「耐糖能」という言葉は、健康診断や内科診療の際によく耳にする専門用語です。私たちの体が糖をどの程度うまく処理できるかを示す重要な指標で、糖尿病や生活習慣病のリスクを判断するために用いられます。耐糖能を理解することは、日常生活での食習慣や運動習慣の改善、さらには将来の健康管理にも役立ちます。本記事では「耐糖能」の基本的な意味から測定方法、基準値、異常がもたらすリスク、改善方法まで詳しく解説します。初心者でもわかりやすいように、専門用語は丁寧に説明しています。

1. 「耐糖能」の基本的な意味

1-1. 定義

耐糖能(たいとうのう、Glucose Tolerance)とは、体が摂取したブドウ糖をどの程度効率的に処理できるかを示す能力のことです。食事や飲料から糖を摂取した際に血糖値がどのように変化するかを観察することで、インスリン分泌や糖代謝の状態を評価します。
糖を効率的に処理できる体は、血糖値が急激に上がらず、安定して維持されます。一方、耐糖能が低下している場合、血糖値が高くなりやすく、将来的に糖尿病や合併症のリスクが高まります。

1-2. 日常生活での重要性

耐糖能は、健康診断や医療現場での糖尿病リスク評価に欠かせない指標です。耐糖能が低下していることは、まだ自覚症状がなくても体内で糖代謝異常が進んでいる可能性を示しています。早期に発見し、生活習慣の改善や食事の見直しを行うことが健康維持につながります。

2. 耐糖能の測定方法

耐糖能を調べる方法には、主に血糖値測定と**ブドウ糖負荷試験(OGTT)**があります。最近ではHbA1c(ヘモグロビンA1c)も重要な指標として使用されます。

2-1. 空腹時血糖値

朝起きてから何も食べずに測定する血糖値
正常範囲:70〜99 mg/dL
100〜125 mg/dL:境界型(耐糖能異常の可能性)
126 mg/dL以上:糖尿病の可能性
空腹時血糖値は簡単に測定できるため、健康診断では最初に確認されることが多いです。

2-2. ブドウ糖負荷試験(OGTT)

空腹時に75gのブドウ糖を摂取
30分、1時間、2時間後に血糖値を測定
血糖値の上昇パターンを確認し、耐糖能の状態を評価
2時間後の血糖値を基準にすることが多く、以下のように分類されます:
140 mg/dL未満:正常
140〜199 mg/dL:耐糖能異常(境界型)
200 mg/dL以上:糖尿病

2-3. HbA1c(ヘモグロビンA1c)

HbA1cは、過去1〜2か月の平均血糖値を反映する指標です。
5.6%未満:正常
5.7〜6.4%:耐糖能異常の可能性
6.5%以上:糖尿病の診断基準

3. 耐糖能異常の段階

耐糖能の低下は段階的に進行します。

3-1. 正常耐糖能

血糖値が摂取後も正常範囲内
インスリン分泌や糖代謝が正常に機能

3-2. 境界型耐糖能(IGT)

空腹時血糖値 100〜125 mg/dL
OGTT 2時間値 140〜199 mg/dL
初期の糖代謝異常で、生活習慣改善で改善可能

3-3. 糖尿病

空腹時血糖値 126 mg/dL以上
OGTT 2時間値 200 mg/dL以上
HbA1c 6.5%以上
放置すると合併症のリスクが高まる

4. 耐糖能低下の原因

4-1. 生活習慣の影響

高カロリー・高脂質の食事
運動不足
ストレス過多
不規則な生活リズム

4-2. 体質的要因

遺伝的糖代謝異常
肥満や内臓脂肪の蓄積
インスリン抵抗性

4-3. 加齢の影響

年齢とともにインスリンの働きが低下
65歳以上では耐糖能異常の発症率が高い

5. 耐糖能異常が引き起こす健康リスク

5-1. 糖尿病

食後血糖値の慢性的な上昇
血管や神経へのダメージ
合併症:腎症、網膜症、神経障害

5-2. 心血管疾患

高血糖状態による動脈硬化
心筋梗塞、脳卒中リスク増加

5-3. その他のリスク

肥満、脂質異常症、高血圧
認知症リスク上昇
免疫力低下

6. 耐糖能を改善する方法

6-1. 食事改善

野菜や食物繊維を多く摂取
糖質の摂取を適度に調整
食事回数を分け、血糖値の急上昇を抑制

6-2. 運動習慣

有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)
筋力トレーニングでインスリン感受性向上
週に150分以上の運動が推奨

6-3. 生活習慣の改善

良質な睡眠
ストレス管理(趣味や瞑想)
禁煙・節酒

6-4. 定期検診

空腹時血糖値・OGTT・HbA1cの定期チェック
境界型の場合は早期に生活改善

7. まとめ

耐糖能とは、体が糖をどれだけ効率よく処理できるかの能力を示す重要な指標です。正常な耐糖能は健康維持に不可欠で、低下すると糖尿病や心血管疾患などのリスクが高まります。血糖値測定やOGTT、HbA1cで評価可能で、食事・運動・生活習慣の改善により改善できます。早期に状態を把握し、適切に管理することが健康長寿につながります。耐糖能を理解することは、未来の自分の健康を守る第一歩です。

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