「御座(ござ)」という言葉は、日常会話でもよく耳にします。「ありがとうございます」「~でございます」などの丁寧な言い回しの中で使われていますが、その本来の意味や語源を知る人は意外と少ないでしょう。本記事では、「御座」という言葉の意味、歴史的な使い方、そして現代日本語における使い方まで、わかりやすく解説します。

1. 御座とは何か

1-1. 「御座」の基本的な意味

「御座(ござ)」とは、もともと「ある」「いる」という意味を持つ言葉です。古語の「御座す(おはす)」や「御座なり(おはすなり)」などが語源で、尊敬語として使われてきました。現代では「ございます」という形で、丁寧な言い回しの一部として使われています。

1-2. 読み方と発音

「御座」は「ござ」と読みます。「ございます」「~でございます」などの形で使われるのが一般的です。発音は「ゴザ(平板)」で、柔らかく丁寧な響きを持つのが特徴です。

1-3. 現代での意味

現代の日本語では、「御座」は単独で使うことは少なく、「ございます」という定型表現の一部として使われています。「ございます」は「あります」「います」の丁寧な言い換え表現として、ビジネスや接客の場で広く使われています。

2. 「御座」の語源と歴史

2-1. 古語「御座す」からの派生

「御座」の語源は、古語の「御座す(おはす)」にあります。「御」は尊敬を示す接頭語、「座す(ざす)」は「座る」という意味です。つまり「御座す」とは「尊い方が座る」「おられる」という意味であり、天皇や貴人に対して使われる表現でした。

2-2. 宮中や寺院での用法

中世以降、「御座」という言葉は実際に「高貴な方の座る場所」という意味でも使われました。たとえば、天皇の玉座や将軍の座席を「御座」と呼んだのです。これが後に転じて、「おられる場所」「存在」を指す言葉となりました。

2-3. 「ございます」への変化

時代とともに「御座す」が変化し、室町時代には「ござる」という形で一般化しました。江戸時代には「ございます」が丁寧な言い回しとして定着し、現代の敬語表現に受け継がれています。

3. 「御座」の使い方と例文

3-1. 丁寧な表現「ございます」

「ございます」は、「あります」「います」を丁寧にした言葉です。主にビジネスや接客、公式な場面で用いられます。

例文:
・こちらが本日の資料でございます。
・当店は朝9時から営業しております。
・本日は誠にありがとうございます。

このように、「ございます」は敬語表現として日常的に使われ、話し手の礼儀正しさを表します。

3-2. 「~でございます」の使い方

「です」の丁寧な言い換えが「でございます」です。格式の高い場面やフォーマルな文章で使われます。

例文:
・私、株式会社〇〇の山田でございます。
・ただいまお伺いした内容は以上でございます。
・本日はお足元の悪い中、お越しいただきありがとうございます。

「でございます」は、「です」よりも柔らかく上品な印象を与えるため、接客業では特に多用されます。

3-3. 書き言葉と話し言葉の違い

「ございます」は話し言葉・書き言葉のどちらにも使われますが、話すときには語尾を少し和らげて発音します。書き言葉ではそのまま「ございます」と記すのが一般的です。

4. 「御座」を使った表現

4-1. 「おはようございます」

「おはようございます」は、もともと「お早うございます」と書かれます。「早くお越しになりましたね」という意味で、相手への敬意を込めたあいさつです。「ございます」が入ることで、より丁寧な表現になっています。

4-2. 「ありがとうございます」

「ありがとうございます」も同様に、「有り難い(感謝すべき)」+「ございます」が合わさった言葉です。相手への敬意と感謝を丁寧に伝える日本語の代表的な表現です。

4-3. 「恐れ入りますが」「申し訳ございません」

謝罪や依頼の際にも「ございます」は欠かせません。 ・恐れ入りますが、もう一度お名前をお願いできますか。 ・大変申し訳ございませんでした。 このように、相手に対して柔らかく誠実な印象を与える表現として使われます。

5. 「御座」と「御座いません」の違い

5-1. 否定形「ございません」

「ございます」の否定形が「ございません」です。「ありません」をより丁寧に表す言葉で、ビジネスや公式文書などでよく使われます。 例文: ・在庫は現在ございません。 ・そのような事実はございません。 ・特に問題はございません。

5-2. 「ありません」との違い

「ありません」は一般的でフラットな表現、「ございません」はより丁寧で格式のある表現です。目上の人やお客様に対しては「ございません」を使うのが適切です。

6. 「御座」と畳の「ござ」の違い

6-1. 同音異義語としての「ござ」

「御座」と同じ発音で「茣蓙(ござ)」という言葉があります。これは「い草」などで編んだ敷物のことを指します。両者はまったく別の意味を持つので注意が必要です。

6-2. 使われる文脈の違い

・「御座(ございます)」:敬語・存在を表す言葉 ・「茣蓙(ござ)」:敷物・畳の一種

例文で比較すると次のようになります。
・ここにお座布団と茣蓙がございます。
・夏は茣蓙を敷くと涼しく感じます。

同じ「ござ」でも、使う漢字と文脈で意味が大きく異なります。

7. 「御座」に関する豆知識

7-1. 「御座船」という言葉

「御座」は、かつて貴人の座る場所を意味していたことから、「御座船(ござぶね)」という言葉も生まれました。これは将軍や大名が乗る特別な船を指し、格式の高さを象徴しています。

7-2. 商業用語での使用

江戸時代の商人たちは、客に対して「~でございます」と言うことで、丁寧で誠実な印象を与えていました。この習慣が現代の接客業にも受け継がれ、「ございます」は日本語のおもてなし表現の基本になっています。

8. 現代における「御座」の重要性

8-1. 敬語文化を支える表現

「ございます」は、単なる言葉ではなく、日本人の敬意や謙譲の心を表す文化的な要素を持っています。相手への思いやりや礼節を伝えるための言葉として、今も欠かせない存在です。

8-2. 海外との比較

英語の “there is” や “there are” に近い意味を持ちますが、「ございます」には相手を立てるニュアンスが含まれます。直訳できない日本語特有の表現として、ビジネスシーンでも重宝されています。

8-3. 正しい使い方を身につける意義

正しく「ございます」を使うことで、言葉遣いに品格が生まれます。特に接客業や営業職では、「ございます」と「ございますでしょうか」を自然に使い分けられるかが印象を左右します。

9. まとめ

「御座(ござ)」は、もともと「おられる」「存在する」という意味を持つ古語に由来し、現代では「ございます」という丁寧な表現として定着しています。歴史的には貴人の座所を意味していましたが、時代を経て敬語の中心的な言葉になりました。 「ございます」や「でございます」は、日本語の丁寧さを象徴する表現です。意味を理解して使うことで、より洗練された日本語コミュニケーションが実現できるでしょう。

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