「眷属(けんぞく)」という言葉は、神社仏閣の祭礼や宗教的な文脈でよく登場します。「神の眷属」「不動明王の眷属」「竜神の眷属」といった表現を耳にしたことがある人も多いでしょう。一方で、日常生活ではあまり使われないため、意味があいまいに感じられる言葉でもあります。この記事では、「眷属(けんぞく)」の意味、使い方、語源、そして宗教的・比喩的な用法までをわかりやすく解説します。

1. 眷属とは?意味を詳しく解説

眷属(けんぞく)とは、「主に仕える者」「ある存在に従属している仲間・一族」を意味する言葉です。
特に仏教や神道では、「神仏に仕え、その教えを守る存在」や「神仏の従者(じゅうしゃ)」を指す宗教用語として使われます。

例:
・不動明王の眷属として、八大童子が知られている。
・稲荷神の眷属は白狐(びゃっこ)とされる。
・竜神の眷属が雨をもたらすと伝えられている。

つまり、「眷属」とは「ある強大な存在の配下にあり、その使命を共に果たす者」を表す言葉です。

1-1. 読み方と漢字の意味

・読み方:けんぞく
・「眷」:思いやる、顧みる、身内を指す
・「属」:従う、所属する、関係を持つ

この二字を合わせることで、「身内として仕える者」「主を思い従う者」という意味になります。
本来は「家族・親族」の意味も含んでいましたが、宗教的文脈で「神や仏に仕える者」を指すようになりました。

1-2. 英語での表現

文脈によって以下のように訳されます。

・retinue(従者)
・attendants(付き従う者)
・followers(信者・従う者)
・divine servants(神の使い)

例文:
・The white fox is considered the divine servant of Inari.(白狐は稲荷神の眷属とされる。)

2. 仏教における眷属

仏教では、眷属とは「仏・菩薩・明王などに仕え、その教えを守護する存在」を指します。
彼らは神仏の使者として、人々を守り導く役割を担っています。

代表的な例は以下の通りです。

・不動明王の眷属:八大童子(不動明王を補佐する八人の童子)
・愛染明王の眷属:六曜神(人々の愛欲や煩悩を調伏する)
・毘沙門天の眷属:四天王や夜叉などの護法神

このように、眷属は単なる従者ではなく、「神仏の力を補完し、信仰の世界を支える守護存在」とされています。

3. 神道における眷属

神道においても、眷属は「神に仕える霊的な存在」を指します。
中でも有名なのが、稲荷神の眷属である白狐(びゃっこ)です。

・稲荷神の眷属:白狐(神の使いとして、人々の願いを伝える)
・八幡神の眷属:鳩(平和や導きを象徴)
・天満宮の眷属:牛(学問の神・菅原道真にちなむ)

これらの眷属は、神と人をつなぐ存在として、神社の境内や狛犬、像などの形で表されています。

4. 日常での比喩的な使い方

現代では、宗教的な意味から転じて「ある人物や組織に従う者」「仲間・取り巻き」という意味でも使われます。

例:
・社長の眷属のように、常にその意向を伺っている。
・彼の眷属がメディア業界を動かしているとも言われる。

この使い方では、やや皮肉や風刺のニュアンスを含むことがあります。

5. 眷属と家族・親族の関係

「眷属」という言葉は、古くは「血縁関係のある者」「身内」という意味でも使われていました。
中国古典においては、「眷族」や「親族」とほぼ同義で、「家族や親戚を思いやる」という意味が込められています。

日本でも、平安時代の文献などでは「家族や一族の者」という意味で用いられた例があります。
その後、宗教的な意味が強まり、現在では主に「神仏に仕える者」として定着しました。

6. 類語と関連語

・従者(じゅうしゃ):主に仕える人
・随神(ずいじん):神のそばに仕える守護神
・守護神(しゅごしん):特定の人や場所を守る神
・家臣(かしん):主君に仕える武士

対義語としては、「主(あるじ)」「本尊」「神仏」など、中心となる存在が挙げられます。

7. 眷属という言葉の印象

「眷属」は、神聖で荘厳な響きを持つ言葉です。
一方で、日常ではあまり使われないため、使う場面を選ぶ必要があります。
宗教的な文脈では敬意を込めて用いられますが、比喩的に使う場合は皮肉や風刺を感じさせることもあります。

また、文学や詩などでは「主従関係」「忠誠」「運命的な結びつき」を象徴する言葉としても使われます。

8. まとめ

眷属(けんぞく)とは、「神仏や主に仕える者」「従属する仲間・一族」を意味する言葉です。
仏教では神仏の使いや守護者、神道では神に仕える動物や霊的存在を指します。
現代では比喩的に「取り巻き」「仲間」という意味でも用いられますが、本来は信仰の世界における高貴で神聖な言葉です。
眷属という言葉を知ることは、日本の宗教文化や信仰の深層を理解する手がかりにもなります。

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