「脱兎のごとく(だっとのごとく)」という表現は、古風ながら今でも小説や会話でよく使われる慣用句です。「彼は脱兎のごとく逃げ出した」のように使われますが、具体的な意味や由来を知らずに使っている人も多いでしょう。この記事では、「脱兎のごとく」の正しい意味、語源、使い方、そして類語まで詳しく解説します。

1. 「脱兎のごとく」の意味

「脱兎のごとく」とは、非常に素早く動くさまをたとえた言葉です。特に「逃げる」「走る」「立ち去る」といった動作に対して使われ、驚くほど速く・すばしっこくという意味を持ちます。

簡単に言うと、「脱兎のごとく逃げる=ウサギが逃げ出すようにすばやく逃げる」という比喩表現です。

  • 例文1:彼はその場から脱兎のごとく走り去った。
  • 例文2:猫の姿を見て、ネズミが脱兎のごとく逃げ出した。
  • 例文3:先生に見つかると、脱兎のごとく教室を飛び出した。

2. 「脱兎のごとく」の由来

「脱兎(だっと)」という言葉は、もともと「逃げ出した兎(うさぎ)」という意味を持ちます。

ウサギは非常に敏捷で、危険を感じた瞬間に一瞬で跳ねて逃げる動物です。そのすばしっこい動きを、「逃げる」「去る」動作の速さのたとえとして用いたのが「脱兎のごとく」です。

「ごとく」は古い日本語で「〜のように」「〜のごとし」を意味する語です。したがって「脱兎のごとく」は直訳すると「逃げたウサギのように」という意味になります。

3. 文法構成

「脱兎のごとく」は漢字で書くと以下のように構成されています。

読み方 意味
脱兎 だっと 逃げ出したウサギ
比喩をつなぐ助詞
ごとく 〜のように(比喩表現)

つまり、「脱兎のごとく」は「逃げ出したウサギのように」という比喩をそのまま言葉にした表現です。

4. 「脱兎のごとく」の使い方

「脱兎のごとく」は、基本的に逃げる・立ち去る・走るといった動きを強調するときに使われます。特に、突然の行動や素早い動きを表す場面で効果的です。

4-1. 会話や文章での例

  • 彼は名前を呼ばれると、脱兎のごとくその場を去った。
  • 地震が起きた瞬間、人々は脱兎のごとく外へ飛び出した。
  • 警報が鳴るや否や、子どもたちは脱兎のごとく避難した。

4-2. 日常的な使い方

現代では少し文学的・比喩的な響きがあるため、日常会話では「一目散に」「猛スピードで」などの表現が使われることも多いですが、文章では「脱兎のごとく」はよく使われます。

例文:

  • 彼は脱兎のごとく走り去った → より口語的には「一目散に逃げた」。
  • 脱兎のごとく逃げる → 「全力で」「瞬時に」などで言い換えも可能。

5. 類語・言い換え表現

「脱兎のごとく」と似た意味を持つ表現もいくつかあります。文体や場面に応じて使い分けると自然です。

表現 意味 使用例
一目散に まっすぐに急いで逃げるさま 一目散に出口へ向かった。
疾風のように 風のようにすばやく動くさま 疾風のように走り去る。
電光石火のごとく 非常にすばやい動きや反応 電光石火のごとく避けた。
瞬時に 一瞬のうちに、すぐに 瞬時にその場を離れた。

6. 「脱兎のごとく」と対比される表現

「脱兎のごとく」はスピード感を表す表現であるため、逆の意味の表現も押さえておくと理解が深まります。

表現 意味
のろのろと 動きが遅いさま
ゆっくりと 急がず穏やかに動くさま
悠然と 落ち着いて慌てないさま

7. まとめ

「脱兎のごとく(だっとのごとく)」とは、逃げ出したウサギのように非常に素早く動くさまを表す慣用句です。
語源はウサギのすばしっこい動きにあり、「逃げる」「去る」「走る」などの動作を強調する表現として使われます。
現代では少し古風な印象もありますが、文章に使うと場面が生き生きと伝わる便利な言葉です。

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