「候」という言葉は、手紙の結びや古典的文章でよく見かけますが、現代の日本語ではあまり日常的には使われません。しかし正しい意味や由来を理解すると、文書表現や歴史的文章の理解に役立ちます。本記事では「候」の意味、歴史的背景、使い方や例文まで詳しく解説します。
1. 候の基本的な意味
1-1. 言葉の定義
「候(そうろう/こうろう)」とは、古典日本語における丁寧表現で、「~でございます」「~します」という意味を持つ言葉です。現代語の「です」「ます」に相当します。
1-2. 語源と成り立ち
「候」は、元々中国の古典から日本に取り入れられた言葉で、丁寧さや敬意を示す補助動詞として使われました。「そろふ(揃う)」や「さぶらふ(候ふ)」に由来し、丁寧に仕えるという意味合いが強いです。
2. 候が使われる場面
2-1. 手紙や書簡での使用
古典的な手紙の文末に「拝啓、時下ますますご清栄のことと存じ候」と書かれることがあります。この場合、「存じ候」は「存じます」の丁寧表現です。
2-2. 公文書や儀礼的文章
江戸時代の公文書や格式ある文章では、地位の高い相手に対する敬意を表すために「候」が多用されました。
2-3. 現代の文学やドラマ
歴史小説や時代劇などで、武士や公家が使用する言葉として登場します。「拝借いたし候」「申し上げ候」といった表現で使われます。
3. 候の読み方
3-1. 「そうろう」と読む場合
丁寧語として用いる場合、「そうろう」と読みます。例:存じ候(ぞんじそうろう)=存じます
3-2. 「こうろう」と読む場合
儀礼文や格式の高い文章で「こうろう」と読む場合もありますが、現代ではほとんど「そうろう」が一般的です。
3-3. 読み方によるニュアンスの違い
「そうろう」は口語的・丁寧語的ニュアンス、「こうろう」は格式・儀礼的ニュアンスが強いと考えられます。
4. 候の類義語と反対語
4-1. 類義語
- です・ます:現代日本語における丁寧語 - 仕る/仕え候:古典文書での補助動詞的表現
4-2. 反対語
- 無礼な表現:敬意を欠く口語表現は反対のニュアンスになります
5. 候を使った例文
5-1. 手紙での例
- 拝啓、春暖の候、皆様におかれましてはご健勝のことと存じ候。 (現代語訳:拝啓、春の陽気の折、皆様お元気でいらっしゃることと存じます。)
5-2. 口語的使用例(時代劇風)
- 「お主の申し出、承知仕り候。」 (現代語訳:あなたの申し出、承知いたしました。)
5-3. 文書や儀礼での使用例
- 「恐れ入りますが、明日までにご返答くださいますようお願い申し上げ候。」
6. 候の歴史的背景
6-1. 平安・鎌倉時代
平安時代から鎌倉時代にかけて、貴族や武士の間で丁寧な補助動詞として使われました。書き言葉として広く定着しています。
6-2. 江戸時代の使用
江戸時代になると、商人や武士の間で手紙文や公文書に頻繁に用いられました。「~候」と文末に置くことで敬語の役割を果たします。
6-3. 現代での使用
現在では、歴史的文章、文学作品、時代劇、儀礼的手紙など限られた場面でのみ使用されます。
7. 候を正しく使うポイント
7-1. 文脈を選ぶ
現代の日常会話では使わず、手紙や文学作品、歴史的文章で使用することが適切です。
7-2. 文末に置く
候は基本的に文末で用いることで丁寧さや敬意を示します。
7-3. 丁寧語と組み合わせる
「存じ候」「申し上げ候」のように、動詞と組み合わせることでより丁寧な表現が可能です。
8. まとめ
「候」とは、古典日本語における丁寧語で、「~です」「~ます」に相当する表現です。手紙、文学作品、歴史的文書でよく使われ、現代語とは異なる格式や敬意を示す役割を持ちます。意味や使い方、読み方を理解することで、古典文章の解読や時代劇の理解に役立ちます。