判断
否決 提案や案を認めない 議会や会議などで使う
拒否 受け入れを断る 個人的・行政的な場面でも使用

7. 英語での「棄却」表現

英語表現 意味・用法 例文
dismiss (訴えなどを)棄却する、退ける The court dismissed the plaintiff’s claim.(裁判所は原告の訴えを棄却した。)
reject 提案・申請などを拒否する The proposal was rejected by the committee.(提案は委員会で棄却された。)
deny (請求・要求を)認めない The appeal was denied by the court.(上告は棄却された。)

8. まとめ

「棄却(ききゃく)」とは、申し立てや訴えを内容を検討したうえで退けることを意味する言葉です。
形式的に受け付けない「却下」とは異なり、実質的な審理を経たうえでの判断を示します。
主に法律用語として使われますが、「提案を棄却する」など一般的な文脈でも「採用しない」「認めない」という意味で応用できます。

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