「まがりなりにも」という表現は、日常会話や文章の中でよく耳にする言い回しです。「まがりなりにも大学を卒業した」「まがりなりにも社長を務めている」などのように、自分の立場や状況を控えめに表す際に使われます。この記事では、「まがりなりにも」の意味や使い方、語源、そして似た表現との違いを詳しく解説します。
1. 「まがりなりにも」とはどういう意味か
「まがりなりにも」とは、完全ではないが、どうにか形として成り立っていることを表す言葉である。
つまり、「十分ではないけれど、一応」「未熟ながらも」「それなりに」といった意味を持つ。
例:
- まがりなりにも大学を卒業した。
- まがりなりにも会社を経営している。
- まがりなりにも先生と呼ばれている身です。
→ 自分や物事を謙遜して述べる際に使われることが多く、控えめで柔らかい印象を与える。
2. 「まがりなりにも」の語源・成り立ち
「まがりなりにも」は、古語の「曲がる(まがる)」が語源である。
- まがり:まっすぐでない・正しくない・完全でない。
- なりにも:状態を表す助詞「なり」と副助詞「にも」の組み合わせ。
つまり「まがりなりにも」は、「曲がった形であっても」「完全ではなくとも」という意味を持つ。
昔の日本語では「曲がり形にも」「曲がりながらも」といった表現もあり、現代ではそれが縮まって「まがりなりにも」となった。
3. 「まがりなりにも」の使い方
「まがりなりにも」は、自分や自分に関係することを控えめに表現する謙譲的な言い回しとして使うのが一般的である。
他人に対して使うと、皮肉や軽視の意味を持つこともあるため注意が必要。
3-1. 自分をへりくだって言う場合
- まがりなりにも英語を教える仕事をしています。
- まがりなりにも経営者の端くれです。
- まがりなりにも専門家として意見を述べます。
→ 「未熟ながらも〜」「一応〜として」というニュアンスで、謙虚さを表す。
3-2. 他人や物事について言う場合
- まがりなりにもプロの作家なのだから、もっと丁寧に書くべきだ。
- まがりなりにも会社員なら、遅刻は慎むべきだ。
→ この場合、「一応その立場にあるのだから」という軽い批判・皮肉を含む表現になる。
4. 「まがりなりにも」の例文集
- まがりなりにも10年この仕事を続けている。
- まがりなりにも先生として教壇に立っている以上、責任を持ちたい。
- まがりなりにも完成した作品なので、手を抜くわけにはいかない。
- まがりなりにも成功した経験があるから、助言できると思う。
- まがりなりにもリーダーとしてチームをまとめる立場だ。
5. 「まがりなりにも」の使う際の注意点
- 自分の立場を控えめに述べるときに使うのが自然。
- 他人に対して使うと、上から目線や皮肉に聞こえることがある。
- フォーマルな文書よりも、日常会話やスピーチ、コラム的な文体に適している。
例:
×「まがりなりにも社長のあなたがそんなことを言うなんて!」(やや失礼)
〇「まがりなりにも社長を務めているので、責任を感じています。」(謙譲的)
6. 「まがりなりにも」の類義語と違い
| 類義語 | 意味 | 違い・特徴 |
|---|---|---|
| 一応 | 完全ではないが、とりあえず。 | よりカジュアルで日常的。 |
| かろうじて | ぎりぎりの状態で。 | 困難を乗り越えたニュアンスを含む。 |
| どうにか | なんとか、無理をしても。 | 口語的でやや軽い印象。 |
| なりに | 自分の能力や状況に合わせて。 | 「〜なりに頑張る」といった前向きな表現。 |
→ 「まがりなりにも」はこれらの中でも、丁寧で少し格式のある言い回しとして位置づけられる。
7. 「まがりなりにも」の英語表現
英語に直訳できる言葉はないが、文脈によって以下のように言い換えられる。
- in some way(どうにかして)
- to some extent(ある程度)
- though imperfect(不完全ながら)
- however humbly(つたないながらも)
例文:
- I have, in some way, managed to graduate.(まがりなりにも卒業できた。)
- Though imperfect, I’m still a teacher.(まがりなりにも教師です。)
- He is, to some extent, a professional.(まがりなりにもプロといえる。)
8. 「まがりなりにも」が持つニュアンス
「まがりなりにも」は、謙遜と控えめな自負を同時に含む表現である。
自分を卑下しすぎず、それでいて驕らない姿勢を示す言葉として、日本語らしい奥ゆかしさを持つ。
また、相手に配慮しながら状況を説明するのに適した表現でもある。
9. まとめ
「まがりなりにも」とは、完全ではないが、一応形を保っていることを表す言葉である。
自分をへりくだって述べる場合に使うと柔らかく上品な印象を与えるが、相手に使うときは皮肉に聞こえることもある。
「未熟ながらも努力している」「不完全でも成り立っている」——そんな日本語特有の控えめな誇りを伝える表現といえる。
