謄本(とうほん)という言葉は、戸籍や登記などの手続きを行う際に目にする公的な書類ですが、その正確な意味や種類、使い方を理解している人は少ないかもしれません。本記事では、謄本の基本から取得方法、抄本との違い、注意点まで詳しく解説します。
1. 謄本とは?その基本的な意味
1.1 謄本の定義
謄本とは、ある原本(戸籍簿や登記簿など)に記載されている全ての情報を写した書類を指します。すなわち「原本のすべてを転写した証明書」という性格を持っています。戸籍謄本、不動産の登記簿謄本などが代表例です。
謄本を請求するときには、元となる原本の写し全体を求めているという意味を理解しておく必要があります。
1.2 謄本と抄本との違い
謄本とよく混同される用語に「抄本(しょうほん)」があります。抄本は、原本の中から一部分の情報だけを抜き出して写したものを指します。たとえば戸籍であれば、戸籍に記載されている人の中から特定の一人分だけを証明したい場合に抄本が使われます。
多くの自治体では、戸籍をコンピュータ化しているため、謄本を「戸籍全部事項証明書」、抄本を「戸籍個人事項証明書」という名称で扱うことがあります。手続によっては全部事項証明でないと受け付けないこともあるので、どちらが必要か確認することが重要です。
2. 謄本が使われる主要な分野
2.1 戸籍関係の謄本
戸籍謄本は、生まれた日、婚姻、死亡といった身分事項を記した戸籍簿の内容をすべて写し取ったものです。相続手続き、不動産名義変更、年金請求、婚姻届など多くの場面で提出を求められます。
戸籍謄本には「全部事項証明書」という名称が使われるケースが増えています。また、過去の戸籍である改製原戸籍や除籍という書類も、謄本として請求されることがあります。
2.2 不動産・登記の謄本
不動産の謄本とは、かつて登記簿謄本と呼ばれていた名称で、不動産の位置・構造・所有者・権利関係などをすべて写した証明書のことです。現在では「登記事項証明書」と呼ばれることが一般的ですが、「謄本」という呼び方が慣用的に残っています。
この書類には、表題部(不動産の位置・面積など)と権利部(所有権・抵当権など)が記載されており、取引や契約、担保設定など多くの場面で必要になります。
2.3 法人・会社の謄本
法人の謄本は、会社の登記簿全体を写した書類を指します。資本金、役員、所在地など、法人情報がすべて記載されます。取引先調査、金融機関への提出、法人設立や変更手続きなどで利用されます。
法人登記簿については「登記事項証明書」が交付されるケースが主流ですが、従来型の謄本という呼称が併存しています。
3. 謄本の取得方法・手続き
3.1 戸籍謄本の取得手段
本籍地の市区町村役場の窓口で請求
郵送請求
コンビニ交付(マイナンバーカード等を使った電子交付)
オンライン申請制度を設けている自治体もある
戸籍謄本の取得には、身分証明書や請求書、手数料が必要です。役場の窓口ではその場で発行されることが多いですが、郵送は数日かかることがあります。
3.2 不動産・登記謄本の取得方法
不動産の謄本(登記事項証明書)は、法務局の窓口で請求できます。また、登記・供託オンライン申請システムを使ってオンラインで取得する方法もあります。
請求には、対象不動産の所在地・地番、必要部数、本人確認書類、手数料などが必要となります。
3.3 法人謄本の取得方法
法人の謄本(登記簿謄本または登記事項証明書)は、法務局で請求するかオンライン申請で取得できます。法人番号や商号、本店所在地などの情報が必要となります。
4. 謄本が必要になる主な場面
4.1 相続手続き
被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要となります。これらを揃えて、相続人の成立関係を証明します。
4.2 不動産取引・名義変更
不動産を売買する際や相続による名義変更をする際には、不動産の謄本(登記事項証明書)が必要です。所有者や権利関係を確認するための重要な書類です。
4.3 銀行融資・契約手続き
法人が融資を受ける際、取引先との契約を結ぶ際には、法人登記情報を示す謄本を提出することが求められることがあります。
4.4 婚姻届や戸籍異動など行政手続き
婚姻届提出や戸籍の異動など、戸籍に関わる行政手続きの際に、戸籍謄本や抄本が求められることがあります。
5. 謄本を請求する際の注意点・ポイント
5.1 どの範囲の謄本が必要か確認する
必要とされる謄本が戸籍の全部事項(謄本)か、抄本(部分)かを事前に確認しましょう。不要な謄本を請求しても手数料が無駄になります。
5.2 複数通必要かどうか検討する
相続手続きなどでは、複数の機関に同じ謄本を提出することがあるため、余裕を持って複数通取得しておくと手続きがスムーズです。
5.3 古い戸籍(除籍・改製原戸籍など)の取得にも注意
過去に本籍が変更されたり、戸籍制度が改正されたりした場合には、現行の戸籍だけでなく除籍・改製原戸籍の写しも必要です。これらの請求は時間がかかることがあります。
5.4 手数料・証明書の名称変化に注意
自治体や登記簿の電子化により、証明書の名称が「全部事項証明書」や「登記事項証明書」となることがあります。請求書類で古い呼び名を使っても、該当する証明書が交付されることもあります。
また、手数料は自治体や証明書の種類によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
6. よくある質問と疑問点
6.1 謄本と登記事項証明書は同じか?
不動産登記や法人登記では、従来の「登記簿謄本」は現在「登記事項証明書」として発行されるのが基本です。内容は同じですが、電子化に伴い名称が変わっています。
6.2 謄本は誰でも取得できるか?
戸籍謄本は本人や同一戸籍の人、正当な理由がある第三者であれば取得可能です。不動産謄本や法人謄本は原則誰でも請求可能です。
6.3 謄本の有効期限はあるか?
謄本自体に法的な有効期限はありませんが、手続きによっては発行後3ヶ月以内など期限を定める場合があります。提出先の指示に従いましょう。
7. まとめ
謄本は法律・行政手続きに欠かせない重要な証明書であり、戸籍謄本、不動産謄本、法人謄本など種類もさまざまです。その意味や使い方を正しく理解し、必要に応じて適切に取得・活用することが大切です。特に戸籍の古い謄本の取得や必要な種類の確認はミスを防ぐポイントです。
日常生活やビジネスシーンで謄本を求められた際は、本記事の内容を参考にスムーズな手続きを進めてください。