「〜に際して」という表現は、ビジネスメールや公式文書でよく使われる言葉のひとつです。丁寧でフォーマルな印象を与える一方で、普段の会話ではあまり使われないため、使い方に迷う人も多いでしょう。この記事では、「際してとは?」という基本の意味から、使う場面、言い換え表現、例文までを詳しく解説します。

1. 「際して」とは?基本の意味

「際して(さいして)」とは、「ある特定の機会に」「〜のときに」という意味を持つ言葉です。
主に、あらたまった場面や文書の中で「何かを行うとき」「重要な出来事のタイミングで」という意味合いで使われます。

たとえば、以下のように使われます。

ご入社に際して、心よりお祝い申し上げます。

留学するに際して、多くの方々にご支援いただきました。

このように、「際して」はフォーマルな文体でよく使われる接続表現です。

1-1. 「際して」の語源

「際して」は、「際(きわ)」という言葉に由来します。
「際」には「ある事柄の起こる直前」や「境目」といった意味があり、
「〜に際して」は「何かが起こる場面において」というニュアンスを表します。

1-2. 「際して」の品詞と文法上の特徴

「際して」は動詞「際する(さいする)」の連用形です。
「〜に際して」は「〜のときに」と同じように文中で副詞的に使われます。
接続の形としては「名詞+に際して」「動詞辞書形+に際して」が一般的です。

2. 「際して」の使い方と例文

「際して」は文語的で丁寧な印象を持つため、ビジネス文書・挨拶文・式辞などで多く使われます。
ここでは、よくある使い方と例文を紹介します。

2-1. 名詞+に際して

名詞に続けて「に際して」を使う形です。
例文:

入社に際して、上司や同僚への感謝を忘れないようにしましょう。

ご結婚に際して、心よりお祝い申し上げます。

開業に際して、多くのご協力をいただきました。

この形は、フォーマルな挨拶文で最もよく使われます。

2-2. 動詞辞書形+に際して

動詞の辞書形に続けて使うことで、「〜するときに」「〜する際に」という意味になります。
例文:

契約書を提出するに際して、署名・捺印をお忘れなく。

面接を受けるに際して、事前準備をしっかり行ってください。

海外に渡航するに際して、保険加入を確認しておく必要があります。

この形は、注意喚起や案内文に適しています。

2-3. 否定的な意味では使わない

「際して」は丁寧で前向きな印象を持つ表現です。
そのため、「事故に際して大きな損害を受けた」などのようにネガティブな文脈ではあまり用いません。
災害や不幸ごとを述べる場合は、「際して」ではなく「にあたって」や「にあたり」など別の表現を使うのが自然です。

3. 「際して」と「にあたって」の違い

「〜に際して」と似た表現に「〜にあたって」があります。
どちらも「〜のときに」という意味ですが、微妙な違いがあります。

3-1. 「際して」=フォーマルで改まった印象

「際して」は、式典・公式な挨拶・文章など、格式のある場面に適しています。
例:新規開店に際して、関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

3-2. 「にあたって」=準備や取り組みの場面に多い

「にあたって」は、何かを始める前の準備や心構えに使われることが多い表現です。
例:新しいプロジェクトを始めるにあたって、目標を明確にしました。

つまり、「際して」は出来事そのものの瞬間に焦点を当て、「にあたって」はその前段階の行動や準備に焦点を当てる違いがあります。

4. 「際して」を使うシーン

「際して」は、ビジネス文書・スピーチ・挨拶状などで幅広く使われます。
ここでは代表的なシーンを紹介します。

4-1. ビジネス文書

入社・退職・昇進・開業・契約など、重要な節目に使われることが多いです。

例:

弊社の新店舗オープンに際して、多くのご支援を賜り誠にありがとうございます。

異動に際して、一言ご挨拶申し上げます。

4-2. 祝辞や挨拶文

「お祝い」「感謝」「報告」などを述べる文書でも使われます。

例:

ご結婚に際して、心よりお祝い申し上げます。

創立記念日に際して、社員一同の努力に感謝いたします。

4-3. スピーチ・式典

式辞やスピーチなどの口頭表現でも使われます。
フォーマルな場面に適しており、聞き手に誠実で丁寧な印象を与えます。

5. 「際して」の言い換え表現

同じ意味でも、文章の雰囲気や状況に応じて別の表現を選ぶことができます。

5-1. 「にあたって」

前述の通り、準備や開始の段階を強調する表現です。

5-2. 「折に」

やや柔らかく、「〜の機会に」という意味で使われます。 例:お近くにお越しの折に、ぜひお立ち寄りください。

5-3. 「ときに」

もっとも一般的な言い換えで、カジュアルな文章に適しています。 例:面接を受けるときに、身だしなみに注意してください。

6. 「際して」を使う際の注意点

フォーマルな言葉である「際して」は、使い方を間違えると不自然に響くことがあります。
ここでは注意すべきポイントをまとめます。

6-1. カジュアルな文には不向き

「際して」は改まった印象が強いため、友人同士の会話やSNSでは不自然になります。
たとえば、「旅行に際して楽しんできた」は堅苦しく、「旅行のときに楽しんできた」で十分です。

6-2. 過去の出来事にはあまり使わない

「際して」は主に現在や未来の出来事に使われます。
「結婚した際して」は誤用で、「結婚したときに」または「結婚の際に」が自然です。

6-3. ポジティブな出来事に使う

災害・事故・病気などの文脈では避けましょう。
お祝い・開始・報告など前向きな内容に適しています。

7. まとめ:「際して」は丁寧で信頼感のある表現

「際して」とは、「〜のときに」「〜にあたって」という意味を持つフォーマルな言葉です。
特にビジネス文書や挨拶文では、丁寧さや誠実さを伝えるうえで非常に効果的です。

使う際は、

名詞または動詞辞書形に接続する

ポジティブで正式な文脈で使う

「にあたって」「折に」などと使い分ける

といったポイントを意識しましょう。

「際して」は一見堅い表現に思えますが、正しく使えば文章に信頼感と品格を与える便利な言葉です。

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